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白銀の翼  作者: 烏丸
8/30

第8話 アルベルト家

洞窟の魔物討伐作戦を完了した一行は 帝都へと戻って来ていた。

パルシオンは肋骨骨折に内蔵破裂の重傷の為 病院へと搬送されていた。


ロイも右肩の傷の治療の為に 病院へと来ている。

ゼクスもそれに同行していた。



「あぁ~ せっかく神秘の森での怪我が治ったのに また怪我かよ…」



治療を終えたロイは 不機嫌そうに 傷口を眺めている。



「まぁ 命があっただけでも 儲けものだと思え。」



ゼクスはそんなロイを 宥めていた。


病院から出ると 2人の男がロイとゼクスを待ち構えている。



「よう!探したぜ。」



傭兵ギルド グリフィンのフラッグとキルバインだ。



「なんだ?なんか用か?」



「お前らのどっちか 俺と決闘しろ。」



フラッグは闘争本能剥き出しで ロイとゼクスを睨み付ける。

それを聞いたロイの闘争本能にも火がついた。



「いいぜ。俺が相手してやるよ……イテッ!」



前に出るロイの頭を ゼクスが小突く。



「お前は怪我人だろ。下がってろ。俺が相手してやるよ。」



その言葉を聞いたフラッグは 待ちきれないとばかりに ゼクスに飛び掛かる。


フラッグから繰り出される 打撃の嵐をゼクスは余裕でかわしていく。

止まることのない連続攻撃に フラッグのスタミナは徐々に下がり 動きのキレが無くなってきていた。



「まるで犬だな…」



動きが鈍る その瞬間をゼクスは見逃さなかった。


強烈な膝蹴りをフラッグの腹に叩き込む。

フラッグは悶絶し その場に膝をついた。



「終わりだな。」



ゼクスはフラッグの頭に銃を突き付ける。



「終わり?…勝手に終わらせてんじゃねぇよ!!」



フラッグは怒りの叫びをあげながら 突き付けられた拳銃を左手で素早く掴み ゼクスの側頭部に強烈な右フックを叩き込んだ。



「……油断したな。」



後方で決闘を眺めていたキルバインが呟く。

その横ではロイが驚きの表情を浮かべていた。



「ゼクス!何やってんだよ!?」



「フラッグは諦めるということを知らない。あの男はフラッグを甘く見ていたようだな。」



そんなロイを横目にキルバインが呟く。



殴られたゼクスは よろめき 地面へと転がった。


しかし フラッグは倒れることも許さない。

地面を転がるゼクスを追い 蹴りを放つ。


しかし ゼクスは蹴りがヒットする瞬間を狙い フラッグの足をガッチリとキャッチした。



「なっ!?この野郎!離しやがれ!!」



フラッグがゼクスを振り払おうとした瞬間のことだった。

何故か地面に転がったのはフラッグだ。



「……なんだ?」


「合気道って知ってるか?相手の攻撃を利用して攻撃する格闘技さ。武器が拳銃だけじゃ近接戦は不便でな。こういう小細工も持ってんだよ。」



呆気に取られるフラッグにゼクスが告げる。



「ブッ殺す!!」



フラッグが飛び掛かろうとした刹那 銃声が鳴り響く。



「ぐっ……!」



ゼクスが放った弾丸は フラッグの右脇腹を撃ち抜いていた。

フラッグはゼクスを睨み付けながら ゆっくりと地面へ倒れ込む。



「くそがっ!

…ま まだだ!殴り殺してや…る…!」



「やめろ。」



再び立ち上がろうとするフラッグを キルバインが手で制す。



「貴様の負けだ。」



キルバインの言葉に フラッグは顔を俯かせる。



「…それじゃあ 俺達は行くぜ。縁があったら また会おう。」



二人にそう告げて ゼクスとロイは帝都を後にした。



―☆―

とある廃墟と化した街で 逆立った金髪に 赤い刺々しい鎧を身に付けた 一人の魔人が苛立ちを見せていた。

彼は神秘の森で 魔導教典を狙ってきた豪魔邪霊衆の一員 ジダン。


ここは豪魔邪霊衆が襲撃し 壊滅させた街だ。

今は豪魔邪霊衆が根城としている場所である。



「ちくしょう!あのジジィどこへ行きやがったんだ!」



「落ち着けジダン。今 魔物達に捜索させている。

見つかるのは時間の問題だろう。」



苛立つジダンに話し掛けたのは 青い長髪の端正な顔立ちをした魔人だ。



「エリック!俺様は待つことが嫌いなのは知ってんだろ!」



ジダンの苛立ちは収まることを知らず 更に熱くなってきていた。


そんなジダンの背後から首元に黒い大きな鎌の切っ先が 当てられる。



「…………っ!!」



「五月蝿いよ…ジダン。

僕がこの首を落としてもいいんだよ?」



「ミカエル…てめぇ…」



ジダンの瞳には怒りの炎が燃え上がっている。

大鎌の持ち主は 明るい金髪に 頭までフードを被った黒いパーカーの様な物を着ている魔人 ミカエルだ。


ミカエルはまだ子供であり 身長はジダンやエリックの半分程しかない。しかし その戦闘力は この状況を見れば一目瞭然だ。



「やめろ!ミカエル!

ボスのいない間に問題を起こすな。」



エリックがミカエルを制す。



「ちぇっ…

ボスには叱られたくないからね。」



ミカエルは渋々ゆっくりとジダンの首から鎌を離す。

そして ジダンの前へ移動して口を開いた。



「たしか黒い魔剣士に邪魔されたんだよね?そいつ 僕が殺ってもいい?」



「なんだと?アイツは俺様の獲物だ!横取りすんじゃねぇよ!!」



ジダンは怒りを露に ミカエルの襟首を掴む。

そんなジダンを馬鹿にするかのようにミカエルは 不敵に笑みを浮かべた。



「君が?ハハッ♪手も足も出なかったくせに どうやって相手するのさ?」



「テメェ!殺されてぇのかっ!?」



「やめろと言っているだろ!

そいつはジダンの問題だ。奴にケツを拭かせてやれ ミカエル。」



エリックは冷静にその場を収める。

その言葉にジダンは掴んでいた手を離した。

ミカエルも不服そうではあるが 納得して その場を後にする。



「エリック 話が分かるじゃねぇか。」



「勘違いするな。お前は一度失敗しているんだ。二度目はないぞ?」



エリックの言葉にジダンの顔色が変わる。



「分かってるよ…

魔導教典か黒い魔剣士を発見したら教えてくれ。」



そう言い残し ジダンはその場を後にした。




―☆―

白銀の翼アジトへ戻ったロイとゼクスは バルボアに報告を済ませ 休息へと入っていた。



「ロイ また力を使ったそうですね?」



広間の椅子に腰掛けていたロイに 真剣な顔つきでレオが話しかける。

ロイは一瞬 しまった!というような表情になり 口を開く。



「あぁ…でもちゃんとコントロールできたんだ。これなら使っても平気だろ?」



「なにをバカな!危険です!得体の知れない力なんですよ!?あまり使わないように言ったはずです!」



ロイの軽い言葉に レオは珍しく声を荒げて叫ぶ。

ロイは観念したのか 顔を俯かせ 黙り込んだ。



「力の多用は控えてください。体に異変が起こってからでは遅いんですよ?」



塞ぎ込むロイに レオは優しく声をかける。


仲間思いの 優しいレオは 心の底からロイを心配しているのだ。

そんな思いを 無下にするロイではない。



「…わかったよ。ありがとう。」



謝るロイを見て レオは優しく微笑み 頷いた。



その時 突然一本の電話が鳴り響く。



「はい。白銀の翼です。

………え!?

……………わかりました。すぐ戻ります…」



急に顔色の変わったレオを 不信に思い ロイが声をかける。



「どうした?誰からだ?」



「私の実家からです。父が病で倒れたそうなんで 至急 戻って来いと…」


レオの表情が曇る。

レオは魔導師の名門一族 アルベルト家の長男。

彼の父親は セルゲイ・アルベルト。大魔導師と呼ばれる 凄腕の魔導師であった。



「本当か!?大丈夫なのかよ!?」



ロイは驚き 声をかけるが レオの表情は更に曇る。



「いえ そう長くは持ちそうにないそうです。次期当主を決める為に戻って来いと…

…ロイ 一緒に来てくれませんか?」



「え!?いいけど…なんでだ??」



レオの突然の要求に ロイは驚きを見せる。

何故かレオは照れくさそうに口を開いた。



「白銀の翼に入る為に 家を飛び出した手前 一人では どうも帰りにくいんですよ…」



レオの意外な一面に ロイは少し微笑む。



「よし!じゃあ早速準備しよう!親父さん待ってるぞ!」



「ありがとうございます。マスターに報告しておきますから 先に準備を始めておいてください。」



―☆―

ロイとレオの二人はスーツに身を包み アルベルト家の屋敷へと出発を始めていた。

ロイはレオと違い 慣れないスーツに落ち着かない様子だ。



「なぁ レオはアルベルト家の長男なんだろ?

…じゃあ次期当主になっちまうのか?」



ロイはレオが白銀の翼を抜けてしまうのではないかと 不安が過っていた。



「…いえ。私は当主になるつもりはありません。

第一 家を飛び出していた私に そんな権利があるとも思えませんし 私は白銀の翼でずっと働くつもりですよ。」



レオの言葉に内心ホッとしたロイだが 心配もあった。



「でも大丈夫なのか?レオが跡を継がないと アルベルト家はどうなっちゃうんだよ?」



ロイの心配をよそに レオは眼鏡を上げながら微笑みを見せた。



「心配いりませんよ。内は3兄弟でね。

弟達のどちらかに跡を継いでもらいますよ。」



そんな話しをしながら 途中バスや列車に乗り 移動すること5時間程。

辺りは日が沈み 真っ暗となった頃 二人はアルベルト家の屋敷へと到着したのだった。



「レオ様!そろそろ到着なさる頃かと思っていました。

お久しゅうございます。」



屋敷の大きな門の前には 一人のスーツを着た 白髪で白髭を生やしたダンディな老人が待っていた。



「サムソン!久し振りです。変わらないですね。」



深々と頭を下げるのは この屋敷の執事 サムソンだった。電話をしてきたのも このサムソンだ。



「レオ様も お変わりないようで よかったです。

……そちらの方は?」



サムソンの視線がロイへと向けられる。



「彼はロイです。同じ白銀の翼のメンバーで 私の要望で同行してもらいました。」



レオに紹介されて ロイはペコリと頭を下げる。



「そうでしたか。遠い所をわざわざ有難うございます。さぁ 二人共どうぞ中にお入り下さい。」



サムソンに案内され 二人は屋敷の中へと入っていく。

門を抜けると広い中庭が広がり その奥に巨大で上品な屋敷が構えている。



「クソ兄貴!どの面下げて帰ってきやがったんだ!」



「キラ…」



玄関に入るなり 怒鳴り散らしてきたのは 金髪の短髪で 上品な屋敷には似つかわしくない厳つめの顔立ちの男だ。

彼はアルベルト家の三男。キラ・アルベルトだ。



「俺は お前を許さない…」



キラは魔力を集中させる。



「お止めください!キラ様!」



サムソンの制止も虚しく キラは更に魔力を集中させ レオに向かって魔法を発動させようとしていた。



「止めろ!キラ!」



突然 キラの前に 金髪のロングヘアーの男が立ち塞がった。



「ライル兄ぃ!邪魔しないでくれ!」



彼は アルベルト家の次男 ライル・アルベルト。



「黙れ!部屋に戻ってなさい。」



ライルに叱られたキラは 子供の様に塞ぎ込み 自室へと戻って行った。

その姿を見届け ライルはレオの方へ振り返る。



「お帰りなさい 兄さん。」



「ただいま。」



微笑むライルに レオも微笑み返す。



「父さんに会ってきたらどうだい?」



「そうですね…

会いに行きましょう。ロイは少し待っていてもらえますか?」



「あぁ わかった。」



レオとライルは屋敷の奥へと進んで行く。



「それではロイ様は 広間の方で お待ち頂けますか?ご案内します。」



「おぅ!頼む。」




―☆―

「父さん 兄さんが来てくれたよ。」



豪華な部屋の扉をノックする ライル。



「入りなさい。」



中からは弱々しくも 威厳のある声が響いた。

レオとライルは扉を開け 中へと入っていく。


部屋の中の大きなベッドには 鼻の下に立派な髭を生やした壮年の男が 横になっていた。

彼がアルベルト家の現当主 セルゲイ・アルベルトである。


「父上…

ただいま戻りました。」


レオはセルゲイの横に立つと 申し訳なさそうに口を開いた。



「レオか…久し振りだな。元気にしていたか?」



「はい…白銀の翼でも上手くやっていけてますよ。」



レオの言葉に セルゲイは嬉しそうに優しく微笑む。

しかし ロイの表情は暗かった。


「そうか…それはよかった。」



「なぜです?私は勝手に家を飛び出て 今更戻ってきたのに なぜ怒らないのですか?」



レオはたまらず セルゲイに疑問をぶつける。

セルゲイは一瞬驚いた表情を見せたが すぐに優しく微笑む。

そして ゆっくりと語り出した。



「私は お前を次期当主として きつく育ててきた…

だが お前が家を出て行った時に気付かされたよ。

私の勝手な思いに お前を巻き込んで お前の夢もやりたい事も 無視して強制していたことにな…」



「父上…」



「私も若い頃 父親に強制的に次期当主として育てられてきた。

私は一人っ子だったから仕方がないことだったのかもしれないが 私にも他にやりたい事はあったのだ。

旅をして もっと世界を見て回りたかったし いろんな仕事もしてみたかった…

それと同じ思いを お前にさせていたと思うと 私は自分に腹が立ってな…

それにライルとキラの二人は 自ら次期当主になりたいと ずっと思っていたらしい…

それなのに私は お前を次期当主にすることしか考えていなかった。

とんだ馬鹿親父だったよ。」



セルゲイの話しをレオとライルの二人は 暗い表情で聞いていた。



「ライル。次期当主はお前に頼もうと思っている。お前ならシッカリしているし 上手くやっていけるだろう。キラと共に 頑張ってくれ。」



「わかりました。」



ライルはセルゲイの目を真っ直ぐに見つめ 力強く返事を返した。



「レオ…お前はお前の好きなように白銀の翼でしっかり働け。そして最高の魔導師となれ。

だがもしアルベルト家に何かあれば 力を貸してやってほしい。」



「父上…わかりました。有難うございます。本当に…有難うございます。」



レオは大粒の涙を流しながら何度も感謝の言葉を口にした。


ここまで育ててくれたことには心から感謝している。

ただ強制的に次期当主として育てられていることが嫌だった。

父親が嫌いな訳ではない。ただ 分かって欲しかった。自分にもやりたい事がある事を。

そんな思いで家を飛び出し 父親を傷つけてしまった事を後悔していた。

もっと話し合えば分かり合えたのではないか?父親に悲しい思いをさせずに済んだのではないか?


レオは涙を流し続けた。


後悔しても後の祭り。人生とは無情である。


アルベルト家の夜は静かにふけていったのであった。

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