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白銀の翼  作者: 烏丸
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第6話 共同戦線

神秘の森から戻って 数日の時が経っていた。

ロイの体力と体の傷は カイラスの回復魔法と種の者 特有の圧倒的な治癒能力の効果もあり 既に完治していた。


白銀の翼ギルドマスターであるバルボアは ロイの言った通り 快くカイラスを迎え入れ 彼は白銀の翼の新たなメンバーとなっていた。



「おっす レオ。」



ロイが眠たそうに瞼を擦りながら 広間へと顔を出す。



「おはよう。休暇が続いてるからって 少したるんでるんじゃないですか?」



レオは呆れた表情を見せる。

時刻は昼過ぎ。神秘の森から戻ったロイは 毎日こんな怠けた生活をおくっている。

元々ぐうたらな性格のロイだが 休暇続きで完全に体が鈍っていた。



「わりぃわりぃ…

…オッサンと爺さんは…またか?」



ロイは頭を掻きながら 広間を見回した。



「えぇ…二日酔いです。」



レオは更に呆れ顔になる。

バルボアとカイラスは久し振りの再会を喜び 毎晩飲み明かしていたのだ。

つまり 白銀の翼は今現在 かなり怠けている状態という事だ。



「ぉ~い…ぉはよぅ 諸君…」



広間に今にも嘔吐しそうな 苦しい表情のバルボアが姿を現す。

そんな酔っ払いマスターに レオは軽蔑の眼差しを向けていた。



「マスター!飲み過ぎですよ!」



「ぉい…ぅぷ…デカい声 出すんじゃねぇよ…」


「アンタが言うのかよ!?」



ロイのツッコミは的を得ていた。



「……まぁいぃ…実はかなりデカイ依頼が入った。」



そのキーワードにロイの瞳がキラリと光る。



「俺が行く!!!!」



「うるせぇよ!!!!」


ロイの叫びに バルボアが叫び返し 直ぐ様 吐き気をもよおし 口を抑える。

そんなアホな光景をレオは冷めた目で眺めていた。



「依頼の内容はなんです?」



「ぅっぷ…あぁ…

まず依頼主は政府直々だ。帝都のすぐ近くに 洞窟があるんだが どうやらそこは魔物の巣窟になっているらしい…

依頼は 帝都親衛騎士団と共に 洞窟の魔物を全滅させることだ…

内の他に2つのギルドの傭兵を雇っているようだ…

かなり大規模な討伐作戦の様だな…」



帝都とは ガレン大陸の中心に位置する 最も栄えた巨大な大都市のことだ。


帝都には このガレン公国の王 エドワルド3世が住まう ガレン王城が建てられている。

この帝都こそが政府そのものなのだ。

ここには多くの騎士団が存在し 帝都親衛騎士団はその中でも 最下位にあたる騎士団だ。最下位と言っても 帝都直属の騎士団であるため 実力 身分はそれなりの物を持っている。



「その話し 面白そうだな。」



何処からともなく 急にゼクスが現れ 話しに割って入る。



「俺も暇してたんだよ。その依頼 内からは何人送るんだ?」



「2人ってところだな…」



「じゃあ俺とロイで決定だな!レオもいいだろ?」



ゼクスはロイの肩に手を回し ニンマリ笑顔を見せた。



「私は構いませんよ。」



「…ょし…じゃあ2人共 …頑張れ!」



バルボアは そう告げるとすぐにトイレへと 駆け込んだのだった。




―☆―

帝都 広場


広場には帝都親衛騎士団を始め 屈強な戦士達が集められていた。

ロイとゼクスの2人も 帝都へ到着してすぐに門番の兵士に案内され この広場へと連れて来られていた。



「おぉ~ 強そうな奴がウヨウヨいるなぁ。」



ロイは目を輝かせながら 辺りをキョロキョロと見回していた。



「そりゃそうさ。帝都親衛騎士団に加えて 同業者も何人かいるからな。

折角だから有名所を何人か教えてやろうか?」



「教えてくれ!」



ゼクスは周りをゆっくり見回す。



「まず あそこの白い服着た 派手な赤髪。アイツは傭兵ギルド《グリフィン》所属の魔剣士 キルバイン。

その隣のドレッド頭が 同じ《グリフィン》所属の フラッグだ。奴は気性が荒い。近くにいる時は念のため注意しとけ。

…後は あの噴水の近くにいる 左目に傷があって 黒の長髪を後ろで結ってる奴 アイツは傭兵ギルド《風神雷神》所属の パルシオン。背中に背負ってるクソ長い槍がアイツのエモノだ。

…知った顔はそんなもんかな。」



白銀の翼以外の2つの傭兵ギルドは10人以上を帝都に送り込んでいた。

どの傭兵も屈強そうな雰囲気を出しているが ゼクスが言った3人は 他のメンバーとは桁外れなオーラを放っている。



「全員注目!!!」



突然 広場に大きな声が響く。

声の主は帝都親衛騎士団 団長のレオナルド・バーモンド。



「これより 帝都近辺にある 魔物の巣窟となっている洞窟の魔物討伐作戦を開始する!諸君の活躍に期待する!」



レオナルドの言葉に続き 戦士達の歓声が巻き起こる。

上にたつ者にとって必要なカリスマ性を持っていると言っていいだろう。


―☆―

帝都親衛騎士団と3ギルドのメンバーは洞窟へと到着すると 陣形を組み始める。

先頭は帝都親衛騎士団30名。前衛に重装備の剣士部隊10名。中衛に弓隊10名。後衛に槍を持つ突撃部隊10名。団長であるレオナルドは突撃部隊の後ろについている。

その後ろに傭兵ギルド 風神雷神12名。

続いて傭兵ギルド グリフィン15名。

白銀の翼のロイとゼクスは最後尾を任されていた。


この陣形で洞窟を進み始める。



「一番後ろかよ…やっぱ2人だけじゃ あんま期待されてねぇのかな。」



ロイは不服そうに口を尖らせていた。

そんなロイをゼクスは横目で眺める。



「んなことねぇよ。最後尾は重要な役割だ。前からの攻撃には臨機応変に対応したり 最後の砦として。背後から奇襲を受けた場合は俺達が主力として対応できる。

それに わざわざ依頼を出してきたんだ。実力は認められてるさ。」



「なるほど…そういうもんか。」


ロイにとって 軍規模の多人数の人海戦は初めての経験であった。

傭兵とは元々こういった 軍に助力を求められ 軍に参加する仕事である。



「敵発見!下級ランクのゴブリン!数 およそ40!!」



突如 前衛の剣士部隊から報告が入り 全員に緊張が走った。


ゴブリンの大群は棍棒を振りかざし 侵入者を迎え撃つ。



「弓隊!構えーー!!」



レオナルドは冷静に指示を出す。



「放てーーーー!!!」



号令と共に 中衛の弓隊から一斉に矢が放たれる。


次々にゴブリン共は体を射ぬかれ 地に転がった。



「盾を構えろーー!!」



剣士部隊の大きな盾が展開され ゴブリン共の前に盾の壁が現れる。

攻撃を防ぐと同時に盾の間から剣で斬りつける。



「突撃ーーーー!!!!」



剣士部隊が幅の広い洞窟の両端に分かれ 中央を開ける。

そこを突撃部隊が颯爽と駆け抜け 怯んだゴブリンの大群を次々と貫いていくのだった。


あれだけの数のゴブリンを あっという間に倒して退けた実力は さすがは帝都親衛騎士団といったところだ。



「団長!前方に巨大な魔物です!」



大きな地響きと共に 前衛の騎士が叫ぶ。

一団の前方からは茶色い肌に赤い瞳。頭部には巨大な二本の巻き角と 背中には翼が生えた魔物がゆっくりと近づいて来ていた。


アークデーモン。驚異的な戦闘能力を誇る悪魔種で 上級ランクの魔物だ。


アークデーモンは前方から近づいていたが ゼクスの視線は 何故か後方に向けられていた。

その姿を不思議に眺めていたロイだが 突然そのロイも後方に視線を移し 大剣に手を伸ばす。



「団長さん!背後から奇襲だ!!」



ゼクスの叫びと共に 背後の岩の影から ゴブリンの大群が飛び出す。

数は先程の倍ぐらいになる。



「ヒャハー!やっと暴れられるぜっ!!」



真っ先にゴブリンへと飛び込んだのは傭兵ギルド グリフィンのドレッド頭 フラッグだ。

彼は拳闘士。無手での戦いを得意とする。

ゴブリンの大群に真っ向から突入し 次々と殴り飛ばしていく。

続いてロイが突撃し 踊るようにしてゴブリン共を叩き斬る。


その間 前線ではアークデーモンの猛攻により 騎士達は小枝のように次々と吹き飛ばされていた。



「弓隊放てーー!!」



レオナルドの号令の後 放たれる矢の雨。

大量に突き刺さる矢に アークデーモンは苦痛の呻きを漏らす。



「グォォォォォ!!!」



怒りの咆哮。

開かれた口からは 凶悪な魔力エネルギーが放たれる。


騎士達は一瞬にして半数が塵とかす。

そんな中 一人の男が飛び出し アークデーモンの額に長い槍を突き立てる。


傭兵ギルド 風神雷神のパルシオンだ。それに続き 風神雷神のメンバーがアークデーモンを取り囲む。



―☆―

「やれやれ…前線は結構苦戦している様だな。こっちをさっさと終わらすか。」



そう呟きながらゼクスは腰の2丁の拳銃を引き抜く。

その刹那 目にも止まらぬ速さで銃口が何度も火を吹いた。

その直後 ゴブリン共がバタバタと倒れだす。


ゼクスが放った銃弾は計12発。その全てがゴブリン共を捕らえたのだ。


そのあまりの早業に周りの人間は呆然とゼクスを眺めていた。

しかしゼクスはそんなことお構い無しに次々に引金を引いていく。



「あの野郎…俺の獲物を!」



フラッグは悔しそうにゼクスを睨み付けていた。


認めたくはないが 認めざるを得ない自分より遥かに高い ゼクスの実力。

自信過剰でプライドの高い彼にとっては 何とも言えない状況だ。



「それに アイツ…」



フラッグの視線が ゴブリンをバッサバサ斬り伏せるロイへと移る。



「なんて速さしてやがる…アイツ等が白銀の翼か…」



白銀の翼の2人はフラッグのライバル心に火をつけた。

殆ど発狂に近い雄叫びをあげ ゴブリン共の体を叩き伏せていく。


3人の活躍で ゴブリンの大群を あっという間に一掃したのであった。



―☆―

一方 前線ではアークデーモンとの死闘が繰り広げられていた。

帝都親衛騎士団の残りの数は剣士部隊3名。弓隊5名。突撃部隊4名と かなりの数の騎士が倒されていた。

応戦する 傭兵ギルド 風神雷神の人数も残り6名と 半数がやられている。

そんな中 善戦するのが 槍使い パルシオンだ。


アークデーモンの攻撃を華麗にかわしては 徐々にではあるが 自慢の長い槍でアークデーモンに傷を負わしていく。


その時 再びアークデーモンの口からエネルギー砲が放たれる。

それをパルシオンは真上に高い跳躍でかわし 空中で一回転すると アークデーモンの右目を槍で貫いた。



「ギャォォォォ!!」



アークデーモンは喚き 右目を抑える。

パルシオンは直ぐ様 槍を抜き放ち アークデーモンの顔を蹴って 離脱する。


騎士達から 大きな歓声があがる。

しかしパルシオンはそれには応えず 槍を構えた。


アークデーモンの太い腕が振り上げられる。

それに直ぐ様 反応したパルシオンは後方に飛び退く。


ぐしゃり! という鈍い音が洞窟内に響き渡る。


運悪く 近くにいた風神雷神のメンバーの1人が太い腕に叩き潰されたのだ。

そんな光景を静かに見つめる男が一人。


傭兵ギルド グリフィンの魔剣士 キルバインだ。


他のギルドの面々が飛び出す中 彼だけは その場に佇んでいた。

そんな彼が初めて動く。


ゆっくりと腰に下げた 魔剣を抜き放つ。



「目覚めろ 幻魔剣 夢幻刀。」



魔剣から白い煙のような物が放たれる。

キルバインが抜いた剣は 剣というより刀に近い。形は日本刀そのものだ。


魔剣から放たれる魔力にパルシオンが反応し 振り返る。



「なんだ…あれは?」



パルシオンの目に写った物は 10人の同じ男。

煙に包まれたキルバインの姿が10人に増えていたのだ。


そのままパルシオンの前を横切り ゆっくりアークデーモンへと歩み寄る。

パルシオンは その不思議な光景を 目で追うことしか出来ないでいた。



幻乱刃げんらんじん



煙と共に 10人のキルバインがアークデーモンを囲み 斬撃が四方八方から繰り出される。


飛び散る 血飛沫。

アークデーモンの体の至る所が切り刻まれた。



「グォォォォォ!!」



怒りの咆哮と共に 前方のキルバインに拳を落とす。

しかし キルバインの姿はユラユラと揺めいた後 煙となって姿を消す。



「幻か…」



パルシオンが呟く。


夢幻刀の効力はその名の通り 幻。

先程の斬撃は9人のものは幻のものだが キルバイン自身の驚異的な身体能力による高速移動で 四方八方から繰り出す事により 全ての斬撃が本物だと錯覚させたのだ。

幻とリアルの融合。彼は夢幻刀の真の使い手と言っても過言ではない。



「へ~ 夢幻刀か…面白い物持ってんな。」



「魔剣かぁ…」



「さすが 先輩だぜ。」



いつの間にか ゼクス ロイ フラッグの3人は前線へ移動していた。


周りを囲む何人もの同じ顔に アークデーモンは困惑し キョロキョロ見回していた。



「終わりだ。」



9人のキルバインが夢幻刀を上へ掲げると アークデーモンの背後に立つキルバイン以外は煙となる。

背後に立つキルバインが本体だったようだ。

煙全てが夢幻刀へと集まる。


全て集まり終えると同時に キルバインは高く跳躍し アークデーモンの首を 斬り落とした。



「強い…」



騎士達の歓喜の声が響く中 ロイは呆然と呟く。

今の自分とキルバインとの差は どれぐらいなのか。

自分は このメンバーの中で一体どれぐらいのレベルなのか。

ロイの心に焦りが生まれていた。



「先へ進もう。」



キルバインはゆっくり夢幻刀を腰に納め 洞窟の奥を見つめる。


現在 帝都親衛騎士団18名。傭兵ギルド 風神雷神7名。

計 25名の死者が出ている。



「隊列を組み替える。」



レオナルドは多大な損害を考慮し 即座に対応する。

前衛にグリフィン。その後ろを帝都親衛騎士団。そして 風神雷神 白銀の翼と続く。



「これ以上の損害は 撤退の可能性も出てくる。心してかかってくれ。進軍再開!!」



―☆―

「先輩よぉ…この仕事が終わったら あの白銀の翼のどっちかと決闘させてもらってもいいかい?」



フラッグは 悪どい笑みを浮かべる。



「これが終われば貴様の好きにしろ。だが任務に私情は挟むなよ?」



「わぁってるよ!さすが先輩だぜ。話が分かる。」



フラッグは拳を打ち付ける。既にヤル気満々といったところだ。

彼の火が着いたライバル心は 消えることを知らず 更に燃え上がっていた。



「団長。先程から魔物の姿が見えなくなりましたね。あれで全滅させたんでしょうか?」



騎士の一人がレオナルドに声をかけた。



「その可能性もある。だが念のため 最深部まで行く。油断はするな。」



「はっ!!」



レオナルドの言葉に 騎士は敬礼をした後 すぐに持ち場に戻っていく。



「たしかに魔物の姿が無さすぎる…本当に全滅させたのか?」



一人 疑問を呟くレオナルドに一人の男が近寄る。



「いや この奥から邪悪な魔力を感じる。小さな魔力が4つ 強大な魔力が1つだな…」



傭兵ギルド 風神雷神の槍使い パルシオンはレオナルドにそう告げて 歩きながら洞窟の奥に視線を向けている。



「風神雷神のパルシオンだったか?強大な魔力とはどれほどの物だ?上級ランクか?」



「上級ランクではあるが 先程のアークデーモンとは比べ物にならぬぐらいの魔力だ…」



パルシオンの表情が曇る。

強者であるはずのパルシオンの表情が一変したことにより レオナルドは危機感を覚えた。

アークデーモンによって半数近くの死者を出したのにも関わらず 更にそれ以上の強敵。レオナルドには勝利の瞬間を想像することは出来ないでいた。



「このまま戦闘に入って 勝機はあるのか?君の意見を聞かせてくれ。」



レオナルドの問いかけに パルシオンは暫く黙り込む。



「………可能性はゼロではない。

グリフィンのキルバイン。そして 白銀の翼のゼクス。キーマンとなるのは奴等だろう…

俺達は全力で この2人のサポートに回る。それが一番 勝利の可能性を上げる方法だ。」



「なるほど…了解した。我々は全力で彼等のサポートに回ろう。」



―☆―

一方 最後尾では…



「ロイ この先に とんでもない奴がいるぞ。」



「あぁ さっきからかなりデカイ魔力をビリビリ感じるよ。」



ゼクスとロイに緊張が走る。



そんな中 一行は とうとう強大な魔力が潜む 最深部へと到着したのだった。

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