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白銀の翼  作者: 烏丸
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第3話 暗黒の胎動

強大な魔力により辺りの一切の雑音が遮断され 完全なる無音の世界となる。



「凄まじい魔力です。ロイ!退却も頭に入れておいてください。」



「…わかった。」



二人の額からは緊張により汗が流れ出していた。


その時 道の脇にある草むらのほうから人影が現れ ゆっくりと二人に近づいて来る。

その異様な魔力を感じ取り レオは人影に向かい両手を突き出し 魔力を溜め始めた。

ロイも続いて 人影の方向に体を向け 大剣を構える。



「ほぅ…我の魔力を感じ取りながら尚 刃を向けるか。」



一見 人の姿に見えるが 血の通っていないような 白い肌に金色の瞳。尖った耳。髪は腰の辺りまで伸びた黒髪。全身黒ずくめの服装に黒いマントを着けている。



「魔人ですか…」



魔人…その名の通り 魔物側の人間の様な存在で 強さは人間と同じ様に個々により様々である。それによって他の魔物みたいにランク付けはされていない。下級ランクの魔人もいれば上級ランクの魔人もいるからだ。



『サンダースピア』



レオの手から鋭い雷の槍が放たれる。

魔人は自分に向かって飛んでくるサンダースピアを見据え 顔色一つ変えずに身に付けたマントで身を包んだ。



バシュン!



魔人へと直撃したサンダースピアは跡形も無く消し飛ばされる。



「ふむ…中々の魔力だ。だが 我を倒すには あまりに無力!」



身を包んでいたマントをバッと開き レオを嘲笑う。



「ならばこれはどうです!?」

『スパーク』



魔人の回りに広範囲の雷が対流する。



「なるほど…これで我の動きを止めるつもりか。」



魔人は雷に閉じ込められながらも 余裕の笑みを浮かべていた。

そのまま魔人は右手を前に向ける。

すると 掌の前に黒い球体の様な物が現れ 雷は全て黒い球体へと吸い込まれてしまった。



「…ブラックホール?いや 魔力吸収の類いですか?」



「ごちそうさま。」



「正解の様ですね。」



魔人はレオの問いにニヤリと口の端を吊り上げると 納得したレオも同じようにニヤリと笑って見せる。と同時に後方へと飛び退いた。

先程までレオが立っていた位置に雷撃が放たれる。雷撃の出所は魔人の掌の前にある黒い球体からだ。

黒い球体はレオのスパークを吸収し そのまま雷撃に変換され レオへと放たれたのだ。



「よく避けたな。人間にしては大したものだ。」



魔人の言葉が終わるのとほぼ同時に 凄まじい速さで黒い閃光が魔人へと向かう。



「何っ!?」



黒い閃光となったロイはそのままの速さで激しい剣撃を連続で繰り出す。

しかし魔人はそれを凌駕する速さで剣撃の嵐をかわし続けた。そしてそのままロイの腹に蹴りを放つ。

蹴りをまともに食らったロイは数メートル吹き飛び ビルドの町の外壁に激しく叩きつけられた。



「ぐぅ…」



「その髪色…なるほど 道理でこれだけの速さを持つ訳だ。貴様も我等の力に魅了された者の一人か……いや この魔力は種の者か…おもしろい。」



魔人はロイを見つめ 笑みを溢す。



「種の者?なんのことです!?貴方はロイのことを知っているんですか!?」



レオが魔人へと詰め寄る。



「ん?興味があるのか?フフ…己で調べるんだな。」



魔人は右手をレオへと向ける。



「ま 待て!…この…野郎~!!」



大剣を杖によろめきながらロイはゆっくりと立ち上がり 魔人に向かって叫ぶ。



「今の話し…教えろ!お 俺は…一体…なんなんだ!?」



ロイは鬼の形相で魔人を睨みつける。

そんなロイを魔人は嘲笑う。



「知りたければ力ずくで聞き出してみろ。」



「う゛ォォォォォォ!!!」



凄まじい雄叫びをあげて ロイは魔人へと突っ込む。その体の周りには黒いオーラの様なものが放出されていた。



「ロイ…?」



ロイの変化にレオは不安を覚える。今のロイから感じ取れる魔力は邪悪な物だったからだ。


ロイは黒いオーラを放ちながら再び剣撃を連続で繰り出す。しかし黒いオーラ以外に先程とは違う所があった。

それは速さだ。先程の倍以上の速さで剣撃の嵐を繰り出していた。徐々に魔人の体は斬り刻まれ 赤黒い鮮血が飛び交う。

しかし魔人は余裕の表情を見せていた。


「フフ…そのままでは魔力に飲み込まれるぞ。」



「うるせぇんだよぉぉぉ!!!」



剣撃は更に激しさを増す。

そんな中 魔人はロイの腹に手を当てる。

その瞬間 手から黒い光が放たれ ロイの体が宙に舞った。



「がぁっ!!」



苦痛の呻き声をあげ そのまま地面へと激しく叩きつけられる。



「ロイ!!」

『サンダーボルト』



ロイの元へ駆け寄りながらレオの手から雷が一直線に放たれる。

魔人はそれを上半身だけを動かし かわした。



「ロイ!大丈夫ですか!?」



慌ててロイの半身を抱え上げ 声をかける。

しかし黒いオーラは既に消え去り ロイの意識は朦朧としていた。



《これはまずいですね…早く治療しないと。》



そこに魔人がゆっくりと歩み寄る。

接近に気付いたレオは臨戦態勢をとった。



「構えなくともよい。この町の襲撃は中止だ。我はこれで引き上げさせてもらう。その小僧は実に興味深い…そいつが強くなった頃に再び現れよう。…我の名はガルハイト。精々足掻くんだな。脆弱な人間よ。」



そう言い残すとガルハイトは自ら作り出した闇の空間へと消えていく。

ロイはガルハイトの言葉を朦朧とする意識の中 頭に刻み込んだのだった。



―☆―

瞼を開けると そこには見馴れた風景が写し出された。白銀の翼のアジト。ロイの自室だ。



「…つっ!」



ロイはベッドからゆっくり半身を起こした。体の節々が痛み 悲鳴を上げている。



「力に魅了された者…種の者…魔力に飲み込まれる?一体どういうことなんだ?それにあの力は…」



ロイはガルハイトの言葉を思い返し 頭を抱え込む。

その時 部屋の扉が開かれ レオが中に入ってきた。



「ロイ!気がつきましたか。」



レオの表情が驚きから安堵に変わる。



「あれから2日間 眠り続けていたんですよ。」



「2日間!!?」



レオの言葉にロイは驚愕する。

あのガルハイトとの戦闘から2日間もロイは目を覚まさなかったのだ。



「おそらくあの黒いオーラの様な物が原因でしょうね。あれは身体能力を大幅に上げる効果があるようですが 体力を大量に奪うリスクもあるんでしょう。あまり何度も使わないほうがいいですよ。」



「いや あれはどうやったのか俺にもわからないんだ。」



ロイの言葉にレオは腕を組み 考えこむ。

あの時のロイから感じた物は邪悪な気配。

博識なレオでさえ謎の出来事だったのだ。



「おぉ~!目が覚めたかロイ!!」



部屋の扉を豪快に開き バルボアがズカズカと入ってくる。



「オッサン うるせぇよ。病み上がりなんだからもっと静かにしてくれ。」



バルボアはロイの言葉に豪快に笑ってから 真剣な顔つきになり 口を開く。



「レオから話しは聞いた。今は体に異変はないのか?」



「今は大丈夫だ。ちょっと体がだるいくらいかな。」



バルボアの言葉に腕を回しながら答える。



「そうか。俺の古い友人にカイラスという博識の魔術師がいるんだが そいつならお前のことがわかるかもしれん。一度話しを聞いてみるのもいいかもしれんが…」



「本当か!?それなら会ってみたい!」



ロイは目を輝かせるが 何故かバルボアは浮かない表情をしていた。



「それは神秘の森のカイラス殿ですか?」



バルボアの反応にレオが口を開く。



「…そうだ。」



二人の表情が曇るが ロイには理由がわからず 疑問符を浮かべている。



「なんだよ?その神秘の森って?」



「神秘の森は一度足を踏み入れたら二度と生きては戻れないと言われている難所ですよ。」



「でもそのカイラスって人はそこに住んでんだろ?」



「奴は特別だよ。実力もあるし 知識も豊富だ。奴は大体の道を把握している。しかし常人ではそんなことは不可能だ。」



バルボアは頭を掻きながら困った様な表情を浮かべた。

しかしロイの瞳の輝きは失われてはいなかった。



「俺はそれでも行くよ!」



ロイの言葉にバルボアとレオは同じように苦笑する。こうなってしまった時のロイには何を言っても無駄だということを二人は知っていたのだ。



「わかったわかった!神秘の森の場所を教えてやるよ!くれぐれも無茶だけはするなよぉ!」



「了解!」



この選択がいかに過酷な物か この時のロイは知るよしもなかった。



―☆―

翌朝 まだ太陽も昇りきっていない薄暗い早朝から神秘の森へと出発する。

今現在このガレン大陸の季節は肌寒い秋の時期。

冷たい風がロイの肌に突き刺さる。



「寒っ!もうちょい着込んでくりゃよかったかな……ん?」



ロイの前方から人影が近づいて来ていることに気付き 足を止めた。


黒いフード付きのローブに大剣を背負った男。

ローブの裾はボロボロで頭までフードを被っていて顔は半分隠れている。いかにも怪しい雰囲気を漂わしていた。



「ジャガンさん!?」



ロイの呼びかけに男は顔を上げる。



「…ロイ…か…」



この男は白銀の翼 初期メンバーの一人。魔剣士のジャガンだった。

実力ではマスターであるバルボアを凌ぎ 白銀の翼最強と言われている強者だ。

誰にでもフレンドリーに話すロイでも このジャガン相手では 異様な雰囲気とオーラもあり 自然と敬語になってしまっていた。



「仕事…か?」



「今日は仕事じゃないです。カイラスって人に会いに神秘の森に行くとこです。」



ロイの返答にジャガンがピクリと反応する。



「神秘の森……あそこは…気をつけろ。」



「わかってます!俺は絶対戻って来ますよ!」



ロイは笑顔で答える。

その強い眼差しを見て ジャガンは一瞬微笑んだ様に見えた。



「じゃあ 行ってきますんで!!」



ロイは胸の前で力強く拳を握りしめて見せた。



「シュバルツの目に…アイツはどう写るか…」



ジャガンは黒のローブを風になびかせながら 見送る様にロイの背中を見続けた。



―☆―

白銀の翼を後にしてから 時間にして6時間程。

ロイは神秘の森の入口へと到着していた。



「ここが神秘の森……」



その異様な雰囲気に圧倒されていた。

その名の通り 言葉にするなら正に神秘的の一言だ。



「……行くか!」



ロイは力強く神秘の森へと足を踏み入れた。

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