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白銀の翼  作者: 烏丸
24/30

第24話 死闘の果てに

傭兵ギルド 白銀の翼の若き剣士ロイと魔人集団 豪魔邪霊衆の首領ゲオルグの闘いを静かに見つめる銀狼の姿があった。



「ナンテ闘イダ…

アノ魔人ノ凄マジイ殺気ト戦闘力ニモ驚キダガ ソレト互角ニ渡リ合エル程 小僧ガ強クナッテイタトハナ…」



銀狼シュバルツは呆然とロイの背中を眺めていた。


すると そこへ黒いローブに身を包んだ男がゆっくりと近づいて来る。



「シュバルツ。

アイツをどう思う?」



その男は白銀の翼 最強の魔剣士 ジャガンだった。

死神ミカエルとの闘いを終え ロイの元へ駆けつけていたのだ。



「ウム…

ロイニハ コノ世界ヲ変エレル程ノ力ヲ感ジル。

マダ粗削リデハアルガナ。」


フッと鼻で笑いながら 話すシュバルツ。

ジャガンも同じ様に微笑み ロイの背中を見守っていた。



「お~お~!

アイツ善戦してるじゃねぇか!」



「まさか ここまで強くなっていたとは…」



そこへ 各々の闘いを終えた白銀の翼の面々が姿を現し 合流する。



「ジャガン お前も終わったのか。」



「あぁ…」



バルボアの言葉に返事を返すジャガンだが 既に意識はロイに集中していた。



「始まりますよ!」



レオが口を開いた直後 ロイとゲオルグが激しく衝突する。


両者一歩も引かぬ 火花舞い散る凄まじい剣と剣のぶつかり合い。



「うぉあぁぁぁ!!」



ゲオルグの剣筋は怒りによって先程より雑にはなっているものの その威力は桁違いにはね上がっていた。


ロイは剣をぶつける度に少しずつ押し返され始めていたのだった。



『小僧!何をしておる!?このまま続ければ不利になる一方だぞ!』



「くっ…!

んなこたぁ 分かってる!けど剣圧が凄すぎて 引くに引けねぇんだよ!

ここで一歩でも引いたら 一瞬で斬られちまう!」



激しく剣をぶつけ合っているにも関わらずロイは冷静であった。

このロイの判断は正しいのだ。

この剣圧の中では 引かずに押さなければ一瞬で肉塊に変えられてしまうであろう。

だがしかし このままぶつけ合いを続ければ不利になる一方だというのは真実である。


ロイは この状況を打破する為 一か八かの賭けに出る。

ゲオルグの剣を受け流しにかかったのだ。


絶妙なタイミングで受け流し ゲオルグの懐に飛び込むロイ。


しかし 懐に入り込んだのは一瞬。

ロイの体が後方へ弾き飛ばされる。



「エア・インパクトか…!」



ゲオルグの厄介な特殊能力は健在である。

更には弾き飛ばされたことにより 意図的ではないが一歩引いたことになる。

最悪の展開だ。



「くたばれ!糞餓鬼がぁ!!」



ゲオルグの凶刃がロイを襲う。


ロイは左肩 左脇腹 右腿を深く斬り裂かれ 赤い鮮血を撒き散らす。



「ぐぅっ!!!」



呻きを漏らしながら 今度は自ら後方に跳び ゲオルグの追い討ちを回避する。



「ハハハハ!その傷じゃあ もうまともに動けねぇだろ?勝負あったなぁ。」



ゲオルグは高らかに笑い 勝利を確信する。


しかし 万事休すかと思われたロイの表情には まだ諦めの色が見られない。



「アホぬかせ。

まだまだ これからだよ。」



ロイは黒いオーラを爆発的に放出させ その力を治癒力向上に回していく。


みるみる内に赤い蒸気を吹き出しながら塞がっていく傷口。



「そうか…

種の者には そういう鬱陶しい能力があったんだったな。」



ゲオルグは舌打ちをして ロイを睨み付けた。


一方のロイは 塞がっていく傷口とは逆に 何故か次第に表情に曇りが出ている。



『傷口を塞ぐには相当な魔力が必要な様だな。

早々何度も この手は使えぬか…

いけるのか?』



「あぁ なんとかな。

けど魔力を大分失っちまった。」



ロイの表情が曇っていた原因は 魔力の大量消費。

傷を負っても 何度も何度も一瞬で傷を塞ぐ無敵の超人という訳にはいかなかったのだ。



「ならば 傷を治す隙を与えぬ程 八つ裂きにしてくれる!!」



当然のことだが ロイの傷が完全に塞ぎきる前に攻撃を再開するゲオルグ。


強烈な剣での一撃をレムナントで受け止めたロイだったが 治りかけていた傷口から再び鮮血が舞う。



「さっさと死ぬんだな!」



ゲオルグは徐々に剣に力を込め ロイに圧力をかけていく。

ロイは黒いオーラの力を治癒力向上から身体能力向上に回し応戦するが 次第に押され始め 体からは血が滲んでゆく。



「くっ…そがぁぁ!!」



ゲオルグの刃がロイに触れるかと思われた刹那 見事な剣捌きで刃を受け流し ゲオルグの背後へと回った。


しかし 態勢が崩れ隙だらけのゲオルグに対しロイは攻撃をせずに間合いを取る。


これはエア・インパクトを警戒しての行動であった。

今までの流れからゲオルグは隙を作った瞬間に能力を発動させる鉄壁の戦術を駆使していることを悟ったのだ。


隙が出来たからといって迂闊に手を出せば たちまち此方に死の危険が及ぶ。

判断としては正しいが これではゲオルグに対し攻撃を当てることが出来ない。

現にロイはゲオルグに対してまだ一太刀も浴びせれてはいなかった。



「フン!少しは考えれるじゃねぇか。

だが いつまでそうしているつもりだ?」



ゲオルグは不敵な笑みを浮かべ ロイの方へゆっくりと振り返った。


エア・インパクトを打破する為には 裏の裏をかく攻撃か 衝撃波ごと叩き斬るしか方法はない。



「仕方ねぇ…

危険だけど やってみるか。」



『何をする気だ?』



「まぁ 見てろって!」



何かを閃いたロイは ニヤリと笑い 駆け出していく。


傷を完全に塞ぐことが出来なかった以上 長期戦は出血多量の危険性も浮上してくる。

出来るだけ速く この闘いに決着を着けなければならなかった。



「うぉらぁぁぁ!!!」



ロイは本当に何かを閃いたのか疑わしい程の 大雑把な連撃を繰り出していく。

ゲオルグもこれには呆れ顔になった。



「何か策があるのかと思えば また特攻か?不様な。」



ゲオルグはロイの連撃を軽々と受け止め ロイの動きを完全に停止させた。



「悪ぃな。それが俺のやり方なんだよ!」



一瞬の早業で 何かの動きを見せるロイ。



「な なに…!?」



驚くゲオルグの瞳には自身の胸元が切り裂かれ ドス黒い鮮血が舞っている光景が目に写っていた。


何が起こったのか理解出来ないといった様な表情のゲオルグはロイに視線を移す。



「ふぅ~。どうやら成功した様だな。」



ロイの右手には魔剣レムナント。

そして 左手には妖刀 百鬼爪刃が握られていた。

ゲオルグの胸元を斬り裂いたのは この百鬼爪刃であった。


土壇場での二刀流。

しかし大剣での二刀流は破壊力こそ凄まじいが扱いの難しさ 体力の消耗はかなりのものがあるだろう。

それを このタイミングで実行して 成功させたロイの勇気は賞賛に値する。



「小賢しい…

大人しく殺されていれば 良いものを。」



「残念ながら大人しくするのは性に合わなくてね。」



鋭い眼光で睨み合う両者。

ゲオルグは剣を上段に構え ロイはレムナントと百鬼爪刃を目の前で交差させる様に構えた。



『おい小僧!そのまま二刀流で挑むつもりか!?』



「アイツには普通にやっても勝てねぇ。

こんぐれぇ 一か八かの戦法を使わねぇとな。」



レムナントが心配をするが ロイの決意は固かった。

元々こうだと決めたら絶対に他人の言うことを聞かない頑固な性格なので当たり前と言えば当たり前である。



「いくぜっ!!」



電光石火の突撃でロイが先に動いた。

どんどんスピードを上げて真正面から向かっていく。


ゲオルグの懐の寸前まで来た所でロイはサイドステップを駆使し ゲオルグの右側面へと回り込む。

そして そのまま右手に持つレムナントを首目掛けて振る。

しかし この攻撃は容易く剣で受け止められてしまった。


次にロイは間髪入れずに左手の百鬼爪刃をゲオルグの背後から振り抜いた。

怒涛の前後攻撃。

これには流石のゲオルグも反応仕切れないと思われたが 案の定エア・インパクトを発動させて 難を逃れる。


衝撃波によって大きく仰け反らされたロイだったが 足を踏ん張り 吹き飛ばされることは回避した。


しかし休む間もなく 今度はゲオルグが剣を ロイ目掛けて振り抜く。

これをロイはバランスを崩しながらもレムナントで受け止めて見せた。



「うらぁっ!」



「ぐっ…何っ!?」



ロイの意表を突いた蹴りがゲオルグの右脇腹に直撃する。

サイドからの強烈な一撃にバランスを崩すが 直ぐ様左足で大地を蹴る様にして踏み止まり 態勢を無理矢理整える。


これには追撃を狙っていたロイも足を止めざるを得なかった。



「塵になりやがれ!!」

『ダーク・ボム』



黒き爆炎が辺り一帯を吹き飛ばす。

ロイはいち早く反応し 後方へ大きく飛び退いたが 凄まじい爆音によって 五感の内 聴覚をやられてしまっていた。


一見 耳が一時的に聞こえなくなっただけで 大したことはない様に思われるが 戦闘において音が聴き取れないということは圧倒的に不利である。


平衡感覚の低下。

間合いの読みすらも狂わされてしまうのだ。


更には今のロイの場合 爆音によって鼓膜が損傷されたために 凄まじい程の耳鳴りにも苦しめられている。

つまりは集中力の低下にも繋がってしまう。


ロイが不利な状況は変わらずも悪化してしまった。



「ちっ…!」



『大丈夫か?小僧。』



ロイの苦し気な表情に レムナントが声をかける。

しかし ロイに反応はない。レムナントの声も聴こえなくなってしまっていたのだ。



『……ふぅ。』



突如 レムナントの鍔元の水晶が光り輝く。



『おい!聴こえるか?小僧。』



「…レムナント?」



レムナントの言葉にロイが反応を示す。

今の言葉は音声ではなく 脳内に直接語りかける言葉であった。

これならば 今のロイにも声が届く。



『不甲斐ないが 今は貴様が我の主。

我が貴様の耳となろう。』



「耳になる?何言ってんだ?」



レムナントの突然の申し出にロイは疑問符を浮かべた。



『我が周りの全ての音をデータ化し リアルタイムで貴様の脳に送ってやる。

これで聴覚をやられたこと等 全くの無意味だ。』



「お前 そんなことまで出来んのかよ!?」



『フン!我をその辺の平凡な魔剣と一緒にするでないわ。

では早速始めるぞ。』



再びレムナントの水晶が光り輝く。



「…!!!

聞こえる!いや 聞こえるというより周りの音が分かるって感じか…

不思議な感じだ。」



レムナントから脳内に送られてくる特殊な信号にロイは驚いていた。

しかし 確かに感じ取れる周りの音。

これにより不利な状況からは抜け出すことが出来た。



『このモードを使っている間は我の力を攻撃には回せないぞ。

己の実力で戦うんだ。』



「あぁ。端から そのつもりだ。」



ロイは百鬼爪刃を背中に納め レムナント一刀を両手で力強く握り締める。

意識を集中させ 感覚を研ぎ澄ます。

強き眼差しの矛先は豪魔邪霊衆 首領ゲオルグに向けられていた。



「いくぜ!!」



黒いオーラを放出させながらフェイントを織り混ぜ 凄まじいスピードでゲオルグに迫る。


その凄まじいスピードから繰り出されるフェイントは黒き残像を生み出し ゲオルグの目を撹乱させていた。



「くっ…!」



動揺するゲオルグは全方向にエア・インパクトを発動させて防御態勢を整えた。


しかし この判断は致命的ミスとなる。

ロイの狙いはエア・インパクトごとゲオルグを叩き伏せること。

素早くゲオルグの背後に回ると 黒いオーラの全力をレムナントと両腕に集め 渾身の一撃を振り下ろした。


全能力を攻撃に回した 力まかせの一撃。

本来ならば隙だらけで回避することは容易な筈だが 回避を考えず エア・インパクトで対抗しようとしたゲオルグには回避不能。


強烈な一撃がエア・インパクトの衝撃波と衝突する。



「ちぃっ!!」



ゲオルグは自分の犯したミスに気付くが 時既に遅し。

黒きオーラを纏ったレムナントが衝撃波を切り裂き ゲオルグの背中に深くめり込んだ。



「ぐがぁぁぁぁ!!!」



雄叫びをあげながら ドス黒い血を撒き散らすゲオルグ。


しかし後一歩という所でレムナントの刃の動きがピタリと止まってしまう。



「なっ!?筋肉で止めやがったのか!?」



切り裂かれはしたが エア・インパクトの衝撃波。ゲオルグのずば抜けた反射神経と鋼の肉体。ロイの傷 疲労。

いろんな要素が重なって為せる技である。


かと言って ゲオルグの受けた傷が相当な致命傷なことには変わりない。



「おのれぇ…ガハッ!」



ゲオルグは憎悪の瞳でロイを睨み付けながら激しく吐血する。


ロイによる一撃は背中から内蔵にまで達していたようだ。



「ゴホッ!まだだ…

人間如きに殺られてなるものか…」



吐血を繰り返しながら ヨロヨロとロイに向かって歩を進める。

一方のロイは動きを見せず その場に仁王立ちしていた。



「この…下等種族がぁぁ!!!」



ゲオルグは最後の力を振り絞り 剣を振り上げると渾身の力でロイ目掛けて振り下ろす。



「人間舐めんじゃねぇぇ!!!」



ロイはその一撃をレムナントで弾き飛ばし 間髪入れずに横薙ぎの一閃を繰り出した。


一瞬の静寂。


その後 ゲオルグの首がズルリと擦れ落ち 地面へと転がった。

大量の黒い血を吹き出しながら 首を失った胴体が崩れ落ちる。



『終わったな。』



レムナントが呟く。

遂にゲオルグとの死闘に決着を着けたロイ。


今までの様に力を使い果たして気を失うことも無く 全身傷だらけになりながらも その足で威風堂々と地面に立っていたのだ。



「ロイー!!」



闘いを見守っていた白銀の翼の面々が続々とロイの元へ駆けつける。



「テメェ!強くなってんじゃねぇかよ!」



ゼクスが片腕でロイの首をガッチリと掴み 頭をくしゃくしゃと撫で回す。



「痛ぇ痛ぇ!!怪我人なんだから 丁重に扱えよ!」



ロイはゼクスに怒りながらも 嬉しそうな表情を見せていた。



「おかえり。

本当に強くなって戻ってきましたね。」



続いてレオがいつもの笑顔でロイの頭に優しく手を置く。



「おぅ!ただいま!」



笑顔でそれに応えるロイ。

見馴れた笑顔だが それが何よりも嬉しかったのだ。



「青年よ。久しいな。

見違えたぞ。」



「あれ?アンタはたしか帝都の時に会った騎士団長さんじゃねぇか。

なんでここに?」



ひょっこり現れたレオナルドに対し疑問顔を向ける。



「レオナルド殿は騎士団を引き連れて俺達に力を貸しに来てくれたんだ。

彼等のおかげで俺達は勝利を手にすることが出来た。改めて礼を言わせてもらうよ。レオナルド殿。」



深々と頭を下げるバルボア。



「いやいや。

微力ながら力になることが出来て良かったよ。

その変わりと言ってはなんだが また帝都で何かあった時は君達の力を貸してほしい。」



「それは勿論だ。

我々 白銀の翼は依頼があれば すぐに駆けつけます。」



バルボアとレオナルドは固い握手を交わした。


白銀の翼と豪魔邪霊衆の闘いは 多大な被害は受けたものの白銀の翼の勝利という結果に終わった。


帝都に戻ったレオナルドは国王エドワルド3世に この闘いを報告。

白銀の翼の名声はグンとハネ上がったのだった。


そして豪魔邪霊衆 首領ゲオルグを討ち取った 白銀の翼のルーキー ロイ・ストライドの名は一躍有名となって広まっていくのであった。

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