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白銀の翼  作者: 烏丸
13/30

第13話 聖水

神秘の森の襲撃事件から数日後…

一行は白銀の翼のアジトへと集まっていた。



「おいヒューイ!ロイの状態はどうなんだ!?」



自室のベッドに横たわるロイの姿を見つめながら バルボアは不安そうな表情を浮かべていた。



「……体の傷は全て完治しています。体力面もそこそこ回復してるはずなんですけど…

未だに意識が戻る気配はないですね。

精神面に甚大なダメージがあるようです。精神汚染の傾向も少し見えますし。」



ヒューイはロイが眠るベッドの横に立ち 深刻そうに口を開く。


数日が経過して体は回復しているにも関わらず ロイはずっと意識が戻らない状態が続いていたのだ。



「恐らく半覚醒による精神汚染じゃろう。魔の力がロイの体を蝕んでおるんじゃ。」



後方で様子をうかがっていたカイラスが口を開いた。



「魔の力を浄化する聖水が必要ですね…」



「聖水?その聖水はどこにあるんだ?」



ヒューイの呟きに素早く反応するバルボア。



「聖水は教会に行けば手に入ります。」



聖水とは読んで字の如く 邪悪な力や呪いを浄化する効果がある聖なる水のことである。

その生成方法は神に仕える神父や神官の神聖魔法によって生み出される。

神聖魔法とは治癒魔法の上位クラスの魔法の様なもので 失った手足の再生や 時と場合によっては死者を蘇生することもできるという。



「事態は急を要します。早急に聖水が必要なので ここから一番近い教会に取りに行ってください。」



「ここから一番近い教会……マライ大聖堂だ!」



バルボアは大声をあげながら慌ただしく出発の準備に取り掛かる。



「待ってくれマスター!ここはスピードのある俺とレオで行ってくる!」



話しを聞いていたゼクスとレオが既に準備万端で待ち構えていた。



「そうか?わかった!大至急マライ大聖堂へと向かってくれ!」



「了解!!!」



二人は力強く返事を返すと 直ぐ様マライ大聖堂へと出発した。



―☆―

豪魔邪霊衆の根城


「ねぇエリック。ジダンの奴 殺られちゃったらしいね。」



金髪の少年魔人ミカエルが口を開く。



「…ミカエルか。あぁ つい先日のことだ。部下も引き連れて この坐間とはな…

奴は豪魔邪霊衆の恥さらしだ。」



ミカエルに答えたのは長髪青髪の魔人エリックだ。



「フフッ♪ジダンは弱いからねぇ~♪だから僕に任せてくれればよかったのに。」



ミカエルはジダンの死を特に気にする様子もなく陽気に話していた。

そんなミカエルを見て エリックは少し呆れた表情をしている。


その時…

周辺に凄まじい巨大な魔力が広がった。



「…どうやらボスのお帰りの様だな。」



エリックとミカエルの視線の先に 逆立った黒髪の黒いマントを身に纏った魔人の姿があった。



「ジダンが殺られたそうだな。誰にやられた?」



威圧感のある低い声が放たれる。

この魔人こそが豪魔邪霊衆の首領ゲオルグである。



「白銀の翼という傭兵ギルドの者達です。どうやらそのギルドに魔導教典を持つ老人もいるようです。」



魔導教典という言葉を聞いてゲオルグの顔色が変わる。



「ほぅ…

魔導教典はそこにあるのか。何としても手に入れろ。」



「僕に任せてよ♪」



ゲオルグの前に ひょっこりとミカエルが立つ。



「…お前は少々遊びすぎる。駄目だ。」



ゲオルグの言葉にミカエルは頬を膨らませて見せた。

魔人ではあるが こうして見るとまだあどけない人間の少年の様に見える。



「ちゃんと仕事するからさぁ~。お願いだよ。」



ミカエルは等々駄々をこねだした。

そんな姿にゲオルグとエリックは呆れ返った表情をしている。



「……仕方ない。

ヨハンはいるか?」



ゲオルグが呼びかけると闇の中から年老いた魔人が姿を現す。


鼻の下から顎にかけて白い髭が生えている。

一見すると普通の老人の様に見えるが ただならぬオーラを放っていることから相当な手練れと見て間違いはないだろう。



「何用ですかな?閣下。」



ヨハンが立派な髭を撫でながら口を開いた。



「仕事だ。ミカエルに魔導教典の奪取を任せる。

お前にはミカエルのお守りを頼もうと思ってな。」



「やったね♪よろしく!ヨハン爺。」



ゲオルグの言葉にミカエルは飛び跳ねて喜ぶ。



「ミカエルのお守りですか…

老体には少々堪えますな。まぁ閣下の命令とあらば致し方ない。お任せ下され。」



「…で?その白銀の翼っていうギルドの奴らはどこにいるのさ?」



ミカエルの問いかけにゲオルグは難しい表情を浮かべる。



「奴等の居場所はまだ特定していない。どうしたものか…」



悩む3人を尻目にヨハンは何かを閃く。



「閣下。奴等は神秘の森に2度現れとるんですよね?ならばその周辺の町や村を襲撃してはいかがですかな?

傭兵ギルドならば襲撃の情報が奴等の耳にも届くはずですじゃろ?」



ヨハンの提案に3人は目を丸くした。



「なるほど…それならば奴等が出てくる可能性は高い。」



「さっすがヨハン爺♪頭いいね。」



「……よし!ヨハンの提案でいこう。ミカエルとヨハンは神秘の森周辺の町村を派手に襲撃しろ。」



ヨハンの提案に皆が同意し ミカエルとヨハンの2名は神秘の森周辺の町村へと向かって行った。



―☆―

マライ大聖堂


ここはマライ大聖堂。幻想的で神々しい巨大な建造物。建物の上部分には色鮮やかな巨大なステンドガラスが備え付けられている。



「すみません。誰かいますか?」



レオが大聖堂の大きな扉を開けて挨拶をする。

すると 奥の方から司祭服に身を包んだ背の低い黒髪の青年が姿を現す。



「何か御用でしょうか?私はマライ大聖堂の神父見習いのアレンと申します。」



アレンと名乗る男は深々と頭を下げ 2人に挨拶をした。



「実は仲間が邪悪な力による精神汚染を受けてまして こちらで聖水の方を頂きたいのですが?」



レオの言葉にアレンはなぜか困った表情をしている。



「……すみません。

生憎今は神父様が不在なんです。神父様の許可なしに聖水をお渡しすることは出来ないんです。」



落胆の事実にレオとゼクスは顔を見合わせる。



「おい!どうする?他の教会を探すか?」



「いえ駄目です。他の教会はかなり距離があります。

……アレンさん。神父様は今どちらに?」



レオの問いかけにアレンは戸惑いの表情を浮かべながら口を開く。



「………実は昨日ここから北の方にあるリベル村という村を訪問に行ったきり まだ戻らないんです。

普通なら数時間歩けば辿り着く距離なんですけど…

神父様自身も昨日の夜には戻ると言っていたんですが…」



アレンは不安そうに話す。


現在時刻は夕刻。剰りに遅すぎる。

何かトラブルにあったと考えるのが妥当である。



「……わかりました。

私達が探して来ましょう。」



突然のレオの言葉にゼクスは目を見開いた。



「おい!そんな時間あるのかよ!?」



「他の教会を探すよりは賢明だと思います。

リベル村はそれほど距離も離れてないようですし。

それにこのまま放っておく訳にもいかないでしょう。」



「それはそうだが…」



ゼクスはまだ納得がいかない様子だ。



「さぁ!迷ってる暇はありません!急ぎましょう。」



レオは半ば強引にゼクスを連れてリベル村へと向かって出発した。



―☆―

リベル村へと向かう道中 二人は林道へと差し掛かっていた。

薄暗く気味の悪い光景が長々と続いている。



「……ゼクス。」



そんな中レオは急に立ち止まりゼクスに声をかける。



「あぁ…わかってる。囲まれてるな。」



同じ様にゼクスも立ち止まり辺りを警戒し始めた。

二人を囲む様にして広がる邪悪な魔力。



「来ます!!!!」



レオの叫びと共に茂みから10体の魔物が現れる。


赤黒い皮膚に醜い醜悪な顔。頭部は異様な骨の形状で2本の角が生えた様な形をしている。


レッサーデーモン。


下級ランクに属するズル賢い魔物である。



「時間が惜しい。一気に片付けるぞ!」



「無論です!」



二人は戦闘態勢に入ると同時に素早く攻撃を開始した。


アイコンタクト一つでレオは前方の5体。ゼクスは後方の5体を分担して狙う。

『サンダーボルト』



レオの放つ雷の魔法が5体の魔物を黒ずみに変える。


その直後 レオは雰囲気の違う魔力を感じ取り 慌てて後方を振り返った。



「ゼクス!待ってください!!」



ゼクスはレオがそう叫ぶ前に既に攻撃を止めていた。


5体のレッサーデーモンの内の1体が自らの尾で何か大きな物体を巻き 前方でチラつかせている。



「…あれがそうか?」



「…えぇ。意外と早く見つかりましたね。」



レッサーデーモンがチラつかせていたのは司祭服に身を包んだ一人のグッタリした老人であった。


神父がそう何人も出歩く筈はなく 彼がマライ大聖堂の神父と見て間違いないだろう。



「生きてんのか?」



グッタリ吊るされた神父をゼクスは不安な表情で見ていた。



「かなり衰弱している様ですが息はあります。助け出しましょう。」



「…けどなんでアイツ等は神父を食わずに人質の様に扱ってるんだ?」



ゼクスは最もな疑問をレオに投げ掛ける。



「…恐らく あの人を利用して救出に来た傭兵ギルドの屈強な戦士達を捕食するつもりなんでしょう。

魔物にとって鍛え上げた強い戦士の肉ほど美味だと聞いたことがあります。」



レオの推測は的中していた。

レッサーデーモンは悪知恵の働くズル賢い魔物なのである。



「しかし…相手が悪かったですね。その程度の戦術等 私達には無意味。」



「あぁ さっさと終わらせようぜ。」



二人は人質にされた神父に動じる事なく戦闘態勢に入った。


予想だにしない展開にレッサーデーモン達は動揺を見せている。



『サンダースピア』



「食らえ!!」



レオの魔法とゼクスの銃弾が神父を避け 正確にレッサーデーモンを捕らえる。

残り5体のレッサーデーモン達は断末魔の悲鳴をあげ 一瞬で全滅したのだった。



―☆―

マライ大聖堂



「神父様!」



神父を救出したレオとゼクスは急いでマライ大聖堂へと戻っていた。

それを安堵の表情で神父見習いのアレンが出迎える。



「衰弱していますが 休息をとって栄養をつければ すぐに良くなる筈ですよ。」


笑顔で声をかけるレオに アレンは深く頭を下げ 何度も何度もお礼の言葉を告げたのだった。



数時間後 意識の戻った神父に了解を得て レオとゼクスの二人は念願の聖水を手に入れた。


二人は急いでロイの待つアジトへと向かう。

これでロイは助かる筈である。


しかし…


白銀の翼を狙う豪魔邪霊衆の毒牙は すぐ傍まで迫って来ていたのだった。

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