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白銀の翼  作者: 烏丸
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第12話 援軍

鉄の体と化したヨークは 余裕の表情でゼクスとカイラスを眺めている。

逆に二人は迂闊に近づくことが出来ないでいた。



「どうした?来ないのか?………ん!?」



何かに気付くヨーク。

その視線はカイラスへと向けられていた。



「お前かぁ!魔導教典を持ってるジジィってのは!」



ヨークは薙刀の刃をカイラスへと向ける。

そして 突撃の体勢を取り始めた。



「魔導教典は頂くぞ。」



ヨークが走り出そうとした その時…

ゼクスが数発の弾丸を放つ。

と同時に放たれた弾丸がヨークの鉄の体に弾かれてしまう。



「無駄なことしてんじゃねぇよ。面倒臭ぇ。」



ヨークは足を止め 苛立ちの表情をしている。



「あぁっ!?」



その時…

ヨークはカイラスが魔導教典を開き 魔力を溜めていることに気が付く。


流石の鉄壁の体も 未知の力を秘める魔導教典に対抗するにはリスクが高すぎる。


ヨークは慌てて後方に跳び 回避行動に移った。



『ジオ・スタンプ』



カイラスが放った魔法で 広域に重力のプレスが広がる。

その範囲はあまりに広大であった為に ヨークは回避が間に合わず重力のプレスに圧される。



「ぐぅっ…クソ…」



ヨークの鉄の体がギシギシと音をたて 押し潰されていく。

ヨークはなんとか踏ん張り それを耐えていた。



「カイラス!そのまま続けてくれ!俺がトドメを刺す!」



「了解した!」



ゼクスは素早く拳銃の弾丸が入ったバレットを入れ替える。

そして銃口をヨークへと向けた。



「…けっ!そんなもんが…俺に通用するかよ…」



ヨークは重力に押し潰されながらも不敵に笑みを浮かべていた。


確かにヨークの鉄の体には 先程と同じように銃弾は通用せず弾かれてしまうだけだろう。



「それはどうかな?」



激しい銃声と共に弾丸が放たれる。



「なっ!!?」



驚愕の声をあげるヨーク。

銃弾を弾き返す筈のヨークの鉄の体に 大きな風穴が開いたのだ。



「今のは徹甲弾ってやつだ。

装甲に穴を開ける為に設計された砲弾さ。

主に戦車砲とかに使われるやつだが 今のはそれをコンパクトにした弾丸だ。

そして俺の銃は特注品でな。徹甲弾を放つ衝撃にも耐えられる。」



ゼクスは自慢気に銃を指で回して見せた。


ヨークが撃ち抜かれたのは体の中心部分。人間で言うところの心臓に当る部分だ。



「がぁぁ…!」



どうやら急所には間違いなかったようだ。

ヨークの体がみるみる内に鉄から元の姿へと戻っていく。


そして弱りきった体では重力魔法を防ぐことは敵わない。

ヨークは呆気なく押し潰されて 肉塊と化してしまった。



「よ~し。ロイ達ももう片付いた頃だろ…

……!!!!」



ゼクスの目に写ったものはグッタリと倒れたロイと その上に覆い被さる様にして倒れる 血だらけのレオであった。



「ロイ!レオ!!」



ゼクスとカイラスは慌てて二人の元へ駆け寄る。


レオは出血が酷いが 息も心臓の鼓動もしっかりしていた。

しかしロイの方は外傷は見当たらないが 息も微かで 鼓動も弱々しくなりつつある。


この状況から見て 意識を失ったロイを庇ってレオが盾となったのだろう。


ゼクスは怒りの滲み出る瞳を 正面でニヤついているジダンへと向けた。



「テメェ…

覚悟は出来てんだろうな?」



「おぉ 怖い怖い。」



ジダンはゼクスに向けられた銃口に一切の動揺を見せずに 余裕の笑みを浮かべている。



「カイラス!あんたは二人に治癒魔法をかけてくれ。こいつは俺がやる!」



「承知した!」



カイラスは直ぐ様二人の治療へと移った。


そんなゼクスとカイラスの二人を見て ジダンは呆れた様な笑みを浮かべる。



「クク…お前らは仲間がやられた怒りと動揺で周りが見えていないようだな。

どうやら今到着したようだ。」



ジダンの意味深な言葉に一瞬首を傾げる二人だったが すぐに異変に気付く。

辺り一帯から邪悪な魔力が溢れていたのだ。



「しまった!囲まれておる!」



カイラスは治癒魔法を中断させ 叫ぶ。


すると 周りからゾロゾロと魔人の集団が姿を現す。

数は20。全員がザンバとヨークレベルの魔人だ。ロイ達が今まで相手にしてきた下級ランクの魔物の大群とは訳が違う。



「黒い魔剣士対策に一応援軍を用意してたんだがな…

まぁいい。お前等 魔導教典を奪え!」



ジダンの号令と共に一斉に魔人達が二人に詰め寄る。



「そこまでだ!!」



その時 背後から馬鹿デカイ声が響いた。

と同時に巨大な肉切り包丁が凄まじい勢いで回転しながら飛来する。


巨大な肉切り包丁が地面に突き刺さり その衝撃波に怯み 魔人達は後退していく。



「ビビってんじゃねぇ!!

テメェ!何者だ!?」



苛立ちに声を荒げながらジダンが叫ぶ。



「俺は白銀の翼ギルドマスターのバルボアだ!内の者がエラい世話になったなぁ!魔人さんよ!」



ゼクスとカイラスの側まで近づいたバルボアは巨大な肉切り包丁を容易く担ぎ上げた。



「バルボアさん。無茶し過ぎじゃないですか?お仲間さんに その大っきな包丁が当たったらどうするんです?」



バルボアの後ろから綺麗な水色の髪をした細身の男が姿を現す。

その男の後ろには黒髪 短髪の左頬に傷のある男の姿があった。



「マスター。後ろのお二人さんはどちらさんだ?」



見知らぬ二人の姿を見て ゼクスは疑問を投げ掛ける。



「ん?おぉそうか!お前は初対面だったな!

お前達が出て行く前に俺が あのワンコロの治療を知り合いのヒーラーに頼むって言っただろ?

コイツがそのヒーラー。

傭兵ギルド《暁の刃》のヒューイだ。」



「よろしく。」



バルボアに紹介を受け ヒューイは笑顔で軽く会釈をした。



「…暁の刃ってあの有名な!?」



ゼクスは目を見開いて驚きの声をあげた。



「マスター!アンタなんでそんな大物と知り合いなんだよ!?」



「ん?元々はそこのギルドのマスターが古い友人でな。

んで このヒューイはコイツが新人の時代からの知り合いだ……」



「オイ!テメェ等!!いつまで俺様達を無視するつもりだ!ブチ殺すぞ!!」



痺れを切らしたジダンが叫ぶ。

その顔は怒りで真っ赤に染まっていた。


ジダンが手を上げて合図を出すと 魔人達が全員 戦闘態勢に入る。



「ヒューイさん。俺に任せてもらってもいいっスか?」



黒髪の男が背中に背負った異様な形の大剣に手をかけながら口を開く。



「そっちの兄さんも暁の刃のメンバーかい?」



ゼクスの問いかけにヒューイは頷いた。



「えぇ。彼は新人のアクセルです。僕は戦闘タイプじゃないんで 彼が僕の護衛役なんですよ。

…じゃあアクセル。頼んだよ。」



「了解!」



アクセルが背負った大剣を一気に引き抜く。


刃はノコギリ状。柄の部分はゴツい機械の様な造型をしている。

更に柄の先端部分からは太いチェーンが伸び 剣を握る手とは逆の 左腕に握っていた。

なんとも異様な造型の大剣である。



「殺れぇぇぇぇ!!!」



アクセルが剣を引き抜くと同時にジダンが号令を出し 一斉に魔人達が押し寄せる。


四方八方から繰り出される攻撃をアクセルは見事な体捌きで 避け続けていた。



「ふんっ!」



アクセルが一呼吸で振り抜いた斬撃は魔人の体を真っ二つに斬り裂く。


魔人達は仲間が真っ二つにされても先程の様に怯む事なく攻撃の手を休めない。


アクセルは素早く回避行動に戻り 再び攻撃の嵐を掻い潜っていく。

攻撃から回避の素早い切り替え。彼の戦闘センスは見事の一言だ。


アクセルはヒットアンドアウェイを繰り返し 気付けば既に6体の魔人を斬り伏せていた。



「どけぃ!俺が殺る!!」



魔人の集団の中で一際体の大きな魔人が叫びながらアクセルに突撃する。


ガキィン!!


魔人の持つ巨大な鉄の棍棒がアクセルの大剣を受け止める。

アクセルは初めて動きを止められたのだ。



「ハハハッ!図に乗るんじゃねぇぞ小僧!!」



「お前がな…デブ。

唸れ!チェーンソー・エッジ!!」



アクセルは柄の先端部分から伸びたチェーンを力強く引いた。


ドルルンッ!!!


バイクのエンジンを吹かした様な音を鳴らしながら大剣の機械の部分が振動して煙を吹き上げる。

すると ノコギリ状の刃が高速回転を始めた。



「なんだっ!!?」



高速回転するノコギリ状の刃が火花を散らせながら 大きな魔人を棍棒ごと一刀両断する。


これが彼の武器。

魔剣チェーンソー・エッジである。



「残りは12匹か…

流石にレベルの高めな魔人相手だと疲れるな。」



アクセルの表情には多少の疲労が見えていた。



「手を貸そう!!」



魔人の集団に突撃したのはバルボアだ。

真っ直ぐに走りながら豪快に魔人達を次々と斬り伏せていく。


続いてゼクスの銃声が鳴り響く。

見事に眉間を撃ち抜かれた魔人達がバタバタと倒れ出す。



『ジオ・スタンプ』



カイラスの魔法が残る魔人を一気に押し潰した。


白銀の翼勢の波状攻撃により 魔人の集団は壊滅したのだった。



「……クソッ!バカな…」



これに驚いたのはジダンである。

勝利を確信した矢先 予想外の第二勢力の介入。これにより一気に形勢逆転されたのだ。



「さぁ どうする?残るはお前だけだな。」



バルボアに肉切り包丁を向けられ ジダンは苦虫を潰した様な表情になる。



「次は失敗は許されん…

テメェ等は何が何でもブチ殺す!!!」



ジダンは手を掲げ 上空に無数の赤い針を形成する。



「待て!お前の相手は俺だ!!」



「駄目です!まだ動かないほうがいい。」



そこにはヒューイに支えられながら大剣を構える ロイの姿があった。


ロイは魔人達との戦闘中にヒーラーであるヒューイの治癒魔法を受けていたのだ。

しかし短時間の為に全快には程遠い。

この状態でジダンと一戦交えるのは剰りに危険である。



「バルボアさん!彼を止めて下さいよ!」



ヒューイは困った表情を浮かべながらバルボアに救いを求める。



「ん~…

そいつは何言っても聞きゃしねぇよ。好きにさせてやれ。ヤバくなったら俺がなんとかする。」



バルボアは頭を掻きながら答える。

手にしていた武器もしまい 完全にロイに任せるつもりだ。



「……どうなっても知らないですよ。」



ヒューイは渋々支えていた手を離した。

ロイは大剣を構えながらゆっくりとジダンへ歩み寄る。



「…テメェ等どこまでも舐めやがって。

死にかけの奴が相手だと?望み通り殺してやるよ!」



怒りで顔に無数の血管を浮かび上がらせながらジダンは上空に浮かばせていた赤い針をロイに向けて飛ばす。



『レッド・ニードル』



襲いかかる無数の赤い針をロイは避けるのではなく 真っ直ぐに走り出した。


誰もが最悪の展開を想像したその時…

ロイが走り抜けると同時に赤い針が地面に突き刺さる。

ロイの速度がレッド・ニードルの速度に勝ったのだ。



「なんだとっ!?」



レッド・ニードルを掻い潜ったロイが既に眼前に迫っていた。



「もらったぁぁ!!」



ロイは振りかぶった大剣を豪快に振り抜いた。

後方へ飛び退いたジダンだが反応が遅れた為に 胸辺りをザックリと切り裂かれている。



「ちぃっ!」



激しい出血にジダンは舌打ちをする。


そんなジダンにロイは追撃を開始していた。

大剣を振り上げながらジダンを追う。


しかしそれを黙って許すジダンではない。



『レッド・ニードル キューブ』



ジダンの周りに赤い針が球体状に集まる。

まるで巨大な赤い針鼠の様だ。

これでは攻撃を当てる手段がない。攻撃をすれば自らの体も赤い針に串刺しにされてしまうからだ。


だがしかし ロイは躊躇することなく赤い針球に向かって大剣を振り下ろした。


ロイの体中から鮮血が舞う。更に両腕は赤い針に串刺しにされている。

しかし これだけの傷を負ったにも関わらず虚しくもロイの大剣は赤い針によって防がれ ジダンに傷をつけることは出来なかった。



「ヘッ!残念だったなぁ。その腕じゃマトモに剣を握ることも出来ねぇだろ。」



ジダンが赤い針球を解いてニヤつきながら姿を現す。



「……これでいいんだよ。」



そう呟きながらロイは黒いオーラを放出させた。

その全てを腕の治癒能力向上に回し 一気に腕の傷を塞いだ。


そしてそのまま神速の如き速さで大剣を振り抜く。



「なっ!!?」



「油断したな。」



ジダンの体が腰の辺りからズルリと擦れ落ち 黒い鮮血を撒き散らしながら豪快に倒れ込んだ。


ロイは黒いオーラの力での回復を視野に入れて自らの腕を潰し ジダンが油断して赤い針球から出てくるのを誘ったのだ。

あの一瞬で判断し この戦略を組み立てたロイのセンスは神がかっていると言っても過言ではない。

更にはこの戦略を思いついたとして 自らの腕を犠牲にした根性は相当なものだ。


見事に勝利したロイは一瞬笑みを浮かべたが 大剣を地面に落とし そのまま後ろへ豪快に倒れ込んだ。


度重なる負傷と 黒いオーラの多用。

ロイの体は既にボロボロというレベルを超えていたのだった。

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