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白銀の翼  作者: 烏丸
10/30

第10話 襲撃

白銀の翼のアジトでは いつもと変わらぬ日常が続いていた。



「おっす ロイ。相変わらずの 寝坊助だな。」



広間の椅子に寝惚け眼で腰掛けるロイに ゼクスが声をかける。



「う~す。だってよぉ また暫く依頼がないから 退屈でしょうがねぇんだよ…」



ロイは前の机に うなだれながら答える。



「トレーニングでもしてろよ。俺は今から散歩でも行って来るわ。」



ゼクスは そう告げて外へと出て行く。

すると 暫くして…



「おい!来てくれ!白い狼が血だらけで倒れてるぞ!!」



突然 外からゼクスが叫んだ。

白い狼…

ロイには心当たりがあった。



「まさか!?」



勢いよく立ち上がり 椅子を倒しながら ロイは外へと駆け出す。

すると ロイの目に驚きの光景が飛び込んできた。



「シュバルツ!?」



狼としては大きすぎる巨駆 黄金色に輝く鋭い瞳 白銀の毛並。

神秘の森で出会った 魔食者の銀狼 シュバルツの姿がそこにはあった。


シュバルツの美しい白銀の毛並は 血によって紅く染まり グッタリと地面に横たわっていた。



「なんだ?知り合いなのか?」



慌ててシュバルツへ駆け寄るロイを見て ゼクスに疑問符が浮かぶ。



「あぁ。カイラスを連れて来た時に話しただろ?こいつがその銀狼だ。」



ロイがシュバルツの傷の深さ 数を調べる為 体を探っていた時 シュバルツが動き ロイを見つめた。



「小僧… 久シ振リダナ…」



「馬鹿野郎!んなこと どうだっていい!何があったんだ!?」



ロイが叫ぶと 騒ぎに気付き レオ カイラス バルボアが姿を現す。



「……シュバルツ!!お主…

何があったんじゃ!?」



シュバルツの姿に気が付いたカイラスが声をあげる。



「カイラス殿…前ノ魔人ガ仲間ノ魔人共ヲ引キ連レ 森ヲ襲撃シテキテイル…」



その言葉にロイとカイラスの顔色が変わる。



「豪魔邪霊衆か…ワシのせいじゃ…

ワシを狙って襲撃に来たのか…すまぬ…」


カイラスは責任を感じ 表情が曇っていく。

そんな彼を見て シュバルツは微笑んだ。



「フッ…何モ気ニスル事ハナイ。カイラス殿ハ 我ノ恩人。元々カイラス殿ニ助ケラレタ命ダ。」



シュバルツは笑みを浮かべながら話すが みるみる衰弱していくのがわかる。


応急処置として カイラスは急いで治癒魔法をかける。



「オッサン!俺 神秘の森に行ってくる!」



突然ロイが叫ぶ。

全員がロイならそう言うだろうと わかっていたことなので驚く者はいなかった。



「いいだろう。だが一人では駄目だ。レオ!ゼクス!ロイに同行して豪魔邪霊衆の襲撃者を討伐してくるんだ。」



「了解!」



レオとゼクスは同時に 力強く返事を返した。



「ワシも行こう。」



「駄目だ!お前が行ったら標的にされるだけだぞ!」



バルボアはカイラスを止めようとするが 今のカイラスには通じない。



「分かっておる。しかし ワシだけが残ることなどできるか!ケジメはしっかりと付けさせてもらう。」



カイラスの強い眼差しに バルボアは反論することが出来なかった。



「……わかった。

では改めてロイ レオ ゼクス カイラスの4名は急ぎ神秘の森に出発。豪魔邪霊衆の襲撃者を討伐しろ!

シュバルツは俺が知り合いのヒーラー(治癒魔導師)に頼んで治療してもらう。心配するな。行け!!」



「了解!!」



一行は急ぎ 神秘の森へと向かったのだった。



―☆―

神秘の森


森の中は 独特の神秘的な姿が消え 辺りは動物の死骸 燃える木々 荒れ果てた大地と まるで地獄の様な光景が広がっていた。



「クソッタレが!ジジィも魔導教典もねぇじゃねぇか!!」



その中で豪魔邪霊衆の一人 ジダンが苛立ちながら傍にあった動物の死骸を蹴り飛ばす。


ジダンの他に 金色のモヒカン頭の男と スキンヘッドの男と 白いフード付きのローブを頭まで被った男の姿があった。



「ジダンさん どうします?あの犬っコロも逃がしちまいましたし…」



モヒカンの男が 恐る恐るジダンに尋ねた。

するとジダンはモヒカンの男を睨み付ける。



「黙れザンバ。犬に逃げられたのは テメェが弱いせいだ。」



ザンバと呼ばれた男はビクリと体を震わせてから ペコペコ頭を下げながら後ろに下がっていく。



「不様だな ザンバ。」



「黙れヨーク!あの犬っコロ 結構強かったんだよ!」



ザンバは ヨークと呼ばれるスキンヘッドの男を睨み付けた。

しかしヨークは フンと鼻を鳴らし ザンバを無視する。



「レイド。お前は どう思う?引き上げるべきか?」



ジダンは レイドと呼ばれる白いローブの男に声をかける。

レイドは振り返り 森の出口の方角を見つめた。



「……いや。恐らく あの銀狼は仲間の元へ行ったんだ…

奴は戦闘から逃げ出すタイプとは思えん。仲間に危険を知らせに行ったのだろう。」



「つまり 奴の仲間がここに来ると?」



「可能性は高いな。」



レイドの言葉を聞いて ジダンは怪しく笑みを浮かべる。


その時…

全員が何かに反応する。

「下がれ!!」



ジダンの号令と共に全員が後方へと飛び退く。

すると 先程まで立っていた場所に雷撃が落ちる。



「ハハッ!本当に来やがった!」



ジダンが歓喜の声をあげ 雷撃の出所に視線を向けた。

そこには4人の男達の姿があった。



「避けられましたか…

不意討ちは通用しませんね。」



雷撃の出所はレオだ。



「お前らぁぁぁ!!!」



黒い閃光が一直線にジダンへと向かって来る。



ガキィン!



凄まじい金属の衝突音。

ロイの前に白いローブの男 レイドが立ち塞がる。

ロイの大剣を 腰に下げていた剣で受け止めたのだ。



「お前が種の者か…」



レイドはロイを見つめ 不敵に笑みを浮かべた。

その背後からザンバとヨークの二人がゆっくりと前へ出てくる。



「レイド。お前は暫く下がってろ。そいつらは俺とヨークのオモチャだ。」



ザンバは懐から2本の短剣を取り出した。

同時にヨークも背中に背負っていた 両端に大きな刃物が付いている 薙刀に似た武器を取り出す。

レイドは大剣を弾き返すと 言われた通り後方へと下がっていく。


そして レオ ゼクス カイラスの3人はロイに追いつき 戦闘態勢に入った。



「……おいおい あの黒い魔剣士はどこだよ?」



ジダンは辺りを見回しながら問いかけた。



「…ジャガンさんならいねぇよ。」



「はぁ!?

……まぁ いい。魔導教典だけ頂いて帰るか。

ザンバ!ヨーク!しくじるなよ。」



ジダンが睨みをきかせると ザンバとヨークの二人に緊張が走る。


そして 最初に動いたのはザンバだ。

一番近くにいたロイに 短剣による怒涛の連撃を繰り出す。

しかし それをロイは全て大剣で防いでいた。



「ゼクスとカイラス殿は スキンヘッドの方を頼みます!」



レオがそう叫びながら 魔力を溜めて ザンバの方へ向かう。



『サンダー・スピア』



鋭い雷の槍がザンバへと伸びた。

ザンバは手を止め なんとかそれをかわす。


紙一重。

雷の槍はザンバの右頬をかすめた。



「ちっ!危ねぇな!」


『ダーク・ボム』



ザンバが放った魔法は 黒い爆炎を巻き起こす。

間一髪 反応したレオは後方へと飛び退くが 爆風の衝撃で 吹き飛ばされた。



「レオ!

この野郎!!」



ロイは怒りに任せて力いっぱい大剣を振り下ろしたが それは虚しく空を斬る。



「なんだそりゃあ?遅すぎだぜ!」



ザンバは嘲笑いながら ロイの がら空きになった顔面に蹴りを入れる。

まともに食らったロイは 激しく後方へと飛ばされた。



一方 ゼクスとカイラスは冷静にヨークの動きをうかがっていた。



「とりあえず お手並み拝見といくか。」



ゼクスはそう言い放つと 銃を抜き 弾丸を3発撃ち出した。


放たれた弾丸はヨークの体に被弾する直前 大きな鉄板に弾かれる。

それはヨークの手にする薙刀の刃だった。



「ヒュー♪案外やるねぇ。」



銃弾を薙刀で防いだ早業に ゼクスは挑発的に口笛を吹く。

それを見たヨークは 何故か冷めた表情になっていた。



「なんだそれは?この程度で驚く等 実に低レベルだな…」


溜め息混じりに ヨークも挑発的に返す。



「ハッ!言ってくれるな。じゃあ こういうのはどうだ?」



ゼクスは目にも止まらぬスピードで銃を撃つ。

そのスピードは最早 早業というより神業に近い。


放たれた弾丸は真っ直ぐヨークの額に向かって飛ぶ。

しかし ヨークはその軌道を完全に見切っていた。

間近まで迫った弾丸を 容易く薙刀で叩き落とす。



「!!!?」



驚愕の表情を浮かべるヨークの瞳には 目の前まで迫る もう一つの弾丸が写った。


ゼクスは銃を一発だけ撃ったと錯覚させる程の速さで二発撃っていたのだ。

しかも 二発目の弾丸を最初に放った弾丸のすぐ後ろにつけるように。正に弾丸は一発だけだと錯覚させるように撃ったのだ。

針の穴に糸を通すような正確性。

世界一のガンマンと言っても過言ではない。


既に一発目の弾丸を叩き落としたことにより 今のヨークはスキだらけになっている。

防ぐ術はない…


しかしヨークは 一発目の弾丸を叩き落としたモーションのまま無理矢理 上体を左に傾けて回避行動を取ったのだ。


流石にかわしきることは出来ずに 弾丸はヨークの右頬に被弾し 右耳の辺りまで貫通すると ヨークの右耳は無惨に弾け飛んだ。



「くっ…小賢しい真似を…」



ヨークの瞳に怒りの炎が灯る。



「へぇ…やるじゃねぇか。額を狙ったのによ。」



ゼクスは銃を指でクルクル回しながら挑発的な笑みを浮かべていた。


ヨークは 右頬から無くなった右耳の辺りにかけて ボタボタと夥しい量の出血をしている。

人間なら致命傷となる傷だが 魔人であるヨークにとっては そこまでのダメージにはなっていなかった。



「この落とし前は高くつくぞ!」



ヨークは叫びながらゼクスへと飛び掛かる。



『ロック・ショット』



走るヨークに 岩の塊が直撃した。



「ぐぅっ!!」



苦痛の呻き声をあげ 後方に飛ばされるヨーク。

今の岩の塊はカイラスの魔法だ。



「……どいつもこいつも舐め腐りやがって!!」



ヨークは ゆっくりと立ち上がりながら怒りの叫びをあげる。



「アイアンフォーム!」



ヨークの体がみるみる鉄へと変貌していく。



「な なんだあれ!?」



ゼクスの瞳には 鉄人間と化したヨークの姿が写った。



「ハハハハッ!これは俺の特殊能力だ!貴様らの攻撃は最早俺には通用しない!」



鉄の体にダメージを通すのは不可能に近い。

絶対絶命である。



―☆―

「オラオラァ!どうしたよ?もう終わりか?」



「くそっ!調子に乗るなよ!」



ロイは痛みに顔を歪めながら ゆっくりと立ち上がる。



「ロイ!援護します!」



「任せた!!」



ロイは再び黒い閃光となって ザンバへと疾走する。



『ライトニング・スター』



レオが放った電光石火の魔法はロイを追い越し ザンバへと飛ぶ。

凄まじいスピードで迫る星形の雷撃を ザンバは目を見開きながら 跳躍して なんとか避ける。

しかし その避けた先には既にロイが大剣を振り上げて待ち構えていた。



「うらあぁぁぁ!!!」



力いっぱい振り下ろした大剣は 見事にザンバの体を真っ二つに叩き斬った。

黒い鮮血を撒き散らしながら ザンバの体は力無く地面に落ちていった。



「ちっ!役立たずが…

レイド 頼めるか?」



「承知した。」



レイドは腰に下げた剣を引き抜きながら ロイ達の方へ歩き出す。

そして おもむろに被っていたフードを外した。



「なっ!!!?」



声にならない驚愕の声をあげるロイ。

なぜならレイドは魔人特有の尖った耳ではなく 普通の耳がついていたのだ。

つまり…レイドは魔人ではなく人間だ。


そして それより驚くべきは彼の髪色。綺麗な銀髪。



「お前…種の者か!?」



初めて出会う自分以外の種の者。しかし それは同じ境遇の仲間としてではなく 悔しくも敵として出会ってしまったのだ。

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