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新たな目的

転生から二年半。

這い進む力を得たエドゥアルド(アリス)は、最初の偵察任務を開始する。

目標は、この世界の知識が眠る「図書室」。

しかし、予期せぬアクシデントと、あの「黒猫」の介入が、彼にこの世界の真理を突きつける。

物理法則を凌駕する、未知のエネルギー。

壊れた肉体が、光に包まれる時。

元精鋭工作員の心に、不可能を可能にする「道」が拓かれる。

転生から、二年と六ヶ月が経過した。

この時間の中で、私はこの新しい世界について多くを学んだが、根本的な違いはただ一つ。――私はもう、完全な無力ではない。

ハイハイができるようになったのだ。

優雅ではない。速くもない。前世の尊厳など微塵も感じられない。だが、機能的だ。

私の手はまだ小さく不器用だが、ある程度の協調性を持ち始めた。足も、単なる飾り物ではなくなった。今や移動し、探索し……そして「潜入」することができる。

ゆっくりと。極めて、ゆっくりと。だが、それで十分だ。

許容範囲内の進歩と言える。私の脳はすでに言語を流暢に処理し、この世界の文法の要点を記録している。すべては脳内の「アーカイブ」に記録済みだ。

そして、あらゆる優れた作戦がそうであるように、私にはすでに固定された目標ターゲットがある。

――図書室だ。

初めてあそこを目にした日から、あの場所が鍵であると確信していた。情報、歴史、おそらくは地図……あるいは、それ以上の何かが。数ヶ月間、私の身体が単にスペック不足だったため、そこは進入不可の領域だった。

だが今、状況は変わった。クリーンな潜入ができるわけではないが、少なくとも試みることはできる。

正直に言えば、それが唯一の「訓練」だったわけではない。

あの日、中庭で……ジャレッドが物理法則をオプション扱いするように動くのを見てから、私の中ですべてが変わった。

母は知らず知らずのうちに、私の主要な戦術的協力者アライアンスとなった。毎朝、神聖なルーチンのように、彼女は私を裏庭へと連れて行く。

「パパを見に行きましょうね」

彼女はあの微笑みを浮かべて言う。

そして私は……観察した。

来る日も来る日も。一挙手一投足を。

それを再現することは、到底できなかった。私の身体は、数秒間立ち上がろうとするだけで安定を欠く。だが、私の「精神」なら……精神なら訓練できた。

だから、私はオールドスクールな手法を適用した。――「イメトレ(イメージトレーニング)」。脳内反復。分析。何度も、何度も。

同年代の他の子供たちが、光るおもちゃを見てよだれを垂らしている間に、私は攻撃の角度を記憶していたのだ。

滑稽だ。救いようがないほど滑稽だ。それでも、必要なことだった。

なぜなら、ジャレッドの動きには何かが「噛み合わない」部分があったからだ。単なる身体能力ではない。一瞬、あるいは知覚できないほどの刹那、彼の周囲の空気が反応しているように見えた。まるで彼の身体が世界の中で動いているのではなく、世界の方が彼に合わせて調整されているかのような。

(……未だに理解できん)

私は苛立ちとともに思考した。

エララは家の反対側で忙しくしている。――今だ。

私はコマンドーのような精密さで這い出し、廊下の影を隠れ蓑にして進んだ。目標は、ジャレッドの個人訓練場に直結する窓だ。彼が何をしているのか、どのように行っているのか、そして何より、彼の周囲の空気を歪ませるあの「何か」を理解する必要があった。

だが、現場に到達して最初の方針ミスにぶち当たった。

(……高すぎる)

大人にとっては標準的な窓だ。だが私にとっては、断崖絶壁の頂上に位置する観測所だった。木製のフレームが、一メートルの高さから私の身長をあざ笑っている。

(状況を分析しろ。考えろ。適応しろ。打ち勝て)

私の瞳は、素早いスキャンで部屋を走査した。

ひっくり返ったスツール:重すぎて音を立てずに引きずることは不可能。

ソファの上のクッションの山:有用だが、不安定。

背の低い本棚:堅牢。壁に固定されている。

(ルート特定:本棚だ)

木製の家具に近づく。それは重い写本が詰まった頑丈な構造で、完璧なアンカー(支点)として機能する。私は小さな手を一段目にかけた。

上へ。

未発達の筋肉が、自重を支える負荷に震える。三十センチの段差を登ることは、フル装備で三メートルの壁をよじ登ることに等しい。

フンッ……フンッ……。

息が切れるが、私は止まらなかった。本の隙間に指をねじ込み、膝をバネにして身体を押し上げる。あと一センチ。もう一センチ。

ついに、本棚の最上段に座ることに成功した。ここからの眺めは完璧だ。

カーテンの陰に頭の大部分を隠し、窓ガラス越しに外をうかがう。姿なき観測者インビジブル・オブザーバー

眼下では、ジャレッドが中庭の真ん中に立っていた。鎧は着ておらず、肩の筋肉の緊張が透けて見える薄いシャツ一枚。手には訓練用の剣を握っているが、いわゆる「普通」の鍛錬をしているわけではなかった。

彼は静止していた。完全に、微動だにせず。

(……何をしている?)

解明まであと数ミリというところだった。私の脳は、ジャレッドが地面にかけているわずかな重圧や、周囲の空気の乱れを一つひとつ処理していく。それは前世の弾道論理バリスティック・ロジックをあざ笑うかのような技術だった。

そして、その時――惨劇が起きた。

ガラスの向こう側、どこからともなく二つの金色の瞳が具現化したのだ。

「ニャーーォ!」

心臓を電気ショックで叩かれたような衝撃が走る。身体が純粋な戦闘本能で反応し、後ろへ飛び退いた。だが、私は肝心な「兵站ロジスティクス上の詳細」を失念していた。――そこは磨き上げられた木製の本棚の端だということを。

必死に均衡バランスを保とうとする。両腕は風車のように空を切り、指は存在しないホールドを求めて空気を掻いた。意思は「不動」を命じたが、この身体は再び命令を裏切った。

重力が勝利した。

ベシャッ!

床に叩きつけられる、鈍く、重い音。呼吸を整えようとする間に、不本意な呻きが漏れた。

「あ、あうぅ……」

奥歯を噛み締めながら、バブバブと言葉にならない声を出す。

顔を上げると、そこに奴がいた。本棚の上から、絶対的な優越感を湛えた表情でこちらを見下ろしている。奴の髭が愉悦で震えているのが分かった。私の苦しみ、私の肉体的な凋落を、奴は一秒たりとも逃さず楽しんでいた。

(ダメージレポート:エドゥアルド大尉は再び家庭内猫科動物に敗北した……)

私は苦渋とともに思考した。

突然、キッチンで皿の割れる音が静寂を切り裂き、続いて床を揺らすような急ぎ足が近づいてきた。

(目標「エララ」、高速接近中)

彼女が部屋に踏み込む前に、素早い損傷確認ダメージチェックを行う。四肢の可動域:良好。神経反応:安定。構造的整合性……。

やはりだ。膝を擦りむいている。

血がわずかに滲んでいる。だが二歳の身体にとって、それは誇り高き私のプライドが受け入れがたいほどの「致命的な戦傷」として、過剰な注目を集めるに十分なものだった。

「アリス! 私の赤ちゃん!」

エララの叫び声が、彼女の姿よりも先に届いた。

「なんてこと! どうしたの!?」

エララは一瞬で私の隣に膝をついた。穏やかだった瞳は今や心配の渦となり、彼女の手は射撃ゾーン内の衛生兵のような速度で私の腕や足を点検していく。

彼女の指が擦りむいた膝で止まり、骨格に異常がないことを確認すると、私の髪が乱れるほどの安堵の溜息を漏らした。

だが次の瞬間、彼女は私のマニュアルには存在しない行動に出た。

右手を傷口に近づけ、皮膚から数センチのところで目を閉じたのだ。彼女の唇がリズムに乗った囁きを刻み始める。私が今まで処理してきたどの言語とも似ていない、柔らかな詠唱チャント

(……一体、何をしていやがる?)

赤ん坊の顔ができる限りの深刻さで眉をひそめ、私は自問した。

その時。前世の論理が、音を立てて崩壊した。

彼女の手のひらと私の膝の間に、「光」が形成され始めたのだ。反射でも、照明のトリックでもない。それは空気そのものから湧き出しているかのような、温かく淡い、本物の発光体だった。

(……はぁ!? 何だ、これは!?)

私の精神は最大警戒レッドアラート状態で叫んだ。前世において、手から光が出るということは「スタングレネード(閃光弾)」か「致命的な電気系統の故障」を意味した。だが、これは違う。

焼けるような感覚ではない。まるで数千本の微細な針が、あり得ない速度で皮膚を縫い合わせているかのような、心地よい痺れ。

私は目を見開き、金縛りにあったように硬直した。

その光の輝きの下で、私は擦り傷――私の身体的整合性インテグリティにおけるあの小さな亀裂――が塞がっていくのを目撃した。血が止まり、組織が再生し、ほんの数秒のうちに、皮膚はまるで一度も床に触れなかったかのように滑らかに戻った。

「よし、小さな勇者さん」

エララは光が空気中に消えゆく中、疲れをにじませた微笑みを私に浮かべて囁いた。

彼女にとっては、これは当然のことなのだ。絆創膏を貼るのと同じ感覚で。だが、エドゥアルド大尉にとって、これはゲームのルールを根底から覆す出来事だった。

ジャレッドの単なる高速移動だけではなかった。これは細胞レベルでのエネルギー操作だ。これは……「医術魔法」だ。

(母親が擦り傷を治すのにこれほどのことをするなら……戦場では一体、何が起きているんだ?)

膝の皮膚から光が失われていく間、私は本棚へと視線を逸らした。

そこに奴がいた。猫。

奴の眼差しに、ある種の「適合性コンフォーミズム」、静かな満足感が漂っているのに気づいた。それは手品を見たばかりの動物の目ではない。教訓を強制したばかりの「教官」の目だ。まるで、何らかの理由で私の転倒を計画し、エララから放たれるエネルギーを見せようとしたかのように。

(……これを見せるために、私を突き落としたのか?)

私は視線で問いかけた。

微塵の後悔も見せず、猫は侮辱的なほど悠然と向きを変えた。奴のボディランゲージは、本棚から飛び降り、廊下の向こうへ消える前に、「どういたしまして、単なる人間よ」と叫んでいた。

私は思わず嫌悪の表情を浮かべた。一方では、猫に操られたことに血が煮えくり返っていた。しかし他方では、どれほど子供っぽく、あるいはあり得ないことのように聞こえても、感謝の種が胸の中で芽生え始めていた。

この啓示は、盤上のすべてを変えた。駒はもはや、歩兵と物理戦術だけではなかった。

(もし人間が細胞の傷を癒すために、この種のエネルギーを具現化できるなら……)

私は小さな拳を握り締め、脚に残る熱を感じた。

(……なぜ、世界間を航行するために使えない?)

その可能性が、砲弾のような衝撃で私の精神を直撃した。これまでの目標は、生き残り、この環境を理解することだった。だが今、この揺りかごで目覚めて以来初めて、帰還への道が見えた。エリザベスへの架け橋が。

魔法が組織を再構築できるなら、おそらく現実の「織物テキスタイル」を引き裂くこともできるはずだ。

私の眼差しは鋼のように鋭くなり、二歳の子供には不相応なものとなった。エララは私を腕に抱き上げ、私が出してもいない泣き声を鎮めるようにあやしたが、私の精神はすでに何キロも先へと飛んでいた。

窓からジャレッドを観察するだけでは足りない。廊下を這い回るだけでは不十分だ。

あの図書室が必要だ。名前、理論、エネルギーの流れが必要だ。この世界の法則を理解しなければならない。――それを、破壊するために。

(待っていろ、エリザベス。エドゥアルド大尉は今、新しい「抽出任務エキストラクション・ミッション」を見つけた)

第6話をお読みいただき、ありがとうございます!

ついにアリスが「魔法」を目の当たりにしました。

擦り傷を治す光が、彼に「元の世界へ戻る」という新たな希望を与えます。

エリザベスへの想いを胸に、アリスの本当の戦いがここから始まります。

あの黒猫、ただの嫌がらせかと思いきや、まさかのファインプレー(?)でしたね。

この「帰還任務」の行方が気になる方は、

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次回、アリスが初めての「エネルギー感知」に挑みます。お楽しみに!

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