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未知の領域

無力な赤ん坊の身体。

だが、その内側にあるのは数十年の経験を積んだ軍人の精神だ。

慣れない温もり、規律を強いられた少女、そして謎の黒猫。

エドゥアルドは、この「家庭」という名の未知の戦場を走査し始める。

第4話、開始します。

それからの数日間、私は自分にできる唯一の得意なことに没頭した。

観察。

分析。

そして、適応だ。

身体の自由は利かない……だが、精神は私の支配下にある。

それで十分だった。

母親――あの白髪の女――が私を抱いて家の中を歩き回るたびに、私はあらゆる瞬間を利用した。

彼女の視点から見れば、私はただ辺りをキョロキョロと見渡す好奇心旺盛な赤ん坊に過ぎなかっただろう。

だが、私の視点では……。

地図マップを作成していた。

構造は明快だ。

堅牢。

行き当たりばったりな造りではない。

家はほぼ総木造だが、粗末な小屋などではなかった。切り出しの一つひとつ、接合部の一箇所ごとに意図が感じられる。長く住み続けることを前提とした、安定した住居だ。

だが、最も重要なのは「目に見えるもの」ではなかった。

「存在しないもの」だ。

電気がない。

配線がない。

火以外の人工的な明かりがない。

エンジン音もしない。

無線機もない。

近代テクノロジーを彷彿とさせるものは、何一つとして存在しなかった。

あるのは、静寂。

風の音。

道具が触れ合う音。

足音。

そこから導き出される結論は、極めて明白だった。

(我々は、孤立している)

農園か、あるいはそれに類する場所。

あらゆる都市から離れ。

あらゆる組織化されたシステムから遠ざかっている。

それですべての説明がつく。

私の「誕生」。

医師の不在。

テクノロジーの欠如。

ここでは……彼ら自身の力だけで生きているのだ。

日が経つにつれ、私はこの場所の基本的な図面を頭の中に構築していった。

正式なものではないが、事足りる。

一階は共有エリアとして機能している。

簡素だが機能的なキッチン。

そして、父親が長い時間を過ごす広いスペース……鍛錬の場だ。

そうだ。

鍛錬トレーニング

それは気まぐれな運動ではなかった。

規律。

繰り返される所作。

制御された動き。

確信が、上書きされる。

(あの男は、ただの農夫ではない)

二階部分は……。

まだ全容は見ていない。

だが、階段の先には寝室か、あるいはプライベートな空間があるようだった。

そして――。

現時点での最重要目標。

書庫ライブラリだ。

その前を数回通り過ぎただけだったが、それで十分だった。

書棚。

本。

羊皮紙。

情報。

私の精神が即座に起動する。

(あそこに、答えがある)

この身体が無力でなくなった時……。

そこが私の最初の、真の目的地ターゲットになるだろう。

さらにもう一つ、確信したことがある。

あの金髪の少女だ。

話し方。

両親への接し方。

身のこなし。

彼女は家族ではない。

使用人サーバントだ。

だが、最も私の心を乱したのは、そのことではなかった。

もう一人の少女だ。

赤髪の少女。

鮮烈な、赤。

まるで、流れたばかりの血のような色だ。

十歳とお……あるいは、それ以下か。

最初、彼女も家族の一員だと思った。

だが、違った。

彼女の振る舞いがそれを物語っていた。

服従。

沈黙。

的確さ。

遊びもしない。

迷いもしない。

疑問も抱かない。

ただ、働いていた。

胸の奥に、不快な感覚が走った。

(どんな世界が……こんなことを許容する?)

前世において、子供がこのような状況に置かれているのを目にすれば、それは明白なシグナルだった。

敵対的な環境。

過酷なシステム。

非人道的な……規律。

もし、ここでもそれが「普通」なのだとしたら。

この世界は、見かけによらず危険だということだ。

私のそばを通り過ぎる彼女を観察した。

彼女は私に視線すら向けない。

その瞳に、幼さなど微塵もなかった。

あるのは、規律。

冷徹で。

機械的な。

(ならば、失敗の余地はないな)

子供ですらこのように生きているのなら……。

私の「赤ん坊」としての時間は、休息ではない。

カウントダウンなのだ。

微かな音が、思考を中断させた。

聞き覚えのある音だ。

あの猫。

また現れた。まるでこの家が自分の領分であるかのように。

黒く。

優雅に。

自信に満ち溢れて。

軽々と跳び上がり、地形を偵察するかのように歩き回る。

(病気を持っていないか、確認すらしないとは……)

内面で眉をひそめた。

不用心だ。

黒猫は、不遜なほど落ち着き払った様子で私の揺りかごのそばに陣取った。尾を自分の身体に巻き付け、まるですでに私の正体を知っているかのように見つめてくる。

「ミャーォ……」

「両親」――この言葉を内面で使うには、まだ小さな拒絶反応を伴うが――彼らは即座に反応した。

まず父親が近づき、驚くほど親しげにその頭を撫でた。

一方、母親はクスクスと小さく笑いながら、優しく猫を遠ざけようとする。

だが猫はすぐには動かなかった。その金色の瞳は私の目を捉えたまま、値踏みしているような……あるいは、再会を喜んでいるような光を湛えていた。

それから唐突に、猫はベッドへと跳び乗り、母親の周囲を歩いてから、その隣に収まった。当然そこが自分の居場所であるかのように。

私はその光景を黙って見つめていた。

緊張はない。

疑念もない。

隔たりもない。

ただ……親密さだけがあった。

父は彼女の隣に座り、その肩に手を置いた。母は避けるどころか、それが世界で最も自然なことであるかのように、わずかに首を彼の方へ傾けた。

その仕草。

あまりに単純で……ありふれた……。

それが、私を硬直させた。

(親……)

止める間もなく、その単語が脳裏に浮かんだ。

奇妙な。縁のない。

重苦しい響き。

前世において、その概念が形を成したことは一度もなかった。

私の肩に置かれる手などなかった。

目覚めた時に聞こえる優しい声も。

狭い部屋で共有される笑い声も。

あったのは、冷たい壁だけだ。

忘れ去られた孤児院。名前が顔よりも早く失われ、他人に頼ることを覚えるのが「最初の過ち」だと教えられる場所。

十七歳の時、私は「奉仕」を選んだのではない。

「目的のない人生」を拒絶したのだ。

そして軍隊という場所で……泥と火薬と罵声の中で……初めて「何かに属する」という意味を理解した。

それは伝統的な家族ではなかった。

だが、私が手にしたものの中で最もそれに近いものだった。

死線の下ですら不謹慎なジョークを飛ばすディエゴ。

すべてが崩壊しかけても、決して揺るがなかったビクトリア。

そして、エリザベス……。

……。

一瞬、目を閉じる。

その名前の重みは、今も変わらずそこにあった。

ゆっくりと目を開く。

木造の天井が再び視界を占拠する。堅実で、実在し……「今」ここにある天井。あの時間が存在しない虚無とは大違いだ。ここではすべてが触知可能で、計測できる。

だが、何よりも重くのしかかっているのは、環境ではなかった。

「不在」だ。

形のない、赤ん坊の呟きが漏れる。身体が慣性で反応していた。小さな手が空を切り、ぎこちなく、方向性もなく動く。もはや以前のような反応はしない。兵士としての精密な命令には、もう従わないのだ。

指を握りしめる。

あるいは、そう試みた。

(無力だ……今はまだ)

可能な限り視線を巡らせる。父はまだ母の傍らで、低い声で話していた。言葉は理解できないが、トーンは明確だ。穏やかで。温かい。

あまりにも、温かすぎる。

あのような静謐さは……戦地には存在しなかった。

それでも、警戒を解くことはできない。

彼らの動きをより注意深く観察する。

父はただ屈強なだけの男ではなかった。細部にそれが現れている。常に背後を部分的にカバーする位置取り。休息中であっても部屋全体を走査する視線……先ほどの猫の鳴き声に対する反応。

ただの百姓ではない。

(訓練を受けている……少なくとも、実戦経験者だ)

一方で、母は違っていた。

彼女の存在感からは危険は漂ってこないが、弱さも感じられない。身のこなし、私を抱くその手つき……。どれほどの力を加え、どれほど抜くべきかを正確に把握しているかのようだった。

制御コントロール

精密さ。

(興味深いな……)

彼らは、一見した姿通りの人間ではない。

そしてそれは、事態を複雑にさせる。

もしこの世界が近代的でないにもかかわらず、これほどの制御能力を持つ個体が存在するのなら……。私にはまだ理解できていない変数が存在するということだ。

あまりにも、多くの変数が。

意識を部屋に戻す。

木材。簡素な道具。目に見えるテクノロジーは皆無。配線も、人工の光も、デバイスもない。

だが、極端な不衛生さも放置された形跡もなかった。

そこは……機能的な場所だった。

自給自足の。

(孤立しているが……無防備ではない)

黒猫が再び動いた。

ベッドから床へと軽やかに跳び、周囲の環境に自信を持つ捕食者特有の、あの静かな優雅さで歩く。部屋の中ほどで立ち止まり……私の方へと首を向けた。

まただ。

あの忌々しい猫。

目を細める。

その振る舞いには、何かが欠落していた。単なる動物的な好奇心ではない。その注視はあまりにも……指向的だ。

あまりにも、意識的すぎる。

一瞬、他の誰もそれに気づいていないようだった。

父は話を続け、母は微かに微笑んでいる。

だが、猫は……。

猫だけは、視線を逸らさなかった。

背筋に冷たいものが走る。

(ここには、まだ「何か」がある……)

証拠はない。

情報もない。

だが、長年私を生かしてきた本能は――そう簡単に間違いは犯さない。

この場所は……この世界は……。

安全ではない。

そして私は……。

これ以上ないほど、脆弱な地点にいる。

私を包む布の上で、手がわずかに強張った。

小さく。弱く。

依存ディペンデンス

その言葉は、酷く苦い味がした。

前世において、それは死を意味する言葉だった。

だが、今は……。

それは、避けようのない現実だ。

一度目を閉じ、感情を排してその事実を自らに叩き込む。

(ならば、適応するまでだ)

いつだってそうだった。

地形がどうあれ。

条件がどうあれ。

肉体がどうあれ。

任務は、生存。

そして、その先にあるのは……支配だ。

再び目を開ける。今度はより冷徹な静寂を湛えて。

より安定し。

より……「私」らしく。

両親はまだそこにいた。何も気づかぬまま。

家の中は静まり返り。

猫は……ようやく視線を逸らした。

だが、もう遅い。

私はすべてを記録した。

ルールの分からない世界において、情報こそが死から私を遠ざける唯一の武器だ。

深く――この身体が許す限りの深さで――息を吸い込み、視線で部屋の隅々をもう一度走査する。

扉。窓。脱出路。

習慣。

パターン。

すべてが、カウントされる。

これは、二度目のチャンスなどではない。

新しい「展開デプロイメント」だ。

そして今度は……。

失敗するつもりはない。

この身体で過ごす時間は……奇妙な感覚だ。

一秒の重みが生死を分ける戦闘中とは違う。ここでは……時間が引き延ばされる。眠りと静寂、そしてようやく理解し始めた奇妙なルーチンの中に、時間は溶けていく。

それでも、私は数え続ける。

いつだって、数えている。

窓から差し込む光のサイクル。

食事が与えられる回数。

家の中を歩き回る足音。

すべてを。

以前のように動けないのなら、せめてより精密に観察するまでだ。

そして、学ぶ。

……。

それは、表面上の平穏が流れる、ある瞬間のことだった。

彼女を、再び目にした。

赤髪の少女。

彼女は音もなく部屋に入ってきた。邪魔をせぬように。

だがそれは、不器用さや遠慮からくるものではなかった……「習慣」だ。その足取りは軽く、節度がある。一歩一歩が、最小限のスペースしか占有せぬよう計算されているかのようだった。

彼女は扉の近くで足を止め、体の前で両手を合わせた。

待機。

最初に気づいたのは、母だった。

まだ理解できないあの言語で、柔らかく、だが端的な口調で彼女に何かを告げる。厳しい命令ではないが……提案でもなかった。

少女は即座に頷いた。

躊躇なく。

問うこともなく。

彼女は机へと移動し、いくつかの道具を拾い上げると、ほとんど機械的な正確さでそれらを整え始めた。

私は沈黙の中で彼女を観察した。

その動きに、淀みはない。

集中力の欠如もない。

そこには……「幼さ」がない。

(規律が、過ぎる……)

紛争地帯であっても、子供というものは何かしらの欠片を残しているものだ。仕草、眼差し、あるいは不注意。

彼女には、それがない。

あらゆる行動が抑制されている。

制御されている。

間違いを犯せば報いがあるのだと――あまりにも早く――学んでしまったかのように。

胸の奥に、微かな圧迫感を覚えた。

痛みではない。

もっと不快な。

見覚えのある、感覚。

……。

彼女の動きを一つひとつ追っていたその時、一瞬だけ、彼女の瞳が私のそれと交差した。

赤。

鮮烈な、赤。

それは、偶然ではなかった。

彼女は、私が観察していることを知っていた。

それなのに……即座に視線を逸らしはしなかった。

ほんの一瞬。

だが、それで十分だった。

その短い交差の中で、私は「服従」を見なかった。

見たのは、「注視」だ。

まるで彼女もまた、私を品定めしているかのように。

やがて彼女は目を伏せ、何事もなかったかのように作業を再開した。

(興味深いな……)

ただの従順な子供ではない。

そこには、まだ何かがある。

周囲の環境とは、どこか食い違う何かが。

そしてこの段階で、私はすでに教訓を学んでいるはずだ。

この世界において、一見して見える通りのものなど何一つないのだと。

……。

揺りかごの中での微かな動きが、分析を中断させた。

身を起こそうと試みる。

失敗だ。

未発達な筋肉は、己の自重を支えることすらできない。身体は即座に均衡を崩し、情けない音を立てて布の上に倒れ込んだ。

喉から小さな唸りが漏れる。

無様だ。

前世であれば、武装したまま音もなく部屋を横切り、脅威を無力化する準備を整えていただろう。

それが今では……。

座ることすら叶わない。

焦燥感が急速にこみ上げる。

早すぎる。

拳を握り――あるいは、そう試み――呼吸が制御不能なほど速まっていくのを感じた。

(制御しろ)

目を閉じる。

リズムを強制する。

吸え。

吐け。

もう一度だ。

少しずつ、緊張が霧散していく。

完全ではないが……十分だ。

この状態で感情の制御を失うのは、無益なだけでなく。

危険だ。

……。

再び目を開けた時、少女がすぐ近くにいた。

いつの間に近づいたのか、気づかなかった。

彼女はわずかに揺りかごに身を乗り出し、好奇心を湛えて私を観察していた。だが、踏み込みすぎることはない。

一瞬、躊躇した。

それから慎重に、手を伸ばす。

その手は、途中で止まった。

許可を待っているかのように。

その小さな仕草。

その一瞬の迷い。

それが、その場の空気を変えた。

彼女はもう、命令を遂行するだけの機械的な存在ではなかった。

一人の、少女だった。

あらゆる行動を慎重に計ることを学んでしまった、一人の。

触れるという、ただそれだけの些細なことにおいてさえ。

私は彼女を凝視した。

言葉は発せない。

頷くこともできない。

だが、視線を逸らすこともしなかった。

彼女は理解したようだった。

ゆっくりと、私の手に指を添える。

その接触は……奇妙だった。

温かく。

確かな、現実。

私の指が、反射的に彼女の指を握りしめた。

純粋な本能。

だが、私の意識は……別の場所にあった。

記憶。

混沌の中で、他者の手を握りしめた手。

任務の前に交わされた、約束。

そして、帰ってこなかった者たち。

……。

少女は手を引かなかった。

言葉を発することもない。

ただ静かに、そこにいた。

そして、この世界で目覚めてから初めて……。

私は、分析を止めた。

計算もしなかった。

脅威を捜索することもない。

ただ……。

そこに「在る」ことだけを感じた。

……。

母の声が、その時間を切り裂くまでは。

少女は即座に身を引き、あの端正で抑制された姿勢へと戻った。

まるで、あの小さな触れ合いなど最初からなかったかのように。

だが、私はそれを記録した。

忘れることはないだろう。

不可解なことばかりの世界において……。

細部こそが、すべてを定義するのだから。

……。

わずかに首を巡らせ、窓の方を向く。

光の色が、再び変わり始めていた。

また一つのサイクル。

また新しい一日。

また一つの、機会。

ゆっくりと目を閉じ、この肉体が持つ抗いがたい疲労に身を任せる。

だが、私の精神は消えなかった。

そこに在り続けた。

覚醒したまま。

適応し続けながら。

今は、これほどまでに弱くとも……。

これは一時的なものに過ぎない。

時が来れば。

この身体が、命じるままに反応するようになれば。

この世界は、もはや謎ではなくなる。

そして、私の「既知の領域テリトリー」へと変わるのだ。

第4話をお読みいただき、ありがとうございます!

孤児院育ちで軍人となったエドゥアルドにとって、家族の距離感は戸惑いそのものです。

そして、あの赤髪の少女……彼女が抱える「規律」の正体とは?

物語が少しずつ動き始めました。

もし「この先の展開が気になる!」「アリスの成長を応援したい」と思っていただけたら、

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次回の更新もお楽しみに。

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