表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

ここはどこだ?

視点は宇宙の深淵から、新たな世界の片隅へと移ります。

エドゥアルドが目にした「光」と「闇」の正体とは……。

第1話、お楽しみください。

あの無限の深淵、その薄暗がりに身を置いた時、私が最初にしたことは「観察」だった。

そこには、何もなかった。

だが、不思議と恐怖は感じなかった。

痛みもない。

私の胸を打ち砕いたはずの傷跡も、跡形もなくなっていた。

タクティカルギアの重みも、血の鉄の味もしない。

すべてが……静寂に包まれていた。

まるで宇宙全体が、私と共に息を潜めているかのように。

一歩、踏み出す。

足元には存在しないはずの、見えないが確かな感触があった。深く考えずに歩を進める。その時の私の精神は、反応することよりも理解することに集中していた。

そして、それを見た。

光だ。

絶対的な虚無の中にぽつんと浮かぶ、かすかな小さな点。

私は近づいた。

歩みを進めるごとに、その火花は大きくなっていく。それは眩しくもなく、攻撃的でもなかった。温かく……どこか懐かしい。周囲を照らすのではなく、私を直接呼び寄せているかのような明澄さ。

その時、静寂が変化した。

虚空の中に、囁きが形を成し始める。

かすかで、絶え間ない。

遠くの森を抜ける風のような……あるいは、隠された川の流れのような音。

もう一歩、踏み出す。

そして、私は立ち止まった。

自分の意志ではない。

身体が、単純に反応を拒んだのだ。

周囲の空間が強張った。まるで現実が突如として凝固し、虚無のど真ん中に私を閉じ込めたかのように。

目の前で、光が動き始めた。

それは通常の移動ではなかった。

躍動している。

生きているかのように、不自然な俊敏さでうごめいていた。

そして……。

さらに現れた。

最初は数個。

次に数十。

そして数百。

数秒のうちに、深淵は光で埋め尽くされた。

数千、数百万。

星空を眺めているようだった……だが、上下が逆だ。

光は上にあったのではない。

あらゆる場所に、存在していた。

パターンを分析するよう訓練された私の脳が、本能的に動き出す。

それらは均一ではなかった。

そこには「階級」があった。

最初の光――最も巨大なものが、空間を支配していた。

「原初の光」。

その周囲では、数百万の小さな光が巨大なネットワークを形成している。

だが、その法則を乱すものがいた。

異常アノマリー」。

もう一つの光があったのだ。

最初の光を除けば、他のどれよりも巨大な光が。

私は、それと同じようなものを探した。

だが、他にはなかった。

それは唯一無二の存在だった。

その光に対して、奇妙な繋がりを感じた。

本能か、あるいはそれ以上の何かか。

しかし、その感覚は一瞬にして消え去った。

光が……変貌を始めたのだ。

その内側から、何かが現れた。

それは光ではなかった。

「闇」だ。

だが、単なる光の不在ではない。

すべてを飲み込む「虚無」そのものだった。

変貌は速かった。暴力的で、そして静かだった。

特異な光は悶え苦しみ……そして、もはや光ではなくなった。

今は別の「何か」だ。

一つの意志を持った存在。

命を宿した闇。

そして、それは動いた。

速く。

正確に。

捕食者のように。

それは他の光たちへと躍りかかった。

私はそれをはっきりと目撃した。

接触するたびに、それは「感染」していった。

光たちの内側で闇が生まれ、核から彼らを食い尽くしていく。

数秒のうちに、均衡は崩壊した。

深淵の三分の一が奪われた。

そして、戦争が始まった。

音はなかった。

叫び声もなかった。

だが、私は感じ取った。

これは、紛れもない「戦闘」だ。

純粋な光たちは再集結し、組織化しようと試みていた。

だが、闇は違った。

混沌としていた。

予測不能で、執拗だった。

初めて、私は理解した。

私は単なる傍観者ではない。

その渦中にいるのだと。

もし、あの「モノ」に追いつかれたら……。

帰還する術はない。

大尉としての本能が、選択肢を探り始める。

遮蔽物。

脱出口。

いかなる戦術的優位性でもいい。

だが、何もなかった。

目の前で宇宙が壊れていくのを、ただ見守ることしかできなかった。

次々と、光たちが墜ちていく。

闇は拡大を続けていた。

抗う術もなく。

だが、何かが変わった。

一つの光。

小さく。

ほとんど無価値に等しいほど微かな光。

しかし、それは燃え始めた。

その輝きが変貌する。

白から……青へ。

強烈な、蒼。

暴力的で。

鮮烈な、蒼。

それは闇へと躍りかかった。

理屈では説明がつかない。

それはあまりにも弱すぎたはずだ。

だが、退かなかった。

耐え抜いたのだ。

そして……。

押し返した。

エネルギーの爆発と共に、それは影の侵攻を食い止め、深淵の端へと追いやり、強制的に撤退させた。

「境界」が生まれた。

目には見えない。

だが、確かな真実として。

そして、それと共に……。

均衡は永遠に姿を変えた。

境界は維持された。

一瞬の間……すべてが調和の中に留まった。

光たちは、以前のようには動かなくなった。もはや秩序のない混沌とした集団ではない。その本質において、何かが決定的に変わったのだ。

私は即座に気づいた。

もはや「大きさ」だけの違いではない。

今や……より深い、根本的な違いが生じていた。

「色彩」。

いくつかの光が変貌し始めた。

あるものは、測り知れない知識を秘めているかのように、静謐な輝きを放つ「紫」へと。

あるものは、虚無の中の小さな太陽のように、温かく支配的な力を宿した「黄金」へと。

そして多くは、そのまま「白」として留まった。

純粋に。

不変に。

かつて一様だった深淵は、今や生きたモザイク画となっていた。

一つのシステム。

一つの均衡。

そして、その中心で……。

「原初の光」が再び動き出した。

だが、今度は先ほどとは違う。

その舞いは、より緩やかで。

より……慎重だった。

まるで、何か別のものを創り出そうとしているかのように。

その核から、一筋の火花が放たれた。

たった、一つだけ。

小さく。

現存するどの光よりも、弱々しい。

ほとんど認識できないほどに。

それは「蒼」のような力も持たず。

「黄金」のような威圧感もなく。

「白」のような安定感もなかった。

それは……もろかった。

だが、その中にある何かが私の目を引いた。

それが「何であるか」ではなく。

それが「どのように見守られているか」によって。

原初の光のすべての注意が、その小さな火花に注がれていた。

まるで……特別なものであるかのように。

火花は降下していく。

中心から遠ざかり。

深淵の孤立した隅で静止した。

穏やかな場所。

争いもなく。

圧迫感もない場所。

原初の光が、その後を追った。

侵食するようにではなく。

ただ……守るように。

そして……。

再び、それは起きた。

もう一つの火花が生まれたのだ。

先ほどよりは、わずかに明るい。

だが、同じように脆い光。

今や、二つになった。

理解を超えた力の海に浮かぶ、二つのちっぽけな点。

それなのに……。

深淵全体が、それらを見守っているかのようだった。

まるで……重要なものであるかのように。

その存在が、何かを変えてしまうかのように。

二つの小さな光は動き始めた。

ゆっくりと。

好奇心を持って。

恐れることなく。

探索するように。

そして、辿り着いた。

「境界」へ。

限界の地。

光と闇が共存する場所。

即座に緊張が走るのを、私は感じた。

何かが起きようとしている。

闇が、反応した。

「特異点」が。

それは動いた。

速く。

真っ直ぐに。

それらを目掛けて、躍りかかった。

怒りゆえではなく……。

怒りゆえではない。明確な「意図」をもって。

それは、二つの光を包み込んだ。

そして、飲み込んだ。

光は消えた。

一瞬、すべてが終わったのだと思った。

だが、その時……。

閃光。

闇の内側から。

彼らは戻ってきた。

無傷のままで。

「特異点」は再び試みた。

何度も。

何度も。

何度も。

それらを喰らい。

破壊し。

絶対的な黒の中へと封じ込める。

だが、常に……。

彼らは必ず、帰還した。

その光は再び灯る。

変質することなく。

屈することなく。

その時、私は理解した。

彼らは「強い」のではない。

「強大」な力を持っているわけでもない。

ただ……「破壊できない」のだ。

そしてそれは、いかなる力よりも危険な性質だった。

すると、新たなことが起きた。

他のどの光もなさなかったこと。

彼らは増殖したのだ。

他とは違う。

外部からの創造によって現れるのではない。

自らを分かち。

複製し。

さらなる光を生み出していく。

等しく。

脆く。

だが、執拗に。

彼らがいた隅は、瞬く間に埋め尽くされていった。

一つのネットワーク。

生きたシステム。

増殖し続ける。

制御不能なまでに。

その瞬間……。

私は悟った。

あれは、我々だ。

「人類」だ。

闇の前では無力。

だが、決して消え去ることはない。

倒れても……再び立ち上がる。

死してもなお……何かを後に残していく。

しかし、闇は止まらなかった。

変化したのだ。

もはや力任せには襲わない。

動きが変わった。

より緩やかに。

より……狡猾に。

「特異点」は、その小さな光の一つを取り囲み始めた。

触れず。

喰らわず。

ただ、影響を与えていく。

困惑させていく。

その光が躊躇するのを、私は見た。

揺らぎ。

そして……。

道を外れた。

それは、同種の別の光へと近づいた。

そして――。

衝突。

暴力的。

直接的。

打ちつけられた光は……。

消えた。

帰還することなく。

抗うこともなく。

ただ、消失したのだ。

深淵が……反応した。

その時が来たのだ。

最初の一歩。

臨界点。

「最初の殺人」。

特異点は躊躇わなかった。

攻撃を加えた光へと襲いかかる。

弱体化したその光へ。

そして、今度は……。

帰還はなかった。

抵抗もなかった。

闇がそれを完全に喰らい尽くした。

それはそのまま留まった。

堕落し。

喪失し。

永遠に。

胸の内に、何かを感じた。

恐怖ではない。

それは……「理解」だった。

人類はただ闇に抗うだけではない。

自らが闇そのものに変貌することもあるのだと。

反応は即座だった。

原初の光が……応えた。

静寂ではない。

忍耐でもない。

深淵全体を震わせるほどの、エネルギーの爆発。

それは単なる力ではなかった。

「怒り」だ。

「喪失」だ。

そして……「審判」だった。

光たちが震える。

境界が張り詰める。

闇もまた、それに応じた。

特異点はうごめき、その影響力を拡大させていく。まるで、さらに巨大な「何か」に備えるかのように。

二度目の戦争が始まろうとしていた。

だが今度は……。

単なる生存競争ではない。

「殲滅」だ。

光はもはや抗うことを求めていない。

根絶を求めていた。

均衡が崩壊していく。

両陣営が衝突の構えをとる。

そして――。

深淵が引き裂かれた。

爆発ではない。

衝撃でもない。

それは……「傷跡」だった。

現実そのものを貫く巨大な亀裂。まるで外部の何かが、介入を決めたかのように。

その亀裂から……。

それは現れた。

実体エンティティ」。

定まった形はない。

光も持たない。

だが、闇でもなかった。

その存在は、形容しがたいものだった。

色彩ではなく。

影でもない。

それらすべてを超越した、別の何か。

私の精神では……処理しきれない代物。

だが、本能がそれを理解した。

それは争いの一部ではない。

さらに高次の存在。

以前から存在し。

以後も存在し続けるもの。

その存在だけで、すべてが静止した。

原初の光が……止まる。

特異点も……同様に。

深淵全体が、沈黙に包まれた。

いかなるものよりも深い、静寂。

実体は何かが伸ばした。

腕か。

触手か。

私にはわからない。

だが、それは小さな光たちが墜ちた場所を、真っ直ぐに指し示した。

それは攻撃ではなかった。

保護でもない。

ただ、観察していた。

評価していた。

そして、私はそれを感じた。

その視線を。

私への、注目を。

そこには、意識を持つ者は他に誰もいなかった。

私だけが……唯一の目撃者だった。

何が起きているのかを理解できる、唯一の存在。

「パチン」と、音がした。

乾いた。

絶対的な、断絶の音。

音は空気を伝わったのではない。

存在そのものに、響いたのだ。

そして、すべてが崩壊した。

光も。

闇も。

秩序も。

すべてが混ざり合い、歪んでいく。

あり得ないほどの巨大な渦へと変貌した。

あらゆる構造を飲み込む、エネルギーの旋風。

そして――。

白。

すべてが白に染まった。

先ほどとは違う、別の虚無。

盲目にするほどに。

純粋な、白。

その瞬間……。

私は再び、動き出した。

身体が応える。

手も。

足も。

すべてが戻ってきた。

だが、地面はない。

方向さえない。

ただ、果てしない白があるだけだ。

一歩、踏み出す。

そして、それを感じた。

恐怖ではない。

もっと重く。

もっと深いもの。

「審判」だ。

ゆっくりと、振り返る。

実体エンティティがそこにいた。

目の前に。

形もなく。

顔もない。

だが、それが私を見つめていることは分かった。

私の身体を見ているのではない。

傷跡でも。

軍服でもない。

その先を見ていた。

あらゆる決断を。

あらゆる死を。

あらゆる犠牲を。

私が何者であったか、すべてを。

私がなしたこと、そのすべてを。

まるで、私の魂を読み取っているかのようだった。

何かを探し。

評価している。

やがて、それは語りかけた。

だが、音ではない。

声でもない。

それは「概念」だった。

「思考」そのもの。

私の脳に直接、流し込まれた概念。

理解することのできない言語。

だが、どういうわけか……。

それが重要であることだけは、分かった。

理解しようと試みる。

だが、できなかった。

それは、あまりにも。

あまりにもいにしえの。

あまりにも……絶対的なものだった。

背後で、再び混沌が渦巻き始める。

旋風。

光と闇が再構築されていく。

戦争を継続するための準備。

だが、そんなことはどうでもよかった。

実体エンティティは、すでに何かを決断していたのだから。

それは動いた。

あるいは、動くことに相当する何かを。

「手」のようなものを伸ばし。

そして、私の額に触れた。

その瞬間――。

光。

以前のようなものではない。

外部からではなく。

内側からの、光。

私の中の何かが、打ち砕かれるのを感じた。

そして同時に……。

再構築されていく。

あらゆる記憶。

あらゆる経験。

私を構成するすべてが……。

分解され。

再編され。

書き換えられていく。

痛みはなかった。

だが、耐え難い感覚。

私という存在であることをやめ……。

別の「何か」へと変貌していくような感覚。

私の肉体。

本当の肉体。

ヘリコプターの中に残してきたはずの……。

それは遠く、疎遠なものに感じられた。

無価値な、脱ぎ捨てられた殻のように。

そして……。

空間が変容した。

光が伸びていく。

それはトンネルとなり。

導管となり。

「道」となった。

抗うことのできない、強大な力を感じる。

私は引きずられていく。

すべてから遠ざけられていく。

実体からも。

戦争からも。

深淵からも。

そして――。

暗闇。

静寂。

それから……。

光。

私は目を開けた。

すべてが霞んでいる。

重く。

緩慢。

だが、違っていた。

深淵はない。

実体もいない。

そこには……一つの「世界」があった。

現実の。

確かな。

最初に視界に入ったのは、天井だった。

木材。

太いはり

どっしりと、暗い色。

コンクリートとも、金属とも、戦場とも無縁なもの。

樹脂の匂いがした。

煙の。

何か……「生きたもの」の匂い。

瞬きをする。

息を吸う。

そして、一つの問いだけが脳裏をよぎった。

「……ここは、どこだ?」

読んでいただき、ありがとうございます!

ついに新しい世界での第一歩(?)が始まりました。

続きが気になる、あるいは応援してくださる方は、ぜひ評価やブックマークをいただけると励みになります。

次回、エドゥアルドに何が起きるのか……お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ