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最初の遭遇

いつも貴重なアドバイスをありがとうございます。

今回、戦闘描写や特有の緊張感を表現するために、より専門的な日本語の語彙ごいに挑戦しています。もし不自然な点や、もっと相応しい軍事・魔法用語の表現があれば、ぜひコメントで教えてください。

皆様と共に、この物語をより鋭く、リアルなものにしていきたいと思っています。

応援、よろしくお願いします!

「返せ」

静寂。

「……エリガク」

猫は俺を見た。

凝視。

不変。

靴下が、まるで戦利品のように奴の口からぶら下がっていた。

「警告だぞ」俺は一歩踏み出して言った。「それは俺に残された最後の片方なんだ」

奴は瞬きをした。

ゆっくりと。

そして……。

走った。

「おい!」

俺は即座に後を追った。

奴は影のように廊下を駆け抜け、速度を落とさずに角を曲がる。

「遊びじゃないんだぞ!」

テーブルの上に飛び乗る。

小さな容器をなぎ倒す。

振り返りもしない。

「エリガク!」

加速する。

危うく滑りそうになった。

均衡バランスを立て直す。

奴はすでにドアのところにいた。

「……やめろよ」

奴はそこを通り抜けた。

当然のように。

「……最高だな」

俺は外へ飛び出した。

外気が即座に俺を叩く。

新鮮だ。

だが、奇妙だった。

気には留めなかった。

まだ、この時は。

「こっちへ来い」俺はペースを落として呟いた。

エリガクは数メートル先で足を止めた。

振り返る。

靴下はまだそこにある。

無傷だ。

「よし……」俺は息を吐いた。「それを渡せば命は助けてやる」

尻尾を動かす。

提案を評価しているかのようだ。

一秒。二秒。

そして……。

再び走り出した。

「いい加減にしろ!」

俺はまた追いかけた。

中庭を回り込む。

鍛錬場を通り過ぎる。

低い岩を飛び越える。

俺も続く。

より速く。より近く。

「捕まえたぞ……」

再び跳躍。

だが今度は……。

止まらなかった。

中庭のさらに先。

裏手の方へと分け入っていく。

俺は眉をひそめた。

「……今度はどこへ行くんだ?」

奴は普段、あんな場所へは行かない。

進み続ける。

足取りが自然と遅くなった。

疲労ではない。

別の何かのせいだ。

「声」だ。

俺は足を止めた。

かろうじて。

エリガクも止まった。

じっと動かない。

まるで、目的を果たしたかのように。

「……」

目を細める。

そこにいた。

父さんだ。

そしてシズカ。

俺に背を向けて。

話している。

真剣な面持ちで。

「……ただの虐殺ではなかった」父さん(ジャレッド)が言った。

身体がわずかに強張る。

「三日が過ぎました」シズカが応じた。「未だに、原因となったものの明確な痕跡がありません」

沈黙。

重苦しい。

それ以上は近づかなかった。

だが、立ち去りもしなかった。

「……それが、俺の懸念していることだ」父さんが付け加えた。

エリガクを見た。

奴はただ……座っていた。

平然として。

あたかも、これらすべてが計画されていたかのように。

「……知っていたのか?」俺は囁いた。

猫は瞬きをした。

ゆっくりと。

答えはない。

俺は前方に視線を戻した。

そして、そこに留まった。

盗み聞き。

奴らに知られることなく。

父さん(ジャレッド)の言葉は、普段のものではなかった。

家の中で使うようなトーンではない。

「……生存者は一人もいなかった」父さんが言った。

シズカはすぐには答えなかった。

「……ただの一人もだ」彼は付け加えた。

木々の間を風が吹き抜ける。

冷たく、乾いた風。

「……ならば、無差別な襲撃ではありませんね」ようやくシズカが答えた。「意図的なものです」

「ああ」

短く。真っ直ぐに。

「……そして、組織的だ」

俺はわずかに眉をひそめた。

「組織的」。

それは、並の魔物モンスターが成せることではない。

「足跡が単一の種と一致しない」父さんが続ける。「異なる異形たちが混在していた」

統制コントロールされていたのですね」シズカが付け加えた。

沈黙。

「……俺もそう思った」父さんが認めた。

俺の鼓動がわずかに速まる。

「統制」。

「……悪魔、ですか」シズカが呟いた。

驚きではなかった。それは「確信」だった。

「その可能性が高い」父さんが答える。「だが、腑に落ちない点がある」

シズカがわずかに彼の方を向いた。

「……何です?」

「奴らは食料のために村を荒らしたわけじゃない」

「縄張りのためでもありませんね」

「奴らは……何かを『捜して』いたんだ」

空気がより重くなったように感じられた。

「……何を?」シズカが尋ねる。

父さんは微かに首を振った。

「わからん」

彼は短い間を置いた。

「だが、奴らはすべてを調べ尽くしていた。家も、倉庫も……遺体までもだ」

無意識に奥歯を噛み締める。

「それは獣の振る舞いではありません」シズカが言った。

「ああ、違う」

「……『捜索』です」

「その通りだ」

その後に続いた沈黙は、先ほどとは異なっていた。

より濃密で、より居心地が悪い。

「……ならば」シズカが呟いた。「……あれは襲撃ではなかったのですね」

父さんが彼女を横目で見た。

「……『検分インスペクション』だ」

その言葉。

ちっとも気に入らなかった。全く。

再び風が吹いた。乾いた葉を引きずりながら。

「もし奴らが何かを捜しているのだとしたら……」シズカが続ける。「……まだ見つかっていないということになります」

「ああ」

「……そして、奴らは捜し続ける」

「それも、その通りだ」

二人は数秒間、沈黙を守った。

同じことを考えているのだ。

「……備えを固める必要がありますね」ようやくシズカが言った。

提案ではない。それは「決定」だった。

父さんが頷く。

「外周の補強だ」

「警戒の交代制シフトを」

「……そして、不必要な外出は制限する」

「承知しました」

彼は間を置いた。

「アリスを遠ざけたくない」

俺の身体が、わずかに強張る。

「……いや、誰一人としてだ」

父さんのトーンがわずかに変わった。

より真剣に。より……個人的な響きに。

「……もし、これがここまで届くようなことがあれば」

彼は言葉を最後まで口にしなかった。

その必要はなかったからだ。

シズカは理解していた。そして、俺も。

「ならば、そうなる前に準備を終えなければなりません」彼女が言った。

「ああ」

再び、静寂が戻る。

だが今度は……違っていた。

それは「迷い」ではない。「覚悟」の静寂だ。

俺は一瞬、視線を落とした。

思考を巡らせる。

『奴らは何かを捜している……』

『……そして、まだ見つかっていない』

思考が加速する。

俺の年齢にしては、あまりにも速すぎる速度で。

だが、それは今に始まったことではない。

最初から、そうだった。

再び、視線を上げた。

彼らはまだそこにいた。

真剣に、毅然として。

まだ届かぬ「何か」に備えて。

だが、それはすでに途上にあった。

そして、なぜか……。

それが遠い出来事ではないように感じられた。

これ以上、留まる必要はない。

十分すぎるほど聞き終えた。

一歩、後退する。

さらに、もう一歩。

物音を立てぬよう、細心の注意を払って。

エリガクはまだそこにいた。

座ったまま、俺を観察している。

俺が何をしていたか、すべてを見透かしているかのように。

俺は奴を見た。

「……お前のせいだぞ」小声で呟く。

奴は瞬きをした。

ゆっくりと。動じる様子もなく。

俺は溜息をつき、背を向けた。

来た道を引き返す。

中庭の空気は、先ほどとは違って感じられた。

より狭く。より……監視されているかのような。

たった今聞いたことが、何かを変えてしまったのか。

それとも……。

変貌したのは、俺の方か。

急ぐ風でもなく、だが穏やかでもない足取りで歩く。

思考が同じ場所を堂々巡りしていた。

『奴らは何かを捜している……』

『……そして、まだ見つかっていない』

村一つを根絶やしにするほど重要なものとは、一体何だ?

そして何より……。

なぜそれが、自分に無関係ではないと感じるのか。

眉をひそめる。

筋が通らない。だが、胸騒ぎは消えなかった。

屋敷に辿り着くと、そこにはいつもの空気が流れていた。

平穏で、温かく。

日常。

あまりにも、日常的すぎる。

あたかも外の世界など存在しないかのように。

「アリス」キッチンから母さん(エララ様)の声がした。「どこにいたの?」

答える前に、一呼吸置いた。

「……外で。鍛錬してた」

完全に嘘というわけではない。

「おいで、夕食の時間よ」

「すぐ行く」

中に入る。

料理の匂いが空間を満たしていた。

シズカはすでに中にいた。

まるで、一度も外に出ていなかったかのように。

あの会話など……。

最初から存在しなかったかのように。

アズミは席に座っていた。

リラックスしている。だが、俺が入ると同時にわずかに視線を上げた。

「遅かったわね」彼女が言った。

「こいつのせいだ」俺は親指で後ろを指差した。

そのタイミングで、エリガクが何食わぬ顔で入ってくる。

「あんたの場合、いつも誰かのせいね」アズミが呟いた。

「運が悪いんだよ、俺は」

「そうね」

俺は席に着いた。

肩の力を抜こうとしたが、完全には拭えなかった。

「……何かあったの?」母さん(エララ様)が料理を運びながら尋ねた。

俺は頷いた。

「……いや」

嘘だ。

だが、他のことは言えなかった。

まだ、その時ではない。

食卓を見渡す。

何かが足りなかった。

いや……誰かが。

「……赤ん坊は?」俺は尋ねた。

母さんが柔らかく微笑んだ。

「寝ているわ。今日は午後の間ずっと起きていたから」

「結構泣いてたわよ」アズミが一口運びながら付け加えた。

「泣いていたのではありません」シズカが静かに割って入った。「ただ……落ち着きがなかったのです(不穏でした)」

その言葉が、俺の注意を引いた。

「……落ち着きがなかった?」

シズカはわずかに頷いた。

「……まるで、何かを感知しているかのように」

俺は一瞬、視線を落とした。

『……俺と同じか』

「普通のことよ」母さんが小さく笑って言った。「あの子はまだ、この世界を知ろうとしている最中なんだから」

普通。

ああ……。

そうだな。

「……後で、見てきてもいいか?」俺は尋ねた。

「起こさないのならいいわよ」母さん(エララ様)が答えた。「あの子には休息が必要だから」

俺は頷いた。

「わかってる」

会話は続いた。

軽やかに。平穏に。いつものように。

だが、俺は……。

完全には、そこにいなかった。

父さん(ジャレッド様)の言葉が頭の中で繰り返される。

幾度も、幾度も。

『奴らは何かを捜している……』

『……そして、奴らは捜し続ける』

『……備えを固める必要がある』

食卓の下で、わずかに拳を握りしめた。

誰にも気づかれぬように。

……そう、思っていた。

アズミが俺を横目で見た。

何も言わなかったが。

彼女は気づいていた。わかっていたのだ。

俺は視線を逸らした。

夕食の後、音を立てずに席を立った。

「……ちょっと、見てくる」俺は言った。

母さん(エララ様)が頷く。

「静かにね」

廊下を歩く。

いつもより、足取りは遅かった。

そっと、ドアを開ける。

部屋は薄暗がりに包まれていた。

穏やかで、静謐せいひつ

彼女はそこにいた。

小さく、脆く。

眠りに落ちている。

呼吸は静かだ。規則正しい。

ゆっくりと近づく。

どんな些細な動きも、この瞬間を壊してしまいそうで。

揺りかごの傍らで足を止めた。

じっと見守る。

瞳は閉じられていたが。

あの色を想像することができた……。

あの奇妙な輝き。他とは違う、特別な。

なぜだかわからなかったが……。

彼女を見つめるたびに、何かを感じた。

あの嵐の時のようなものではない。

今日の、あの不穏な感覚とも違う。

それは……。

より安らかで、より温かなもの。

手を伸ばす。一瞬、躊躇ためらった。

そして……。

その小さな手に、そっと触れた。

彼女は起きなかった。

だが、指がわずかに動いた。

俺の指を、握りしめる。

弱々しく。

「……」

無意識に、笑みがこぼれた。

「……守ってやるよ」俺は低い声で呟いた。

一体、何から守るのか。正確にはわからなかった。

だが、そうするつもりだった。

数秒間、そのまま留まった。

沈黙の中で。

それから、部屋を出た。

慎重に、ドアを閉めて。

いつの間にか、夜が降りていた。

空はゆっくりと闇に染まり。

周囲の声も、静かに消えていった。

灯りが消えていく。

一人、また一人と、皆が自室へと引き下がった。

他のどの日とも変わらぬように。

何も問題などないかのように。

世界が……変貌を遂げようとしていることなど、つゆ知らず。

俺はベッドに横たわり、天井を見つめた。

静寂はいつもより重かった。

エリガクが傍らに飛び乗り、定位置を求めて二、三度回ってから落ち着いた。

「……ただの気まぐれで靴下を盗んだわけじゃないんだろ?」俺は呟いた。

返答はない。ただ、奴の尻尾が微かに動いただけだ。

目を閉じたが、眠りは遠かった。ようやく微睡まどろみが訪れた時、それは休息ではなく「前兆プレサージュ」を連れてきた。

時の感覚が削げ落ち、鼻を突く焦げた木の匂いが嗅覚を襲う。次いで、遠くから響く悲鳴の合唱。

俺は弾かれたように目を開け、一動作で身を起こした。千の戦場を潜り抜けて鍛え上げた兵士の本能が、平穏の終焉を告げていた。

室内は不自然な闇に沈んでいた。エリガクはもう眠っていない。毛を逆立て、扉を凝視する緊張の塊と化していた。

「……何を感じてる?」俺は囁いた。

見開かれた瞳が放つメッセージを理解するのに、言葉は不要だった。「差し迫った危機」だ。

迷わずベッドから飛び降りる。エリガクが俺の肩へと飛び移ると同時に、床の凍てつくような冷気を感じ取った。この季節にはあり得ない温度だ。

一歩、また一歩。ドアを開ける。

廊下はまるで狼の口のような暗黒だった。しきいをまたいだ瞬間、空気が変質した。密度を増し、重く、あたかも固体のように。焦熱の悪臭と嘆きが、逃れようのない現実となって迫る。これは幻覚でも悪夢の残滓でもない。今、ここで起きている「現在」だ。

突如、物理的な圧迫感が胸を叩いた。まるで見えない力によって空間そのものが圧縮されているかのようだ。エリガクが低く威嚇の声を上げ、俺の真後ろへと視線を固定した。

感じた。骨まで凍てつかせるような視線だ。背後から「何か」が俺を観察している。

純粋な戦闘本能に従い、俺は反転した。

そこに、いた。

廊下の突き当たり。一筋の人影シルエットが微動だにせず立っていた。だが、その存在だけで耐え難い重圧を放ち、周囲の現実を歪ませている。まるで腐敗したエネルギーの奔流ほんりゅうのように。

俺の身体は戦慄わななき、衝撃に備えて極限まで引き絞られた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

平穏な日常が「地獄」へと変貌する瞬間。アリスの前に立ったあのシルエット、そしてその圧倒的なプレッシャー……。

果たして、この「最初の遭遇」で何が語られ、何が起きるのか。

残り2話。物語のテンションは限界を突破します。

アリスの戦いと運命を見届けたい方は、ぜひ【☆☆☆☆☆】の評価とブックマークで、作戦への支援をお願いします。

次回の更新、絶対に聞き逃すな!

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