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教えられぬもの

シャドウ・コマンドの皆様、こんにちは。第15話をお届けします。

今回は視点を変え、アリスを指導する立場であるシズカとジャレッドの対話を描きました。

魔力を持たないアリスが、失敗を「情報」として処理し、独自の戦い方を構築していく姿……。その異質さを、見守る者たちの目線から感じていただければ幸いです。

海外作者としての表現の挑戦も続いております。皆様のアドバイスをお待ちしております!

中庭は静まり返っていた。

今日、初めての静寂だ。

土埃はまだ収まりきらず、地面に残された跡が……雄弁に物語っていた。

俺は(シズカは)それを遠くから眺めていた。

アリスを。

芝生の上に倒れ込み、荒い呼吸を繰り返しながら、空を見上げている。まるで先ほど起きたことなど、大して重要ではないかのように。

あたかも、シズカを……。

「遮断」した直後ではないかのように。

俺はわずかに眉をひそめた。

不快感からではない。

分析のためだ。

「考え込んでいるな」隣で声がした。

振り向かなかった。

「ええ」

ジャレッド様が俺の隣で足を止め、腕を組んだ。

彼もまた、アリスの方を見ていた。

だが、その表情は……。

俺とは違っていた。

よりリラックスした。

より……誇らしげなものだ。

「上達したな」彼は続けた。

「いいえ」俺は答えた。「それは『上達』ではないわ」

沈黙があった。

短い沈黙。

「なら、何だと言うんだ?」

俺は一瞬、視線を逸らした。

あの瞬間に意識を戻す。

正確な、あの刹那へ。

あの接触タッチへ。

「適応よ」俺はついに言った。「彼は、自分に欠けているものを補う術を学びつつある」

ジャレッド様はすぐには答えなかった。

「それは俺には、上達したように聞こえるがな」

「同じではないわ」

今度は、彼を真っ直ぐに見た。

「上達とは、道を歩むことよ。それを磨き、より効率的にしていくこと」

俺は再びアリスに視線を戻した。

「彼は、どの道も歩んでなどいない」

沈黙。

「彼は、自ら道を創り出しているのよ」

ジャレッド様が鼻から短く笑い声を漏らした。

「それは、より危険な響きだな」

「ええ、そうよ」

再びの間。

今度は、より長く。

「あいつが使ったあの動き……」彼は付け加えた。「これまで見たことがない」

「私もよ」

俺は中庭から目を離さなかった。

「力ではなかった」

「わかっている」

「速さでもなかった」

「それも、わかっている」

をついに、顔だけをわずかに彼の方へ向けた。

「精密さ(プレシジョン)だったわ」

ジャレッド様は軽く眉を寄せた。

「一度触れただけで……俺の均衡バランスが崩れたんだ」

誇張ではない。

解釈でもない。

俺はそれを肌で感じたのだ。

「まるで何かが……反応を拒んだかのように」

ジャレッド様は黙り込んだ。

今、彼も思考を巡らせている。

「魔法か?」

俺は静かに首を振った。

「いいえ」

「なら、何なんだ?」

俺は再び前を向いた。

考えを整理していく。

「衝撃の瞬間……遮断を感じたわ」

「遮断だと?」

「ええ。痛みではなかった。ダメージでもなかった」

一呼吸置く。

「まるで『流れ』が……乱されたようだった」

その後に続いた沈黙は、先ほどとは違っていた。

より、重苦しいもの。

「それは普通じゃないな」ジャレッド様がついに言った。

「ええ」

「そして、あいつにできるはずのないことだ」

「それも、そうね」

二人とも、同じことを理解していた。

アリスにはマナがない。

それを操ることもできない。

そんな風に……。

マナと干渉し合えるはずがなかった。

「……運だったと思うか?」ジャレッド様が尋ねた。

俺は迷わず否定した。

「いいえ」

「なぜだ?」

俺は彼を横目で見た。

意図インテンションを持ってやっていたからよ」

沈黙。

「偶然の打撃ではなかった」

再び、前を見つめる。

「彼は、特定の『点』を狙っていたわ」

ジャレッド様はゆっくりと息を吐き出した。

「それは、つまり……」

「身体を理解しているということよ」俺は彼の言葉を遮った。「あの年齢で、理解しているはずのないレベルで」

わずかな静寂。

「あるいは、およそ誰であっても、不可能なレベルでね」

風が静かに、中庭を吹き抜けていった。

木の葉をわずかに揺らしながら。

「……心配か?」ジャレッド様が尋ねた。

俺は(シズカは)その問いを反芻した。

一秒。

二秒。

「いいえ」

嘘だ。

「本当か?」

「……旦那様が思っているような意味では、ありません」

ジャレッド様が片眉を上げた。

「説明しろ」

俺は再びアリスに視線を戻した。

あいつはまだそこにいた。

横たわったまま。

何事もなかったかのように。

「あの子が強いことは、心配ではありません」

短く間を置く。

「明確な『限界』が見えないことが、不安なのです」

沈黙。

「あの子には、縛りつける魔力がない」

「あの子には、制約となる流派がない」

「あの子には、先読みできるスタイルがない」

俺はわずかに顔をジャレッド様の方へ向けた。

「そして、今や……」

一瞬、視線を落とす。

あの接触を。あの刹那を思い出しながら。

「他者にどこまで干渉できるのかさえ、我々にはわからないのです」

ジャレッド様は答えなかった。

だが、その表情が……。

変わった。

もはや誇らしさだけではない。

そこには別の何かが混じっていた。

何かが「常軌を逸し始めている」と理解した時にだけ現れる、あの表情だ。

「……ならば、より近くで見守る必要があるな」彼はついに言った。

「いいえ」

俺はそれを遮った。

「理解する必要があるのです」

沈黙。

俺はもう一度、アリスの方を見た。

そして、この生活が始まって以来、初めて……。

あの子を「訓練中の子供」としてではなく。

まだ我々が「理解しきれていない何か」として、捉えていた。

「エララと話すべきだな」唐突にジャレッド様が言った。

すぐには答えなかった。

彼が何を言わんとしているかは、わかっていた。

「……そうします」

それは約束ではない。

必要性の確認だった。

ジャレッド様は、その答えを予期していたかのように小さく頷いた。

それから、短い沈黙の後、彼の声のトーンが変わった。

より低く。

硬さが取れた声。

「……様子はどうだ?」

俺は横目で彼を見た。

「エララ様のことですか?」

「……妊娠の経過だ」

俺は視線を正面に戻した。

思考を巡らせる。

「安定しています」

一呼吸置く。

「ですが、普通の妊婦とは違います」

ジャレッド様は鼻から息を吐き出した。

「この家族に、普通のことなど一つもないがな」

答えなかった。

彼が正しいからだ。

「エララ様のエネルギーが……変質しています」俺は続けた。「不安定ではありませんが、均一でもない」

「それは、悪いことか?」

「必ずしも、そうとは」

俺は屋敷の方へと視線を移した。

「ですが、無視していいことでもありません」

沈黙。

風が再び、中庭を通り抜けていった。

「……赤ん坊の方は?」ジャレッド様が、わずかな躊躇ためらいを見せて尋ねた。「……無事なのか?」

答えるまでに一秒を要した。

「ええ」

だが、その声は先ほどほど確かなものではなかった。

「……そう、信じています」

ジャレッド様が軽く眉をひそめた。

「……その言い方は、好きになれんな」

シズカもです」

再びの間。

「弱さではありません」俺は付け加えた。「それは……『差異』です」

「アリスのようにか?」

その時、俺は彼を真っ直ぐに見た。

正面から。

「いいえ」

断定的だった。

「同じではありません」

それでも……。

何かがあった。

どうしても噛み合わない、何かが。

「エララ様から感じる流れ(フロー)は……」俺は続けた。「……普通の人間のような振る舞いではありません」

ジャレッド様は黙り込んだ。

それを咀嚼している。

「……それが何を意味する?」

「生まれてくる子は……『普通』ではないということです」

それは空虚な推測ではない。

一つの「結論」だった。

「最高だな」彼は呟いた。「まさに望んでいた通りだ」

その声に皮肉はなかった。

あるのは……受容じゅようだけだ。

俺は小さく溜息を吐いた。

「……もっと心配なさるべきです」

「しているさ」

彼を見た。

「だが、心配したところで何も変わりはしない」

彼の言う通りだった。

またしても。

俺は再びアリスへと視線を戻した。

あいつはまだ地面にいたが……。

もはや完全に静止してはいなかった。

かすかに動いている。

呼吸を整えながら。

あたかも、あれほどのことをした後でも……。

その肉体はすでに、再び立ち上がるための準備を始めているかのように。

「あいつは……」ジャレッド様が呟いた。

「ええ」

「止まらないな」

俺は静かに首を振った。

「止まり方を知らないのです」

沈黙。

「……それは、良いことだと思うか?」

その問いについて考えた。

必要以上に。

「……あの子の前に、何があるかによります」

風が再び吹いた。

今度は、少しだけ強く。

「ならば、あいつが歩み続けるに値する『何か』を、俺たちが用意してやらねばならんな」ジャレッド様が言った。

答えなかった。

同意していなかったからではない。

それが……。

口で言うほど容易いことではないと、わかっていたからだ。

俺の目は、もう一度逸れた。

アリスの方へ。

そして、一秒だけ……。

たった一秒だけ……。

俺の「流れ」を遮断した、あの正確な瞬間を思い出した。

あの小さな点。

あの精密さ。

あの意図。

「……ジャレッド様」

「ん?」

「次回の訓練で、試してみたいことがあります」

彼は「何を」とは聞かなかった。

ただ、頷いただけだ。

「……事前に知らせろよ」

「いいえ」

短く間を置く。

「あの子がこれに、どう適応するのかを見たいのです」

ジャレッド様の顔に、微かな苦笑が浮かんだ。

「……そいつは、かわいそうに」

「いいえ」俺は視線を逸らさずに訂正した。

今度は……。

憐れみではなかった。

それは期待だった。

「……かわいそうなのは、我々の方です」

「……時折、お前に似ていると思うことがある」唐突にジャレッド様が言った。

俺はわずかに眉をひそめた。

「俺(私)に、ですか?」

「ああ」

彼は視線を逸らさなかった。

「お前がここに来たばかりの頃だ」

沈黙。

答えなかった。

だが、彼は言葉を続けた。

「口数は少なかったな」

「すべてを観察していた」

「そして訓練のたびに……」彼は微かに笑みを浮かべた。「……地面に転がっていたものだ」

俺は彼を横目で見た。

「それは状況が違います」

「ほう、そうか?」

「ええ」

視線を正面に戻す。

「俺には魔法がありました」

短い間。

「あの子には、ありません」

ジャレッド様はゆっくりと頷いた。

「それなのにな……」

彼は顎で中庭を示した。

アリスが再び、構えを取っていた。

エリガクを前にして。

「……あいつは立ち上がり続ける」

否定はできなかった。

それが真実だからだ。

「あの初日のことを覚えているぞ」ジャレッド様が続けた。「お前は身体強化キョウカを数秒維持するのがやっとだった」

沈黙。

「足が震えていたな」

「それでも、お前は止まらなかった」

俺は一瞬、視線を落とした。

記憶。

断片的な。

「……旦那様が、止めてくださらなかったからです」

ジャレッド様は短く笑い声を漏らした。

「それが狙いだったからな」

再び、前を見る。

アリスが一歩踏み出し。

エリガクもまた、動いた。

「だが、決定的な違いがある」ジャレッド様が付け加えた。

「わかっています」

説明の必要はなかった。

「お前は、すでに存在するものを学んでいた」

「あの子は……」

「……創り出している(発明している)最中だ」彼が言葉を継いだ。

俺は小さく頷いた。

その時――。

激しい動きが俺たちの注意を引いた。

アリスが踏み込もうとした瞬間。

エリガクがその行く手を強引に遮った。

足元へ真っ向から。

「またお前か!?」

均衡バランスを崩す。

転倒。

またしても。

沈黙。

そして――。

「……料理して食ってやるからな、マジで!」

鳴き声が一つ。

挑戦的だ。

ジャレッド様が、今度は声を上げて笑った。

「……お前は、あんなことはしなかったな」

「ええ、しません」

するはずもなかった。

アリスが再び立ち上がる。

今度はより速く。

眉をひそめ。

あの猫を、本物の敵であるかのように睨みつけながら。

エリガクは背を丸めた。

準備完了レディだ。

「これはもう訓練じゃない……」アリスが呟いた。

「……これは個人的な恨みだ」

奴が飛び込んだ。

猫がかわす。

俊敏に。

軽やかに。

あたかも嘲笑うかのように。

「……だが」ジャレッド様は、まだ笑みを浮かべたまま付け加えた。「あの部分は、やはりお前に似ているな」

彼を見た。

「そうですか?」

「ああ」

「お前も、物事が思い通りにいかないと、すぐ不機嫌になっていたからな」

俺は視線を逸らした。

「不機嫌になど、なっていません」

「……まあ、そういうことにしておこう」

沈黙。

風がもう一度、中庭を吹き抜けていった。

アリスがまたしても仕損じた。

エリガクが跳ぶ。

彼を飛び越し、空中でひるがえり。

背後に着地した。

「動くな、この!」

「ミャー」

ジャレッド様は、楽しげに首を振った。

「あの戦いに勝つには、単なる技術以上のものが必要だな」

「……勝とうとしているのではありません」俺は言った。

「ほう?」

「適応しているのです」

俺はあの子の動きを一つ一つ観察した。

あらゆるミスを。

あらゆる修正を。

リアルタイムで。

「……そして、それは……」

短く間を置く。

「……より、危険なことです」

ジャレッド様は答えなかった。

だが、その笑みが……。

和らいだ。

「……ああ」

彼の視線が再びアリスに固定される。

「……そうだな」

中庭で、アリスが再び飛びかかった。

今度は……。

エリガクはすぐには回避しなかった。

そこに留まった。

待ち構えている。

あたかも、奴もまた……。

学んでいるかのように。

「互いを読み合っているな」ジャレッド様が呟いた。

答えなかった。

明白だったからだ。

だが、重要なのはそこではない。

「どうやっているか」だ。

アリスは単に反応しているのではない。

修正している。

調整している。

リアルタイムで洗練させているのだ。

まるですべてのミスが、失敗ではなく……。

「情報」であるかのように。

俺の目は、あの子の動きを追った。

リズムの変化。

構えの変遷。

そして、理解した。

即興ではない。

構築しているのだ。

一歩ずつ。

一つの動きずつ。

自分だけの何かを。

我々が教えたのではないもの。

我々には……。

教えることのできない何かを。

「ジャレッド様」

「ん?」

「……あまり、あの子を正そうとしないでください」

短い沈黙があった。

「……なぜだ?」

俺はわずかに視線を彼に向けた。

「我々の『規律ルール』に従うよう強いてしまえば……」

再び、中庭を見る。

「あの子が創り上げようとしているものを、壊してしまうかもしれません」

ジャレッド様はすぐには答えなかった。

だが、反論もしなかった。

それで十分だった。

風がもう一度、通り過ぎた。

今度はより優しく。

より、穏やかに。

一日の終わりを告げるかのように。

アリスが足を止めた。

ほんの一瞬だけ。

自分の手を見つめ。

それから、エリガクを見た。

何も言わずに……。

再び、構えを取った。

もう一度。

屈することなく。

決して。

俺は沈黙の中でそれを見守った。

介入せず。

言葉を発さず。

なぜなら、初めて……。

声をかけることが「間違い」であると感じたからだ。

「……面白いわね」俺は呟いた。

だが、今度は……。

あの子が成し遂げたことに対してではない。

あの子が「何者」へと変貌し始めているのか。

それに対しての言葉だった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

シズカが言った「我々のルールに従わせれば、彼が創り上げようとしているものを壊してしまう」という言葉。アリスはもはや、既存の枠組みには収まらない存在になりつつあります。

シャドウ・コマンドの皆様、アリスのこの「リアルタイムでの適応」をどう思いますか?

物語の「進化」を応援してくださる方は、ぜひ【☆☆☆☆☆】の評価とブックマークで、アリスの任務を援護してください!

次回の作戦開始まで、状況を注視せよ!

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