ドキドキ初登校
優しそうな白髪の先生に校門まで送ってもらって、恐ろしかった男子校を後にした。
雪乃と私の降りる駅は違う。
なので寝癖君の学校から駅までの間にあった、アイスクリーム屋さんに寄って約束通り雪乃にアイスを奢り帰った。
家に帰るまでの道中も、家に帰ったからも、晩御飯を食べていても、お風呂に入っていても、ずっと寝癖君が言った「明日もあの電車に乗る?」が頭から離れない。
今までは寝癖君を遠くから見ていただけだった。
だけど弟君の仕業によって、寝癖君と話すことができて、明日会う約束までしてしまった。
まぁ、正確には会う約束ではなく、同じ電車に乗るか? という話なんだけど……。
ベッドに入り、職員室で向けられた王子様のような笑顔を思い出してしまい、顔が熱くなる。
誰に見られているわけでもないけど、恥ずかしくて掛け布団を頭から被った。
こんなに胸が高鳴ったのは初めてなのかもしれない……。
次の朝、アラームより早く目が覚めた。
いつもより念入りに髪をセットし、いつもはつけない色付きのリップを塗った。
メイクはまだまだ勉強中で、可愛くできない。
もっと早くに練習しておくべきだった。
「いってきま〜す」
できるだけいつも通りの口調で言ったつもりなのに、ママに「今日はやけに機嫌がいいわね。何かいいことあるの? 彼氏でもできた?」と聞かれてしまった。
ママの言葉に朝食を食べていたパパがピクリと、反応する。
「彼氏なんていないよ〜」
困ったふうに言ったけど、また顔が熱くなったのがわかった。
「凛華は嘘がつけないわね」
ママが笑う。
「だから違うって!」
言えば言うほどパパが聞い耳を立てているを感じをしている。
彼氏はいない。でも少し知り合いになった寝癖君に会うのはドキドキする。
このまま話をすると、全てママに知られてしまいそうで、慌てて玄関のドアを開け急いで外に出た。
出る直前に、
「も、門限は6時だぞ! 暗くなるからな」
言い訳付きのパパの声がした。




