デートに、誘う?
さぁ、今日も登校です。
ママとの約束通り、薄い色付きリップだけを塗って登校です。
そんな恐れ多いことはできないと思いつつも頭の隅で、昨日ママが言った「だったらデートに誘わないとね」がぐるぐる回ってる。
デートに誘う?
付き合ってもいないのに?
というか、お知り合いになってまだ3日目なのに?
デートって……デートって……。
考えながらバス停に向い、考えながらバスを待っていると、隣の女子高生に変な目で見られた。
はい。今日もにやつきが止まりません。
デートって言ったら、二人で行くもんだよね。
春人君とデートだよ。
春人君と二人っきりでだよ。
爽やか人ったらし天然王子と二人っきりなんて、平凡庶民の私の心臓はやばいことになってると思う。
でも、そうなったらいいな〜。
なんて考えていると、
「……ちゃん。……華ちゃん……凛華ちゃん!」
呼ばれ、意識を現世に戻すと秋人君のイケメン顔が、目の前にあった。
「意識、飛ばしすぎだよ」
作った心配顔で秋人君に覗き込まれる。
「本当に大丈夫? 何か心配事あったら、言ってね。相談に乗るから」
王子春人君は本当に心配そうに見てくれる。
秋人君とは全然違う。
「ううん。ちょっと考え事してただけだから」
言うと、
「本当に心配事なら聞くからね」
と春人君。
優し〜〜。
そして心配してくれてる顔も美しい。
「本当に大丈夫。ありがとう」
もっとその美しい表情も見たいけど、春人君に心配かけてはいけない。
これは心を鬼にしよう。
ふんっと意気込む。
「なんだよ凛華ちゃん、春兄にはいい顔する〜」
秋人君は拗ねたように頬を膨らませた。
作っての顔だけど。
「そんなことないよ〜」
そう言いながら、私も作った笑顔で応戦すると、
「春人君、実はね凛華は昔から誰にも心配かけたくないからって、無理するところがあるの」
雪乃が隣で心配そうに私と春人君を見た。
え!? そうなの? 私、そうなの?
心配させたくないから我慢するタイプなの?
私、初耳なんですけど。
驚いて雪乃を見ると意味深に微笑まれた。
雪乃がこんな感じに微笑む時は、『がんばれ〜』と無茶振りをしてきた時。




