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逆行した悪女公爵は復讐を誓う  作者: 佐倉海斗
第二話 逆行後に手に入れた浮気の証拠

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03.公爵位を譲られる

 晩餐会後、アビゲイルはチャーリーの執務室に呼び出しをされていた。

 赤いドレスのまま、アビゲイルは執務室に向かう。


 邪魔をする使用人も陰口を叩く使用人もいない。すべて、チャーリーの手により解雇されたのだ。


「父上、失礼します」


 扉を三回叩いてから声をかける。


 中からは部屋に入るように声が聞こえた。


 執務室の中にいた執事に扉を開けられ、中に誘導される。


 アビゲイルがチャーリーの執務室に足を踏み入れたのは初めてのことだった。


「爵位を継承しようと思う」


 チャーリーは前置きなく本題に入る。


 ……早すぎるのではないでしょうか。


 逆行前は爵位継承の話は出ていなかった。気弱令嬢では公爵は重すぎるという判断を下されていたのだろう。


 メイドを解雇しただけである。


 そして、騎士団の騎士団長として権限を強引な方法で手に入れた。


 それだけのことで爵位を継承させられるとは考えていなかった。


「陛下には既に通告済みだ。あとはアビゲイルが了承すればいいだけだ」


 チャーリーの言葉にアビゲイルは目を見開いた。


 ……逃げ道は用意されていないじゃないですか!


 皇帝陛下に報告をされているというのは、実質、爵位継承を行うと宣言したようなものだ。そこにアビゲイルの意思はなかった。


 ……しかし、好都合です。


 公爵となれば動きやすい。


 復讐をするのに好都合だった。


「わたくしは公爵になりますわ」


 アビゲイルは同意をした。


 覚悟はできている。


 逆行前のような無様な死に方はごめんだった。


「バンフィールド公爵としてふさわしい悪女になってみせましょう」


「その言葉を忘れるな」


「はい、父上。しかし、15歳の公爵というのは異例のことではありませんの? 父上が公爵位を継いだのは18歳の時でしょう?」


 アビゲイルの言葉にチャーリーは頷いた。

 チャーリーが公爵位を継いだのはアビゲイルの祖父が戦死をしたからだ。


 公爵が生きている間に爵位継承を行うのは異例のことである。


「フィオナが公爵位を狙っている」


「知っています」


「マリアもそれに賛同している。黙らせるのにはアビゲイルが公爵になるしかない」


 チャーリーはすべてを理解しているのだろう。


 ……義母上はフィオナが大事ですもの。


 義母との仲は良好とは言えなかった。


 フィオナの言葉だけを信じている義母にはアビゲイルは嫌われている。


「父上はどうなさるつもりですか」


「王立騎士団の騎士団長として首都で暮らすつもりだ。マリアも連れて行く」


 チャーリーの言葉にアビゲイルは頷いた。


 義母が首都に行けば、アビゲイルの敵は公爵邸からいなくなる。公爵領と首都では距離があり、簡単には行き来をすることはできない。


 ……義母は反対をしないでしょう。


 公爵の後妻という立場に執着をしている。

 それがフィオナを守るためだと思っているかのようだった。


「フィオナを首都に連れて行くことはできない」


「わかっておりますわ。勘違いをさせないためでしょう」


「そうだ。公爵の監視下に置くのが、最適だ」


 チャーリーの言い分はわかる。


 首都の公爵邸に連れて行けば、自分が選ばれたのだと勘違いをするだろう。そのため、義母と引き離す形で公爵領の公爵邸に置いていくのだ。


 フィオナの味方はいない。


 フィオナを庇っていた使用人はすべて解雇された。


 残る使用人はバンフィールド公爵家の後継者を支持する者だけだ。それが正しい姿ともいえるだろう。


「公爵としてフィオナを利用せよ」


 チャーリーはフィオナの性格をわかっていた。


 泣き落としをして人々の心に入り込む。しかし、社交界をデビューするのは三年後だ。まだ社交界ではフィオナの毒に負けた者はいない。


 好都合だった。


「はい、父上」


 アビゲイルの復讐にはフィオナも含まれている。


 逆行前、フィオナが馬車に細工を命じたのだろう。アビゲイルをこの世から消すために施した行いにより、アビゲイルは三年前に戻ってきた。


 そのことをチャーリーは知っている。


 チャーリーでなければ逆行魔法は使えないからだ。


「父上」


 アビゲイルは頭を下げた。


「三年前に戻してくださり、感謝を申し上げます」


「……気づいていたのか」


「はい。例の魔法は父上にしか使えませんから」


 アビゲイルは涙を流した。


 逆行魔法の代償は術者の命だ。アビゲイルを救うため、チャーリーは自らの命を賭けたのだ。それがどうしようもなく、悲しかった。


「バンフィールド公爵家を途絶えさせることはいたしません」


 アビゲイルは宣言をした。


 それは次代の子を産むという宣言でもある。


「公爵としての義務を果たします。まだまだ若輩者ではありますが、父上のご指導の元、立派な公爵になってみせますわ」


 アビゲイルの言葉にチャーリーは笑った。


 ……父上の笑顔なんて珍しいことですわ。


 アビゲイルは感心した。


 チャーリーの笑顔はあまり見たことがない。いつも気難しい顔をしていた。それでも、アビゲイルの行動を諫めることはしなかった。


「公爵領のことは代理人に任せておけばいい。時間のある時に紹介しよう」


「はい」


「とりあえずの仕事は書類仕事だけだ。この執務室を譲ろう。わからないことは、すべて、執事長に聞けばいい」


 チャーリーの言葉にアビゲイルは頷いた。


 ……代理人の方には数回だけ会ったことがありますわね。


 公爵領を治めているのは代理人と呼ばれる人物だ。


 この国の貴族は自らの手で領地を治めることは少なく、多くは家族で首都の屋敷で暮らしている。


 公爵はやるべきことが多い。


 とても、公爵領の管理まで手を出せなかった。


 そこで信頼のおける人物を代理人として使っているのだ。代理人は基本的には別邸で仕事をしている。


「わかりましたわ」


 アビゲイルは返事をした。


 ……代理人は前執事長でしたわね。


 今の執事長は三十代だ。その前の執事長は代理人に抜擢されている。


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