【小話】洗い物中にて
いわてさんは泣きながら「すまない」と謝り続けた。それは娘に対する謝罪なのか、私達に対するものなのか分からなかった。
その後、私達は食事を続けた。気まずい雰囲気ではあったものの、次第に会話が弾み、空気が明るくなった。そして食事会を無事終えた。
その後、いわてさんは帰る支度をした。
「有難う、美味しかったよ」
いわてさんは私にそう言うと戸に手をかけた。私は帰宅しようとするいわてさんを呼び止めた。
「あの……また、一緒に料理をしてくれますか?」
私はいわてさんの顔色を伺いながら訊いた。いわてさんは無言のままだったが、やがて「そうだね……そうだね」と曖昧な返事をした。
その後、私は鬼神様、五色鬼と一緒に食器を洗った。私が洗って鬼神様が水気を拭いて、五色鬼が食器を片づける。そう役割分担をした。
「鬼神様、やっぱり私は余計なことをしてしまったんでしょうか?」
鬼神様は一瞬手を止めた。がすぐに手を動かした。
「どうだろな。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないな」
「うーん、そうですか……」
沈黙。
鬼神様はちらりと私を見て、「手を動かさないなら水を止めてくれ」と注意した。
「ただ、いわてはいずれああなっていたと思うぞ。がたがた言い訳して過去から逃げ回っていた、そのツケが今回って来たんだ。だから……要はあれだ。いわてに何があろうとお前のせいじゃない」
鬼神様は拭きあげた皿を五色鬼に渡した。
「ええっと……有難う、ございます?」
「どうした? 含みのあるような言い方だな」
「別に深い意味はないですよ。ただ、生贄の私にも対等に付き合ってくれるんだなあと」
「俺はな、村の住民と身内は何が何でも守ると決めている」
鬼神様は真面目な顔をしてそう言った。いつになく真剣だから私は黙って話を聞いた。
「あららぎ村の住民には飢えがなく、幸せに暮らしてもらう……そのために働くのが地主の責務だと俺は考えている。あららぎ村の住民とはあららぎ村に住んでいる者を指す。つまりお前もその中に含まれる。お前が俺の料理人である限り、お前はあららぎ村の住民だ。だからお前を蔑ろにするわけにはいかない。そうしないと俺の生き方に反する」
鬼神様はそう言って皿を拭いた。
「鬼神様は真面目ですね」
「真面目じゃねえよ。地主として当然のことだ」
「それを真面目というのです」
私は笑ってそう言った。




