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サバの塩焼き定食 二

 他人と食事をするのはいつぶりだろうか。しかも自分が作ったものが食卓に並ぶなど。

「皆さん先に食べててください。私は後でいただきますので」

「そう言わないで面を外して食卓を囲もうじゃないかい」

 私は居間の隅で突っ立っている嘉穂を食事に誘った。嘉穂は戸惑った様子で首を振り「いやあ、私はちょっと……」などとはぐらかしていた。

「別に取って食おうというわけじゃない。だから座って顔を見せておくれ」

 すると嘉穂はしばし固まっていたが、ゆっくり席に着いて面を外した。

「気づいていたんですか?」

「ああ。繁名が苗字で嘉穂が名前だろ? 元は人間だったからね、察しがついたのさ」

「なるほど……」

「齢はいくつだい?」

「十七です」

「私の娘と同じか」

「娘、ですか?」

「ああ、そうだよ。おっと。話をしすぎてしまったね。食事にしよう」

 私は手を合わせた。嘉穂達も手を合わせて「いただきます」と唱えた。

 まずは嘉穂の作っただし巻き玉子から。箸を入れて一口分に切り分ける。ふっくらとしただし巻き玉子は簡単に崩れ、きめ細かな気泡が露わになる。私は切り取った玉子を口に入れた。

「うん……美味しいよ。優しい甘みと出汁の旨みが体に染みるね。それでいて玉子のコクもきちんと残っている。落ち着くよ」

「有難うございます! いわてさんのサバの塩焼きも美味しいです! 程よく塩が効いていて、身もしっとりしてて。うん、ご飯にもよく合います」

「嬉しいじゃないか。口に合って良かったよ。漬物も美味い。塩と砂糖だけでも十分美味しいんだけど、昆布茶が加わるだけで旨みが段違いだね」

 私は何度も頷いた。嘉穂の仕事の丁寧さに感服したのである。

「ばっちゃんの魚旨い」

「旨い、旨い」

「また作って~、ばっちゃん」

 五色鬼達は思い思いにしゃべる。

「そうだね……機会があればね」

 そう返事をすると五色鬼は声を上げて喜んだ。ハイタッチもしている。あ、嘉穂ともしてる。

「嘉穂、何故、私と料理をしようと思ったんだい?」

 五色鬼とはしゃいでいた嘉穂は姿勢を正してこちらに向き直った。

「はい。私、いわてさんの助けになりたいと思ったんです」

「ほう?」

「いわてさん、料理好きですよね? なのにできないっていうのはとても辛いことだと思うんです。だから、その……身勝手なのは十分承知の上ですが、一緒に料理をして、それがきっかけでまたできるようになれればなと思って……」

 嘉穂は背を丸くして恐る恐る言葉を紡いだ。

 ああ、この子は優しい子なんだ。こんな不気味な世界にほっぽり出されて不気味な奴らに囲まれて、それでも他人を助けたいってかい。それなら私もそれに答えないとあまりにも不義だ。

「嘉穂、私を助けたいと言ったかい?」

「はい」

「なら一つ、私の話を聞いておくれ。まだ私が人だった頃の、遠い遠い昔の話を」

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