正月準備 五
十二月二十九日となった。
五色鬼達は今日も神事の稽古に励んでいる。私は相変わらず時間を持て余していたため、その様子を眺めていた。正月まで時間がないためか、かなり気合いが入っている。ひと段落つく度に五人集まって何かを話している。反省会か何かしているのかなあと思った。折角頑張っているので何か作ってあげたい。甘い物を作ってあげよ。
早速準備に取り掛かる。サツマイモを一本、アルミホイルに包んでトースターに入れる。本来は電子レンジで温めてするところだけれど、ないので仕方がない。茹でて火を通すと甘みが水に溶けてしまう。だから今回は時間はかかるけれど、トースターを使う。柔らかくなったら熱いうちに皮を剥ぎ、ボウルに移してマッシャーで潰していく。細かくしたら牛乳、生クリームを加え、滑らかになるまでゴムベラで混ぜていく。出来上がったらサツマイモのような形にして一つずつ掌サイズ程に切ったアルミホイルに置いていく。このとき表面を滑らかにしておくと綺麗な焼き色をつけることができる。後はこれに卵黄をスプーンで塗ってトースターに入れて良い感じの焼き色をつけたら完成である。トースターを開けるとふわっとサツマイモの甘い香りが広がる。てらてらとした表面には綺麗な焼き色が刻まれており、見ただけでその香ばしさが伝わってくる。まだ昼にもなってないのにお腹がすいてくる。けれどこれはあくまで五色鬼達に作ったもの、私が食べるようではない……のだけれど!
一つくらいならいいよね?
……と思ったけれど。一つ取ったら九個になるんじゃないか? ああ、これは……五で割れなくなっちゃうね。まあ、私が五つ食べれば数が合うけれど。私が一番多く食べてどうするんだ?
結局、ぐっとこらえて五色鬼達の所へ運んだ。五色鬼達は私を見つけるや否や一目散に寄ってきた。
「スイートポテトです。一人二個ずつですね」
わーい、と五色鬼は跳んだり舞ったりするとスイートポテトを手に取った。「うまうま」と言いながら、もしょもしょと頬張る。笑顔でそんなことされると、うん、すごく癒される。我慢して良かった。
午後からは鬼神様と一緒に禰々子さんの舟で彩り市場へ向かった。いわてさんとの食事会の材料を買いに行くのである。
「いわてには三十日の昼に屋敷にくるように話をした」
舟に乗っている間、鬼神様はそう言った。
彩り市場に着くと二人と分かれて買い物をした。
「俺は餅搗きの道具を揃えるから嘉穂は明日の準備でもしておけ」
「餅搗きですか?」
「ああ、毎年大晦日の朝にやるんだ」
おお、毎年恒例なんだ。
それから私はメニューを考えながらうろうろした。食事会は定食のようなものが良い。味噌汁、ご飯、漬物は確定としてメインのおかずは何にしようか。できるだけシンプルなものにしよう。そしてやはり和食、だよなあ。となると
「焼き魚にしよう」
鮮魚コーナーに行ってみる。ビニール袋に包まれた魚の切り身がずらりと並んでいた。
「鯖、いいなあ」
鯖にしよう。焼き魚と言えばやっぱり鯖である。ちょうど二枚卸しにされているものがある。あとは数……一、二、三……七、八。うん、ある。
それから漬物の材料として昆布茶の素を。って、うわ、たっか。最近知ったのだけれど、現世からの輸入(?)品だと高いらしい。そおっと入れておこう、そおっと。あ、卵も買おう。あとは鬼神様と合流してっと。
辺りを見渡すと鬼神様が店の入り口付近にいた。禰々子さんもいる。
「こちらは終わりました。鬼神様達はどうですか?」
「ああ、俺達はもう買って舟に積み込んだ。そっちの買い物はそれだけでいいんだな?」
「はい、大丈夫です」
そうして私の分の会計を済ませた。船着場に向かうと鬼神様のいう通り、舟に荷物が両端にバランス良く載っていた。穀類が入っていそうな紙袋が五つ、大きめのレジ袋が二つ。紙袋の方はもち米かな? レジ袋の方はなんだろう。
「もち米沢山買ったんですね。どれくらい買ったんですか?」
「一袋三貫だ」
「か、貫……?」
知らない単位が出てきた。
「一貫だいたい三.七五キロくらいだから三貫だと十一.二五キロだね~」
困惑している私に禰々子さんが優しく教えてくれた。
「ということは五袋で……五十六キロちょっとくらいあるんですね」
わあ、結構搗くんだなあ。
「後は龍神様が何袋か持ってきてくれるよ」
わあ、かなり搗くんだなあ。
それから村に戻って禰々子さんの家に餅搗き用の荷物を下ろした。明日禰々子さん宅でもち米を洗うらしい。因みに私も途中から合流することになっている。
明日は忙しくなるなあ。よし、気合い入れていこう!




