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相談

「鬼神様、実はご相談がありまして……」

 食事を終え、洗い物を済ませた私は座卓を挟んで鬼神様と向かい合うようにして座った。

「えい」

「やっ」

「キャッキャッ」

五色鬼達は隅っこでカルタをしている。キャッキャッと声を上げたりパンと勢いよく畳を叩いたりしていた。私達と対照的だ。

「どうした? そんなに畏まって」

 鬼神様はそう言って手酌をした。コトンと酒器を置く音が小さく響いた。

「はい。単刀直入に言いますと、ここでいわてさんと料理をしたいので許可がほしいんです」

「急だな。何故やりたいんだ?」

「今日、いわてさんに会ったんです」

「……そうか。それがどうした?」

「食材を見ていました。真剣に、見ていました。ほかにも以前ここに来た際、包丁も綺麗に研がれていましたし、包丁捌きも見事なものでした。本当は料理が好きだと思うんです。でも、やれない事情があると思うんです。だから――」

「だからなんだ?」

 鬼神様は私の言葉に被せて言った。私は思わず「え?」と声を漏らした。鬼神様は構わず言葉を続ける。

「自分だったら解決できる……とでも思ってるのか? おごりだな」

「そ、それは……」

 ……それは最もだ。鈴鹿さんにも言われたじゃないか。『できることは何もない』と。だけれど、ずっとあのままだといわてさんがあまりにも不憫だ。キッチンが整っていて器具も揃えて手入れも上手で包丁捌きもお手の物。食材も見に来ていて手に取って……。何度も料理をしようとしてきたんだと思う。でも、できない。料理は得意だし、好きなんだと思う。でも、できない。


『嘉穂! 勝手なことしないで!』

『ごめんなさい、ごめんなさい。もうしませんので!! 痛い! 止めて!!』

『アハハ、ねえさんがまた犬の餌みたいなものを作ってる~』


 血の気が引いていく。腹の奥から胃液が逆上してきて吐き気がする。気分が悪くなり一瞬意識が遠くなる。

 私といわてさんを重ねるのは少し違う気がする。だけれど……それでも、あえて言いたい。

「私は自分が根本的な解決ができるとは思っていません。ただ苦しみを和らげてあげたいなと思ったんです。好きなことがやろうとしてもできないことはとても辛いことなんです。いわてさんが何を抱えているのかは知りません。ですが、それでも私は少しでもいわてさんの力になりたいんです。だからお願いします」

 私は立ち上がって頭を下げた。部屋が一気に静まり返る。

「頭を上げて座れ」

 鬼神様が口を開く。私は顔を上げてゆっくり座った。

「いつやるんだ?」

「え?」

「いついわてを招くんだ?」

「ええっと……これは……許可が下りたと考えてよろしいんですかね?」

「ああ、だからいわてをいつ呼ぶか訊いている」

「いきなりいつやるか訊かれても困りますよ。許可も下りたのかよく分からなかったし」

「嘉穂だっていきなり相談してきたじゃないか。それにそんなに重々しく相談してくんなよ」

「だって……」

「気軽に相談しろよ。棚の相談してきたみたいによ」

 鬼神様はそう言って酒をあおった。

 気軽に相談していいって言われると安心感があるなあ。ちょっと我が儘言ってみようかな。私は勢いよく右手を上げた。

「鬼神様! 相談です!」

「なんだ、言ってみろ」

「棚の件でs」

「駄目だ」

「何ですかああ!!!???」


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