【小話】芋けんぴ
鬼の居ぬ間に、というわけではないけれど、鬼神様が酔ってはできない仕事に行っている間、何だかお腹がすいてきたので、何か作ろう。常備菜をつまむのも良いけれど、甘いものが食べたい気分である。しかも簡単にできるものが良い。
手持ちにある甘いものと言えばサツマイモ。スイートポテトが定番中の定番。だけれど、少々手間である。だから今回は芋けんぴを作っていく。せっかくなので多めに作って鬼神様にも食べてもらおう。
芋けんぴはとても簡単。まずサツマイモを細く切って水にさらす。鍋に油を引いて百八十度まで熱し、水気を切ってサツマイモがカリッとするまで揚げていく。そしてフライパンに砂糖と水を加えて煮詰め、キツネ色になったらサツマイモを加える。さっと絡めたら完成だ。後はこれを深めの皿に入れる。
「朱ちゃん、藍歌ちゃん、花葉さん、素々君、玄治君。芋けんぴができました。みんなで食べましょう!」
最近、着物の色以外で五色鬼の見分けがつくようになった。どこがどう違うと言われると説明しにくいけれど……強いて言うなら雰囲気……だろうか?兎に角見分けがつくようになったので、時折こうして個々の名前を呼んでいる。
名前を呼ばれた五色鬼達は「わー」と歓声を上げながら五色鬼が駆け寄ってくる。私は皿の中身を見せた。
「芋けんぴです」
「芋ぴっぴ」
「芋けんぴです」
「芋ぴっぴ」
「芋けんぴです」
「芋ぴっぴ」
「芋けんぴです」
「芋ぴっぴ」
「芋けんぴです」
「芋ぴっぴ」
「もう芋ぴっぴでいいです」
今日からここではこれは芋ぴっぴになりました。
私は芋ぴっぴを居間まで運んでみんなで食べた。芋ぴっぴはさくさくとした食感で砂糖がサツマイモの甘みを引き立てて素材の味をしっかり堪能できる。軽くて食べやすくついつい手が伸びてしまう。
五色鬼もぱりぱりと芋ぴっぴを食べている。「うまうま」と嬉しそうに話す。それを見ると私も嬉しくなる。作って良かったと思う。
「また、作りますからね」
そういうと五色鬼は飛んで跳ねて喜んだ。これからも深夜に色々食べていこうね!




