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リンゴのシチュー 二

 何とも名状し難い料理だ。液体とも固体とも言いようのない汁にゴロゴロとした具材が沈んでいる。

 しかし、色合いは悪くない。真っ白な液体に黄、赤、茶がよく映える。得体は知れないが、妙に美味しそうに見える。香りも玉ねぎの香ばしい匂いとチーズの優しい匂いが心地良い。

 早速匙で鶏肉を掬い口に運ぶ。


 ん、おお?


 これは面白い。適度にねっとり感があり、舌をゆっくり撫でながら、喉を通っていく。チーズの塩味と牛乳のコク、玉ねぎの香ばしい旨みが凝縮されている。鶏肉も柔らかい。程よい脂がじゅわっと溢れ出す。

 次は林檎りんごを掬う。これを一気に放り込む。酸味の強かった林檎が仄かに甘みが増している。この甘みと酸味が少々塩気のあるシチューによく合う。野菜も程よく柔らかい。

「旨いな。林檎が中々合う」

「でしょう? あ、ブリ大根も食べてください。一日置いた鰤大根が味がよく染みて美味しいんですよ」

 俺は鰤大根の盛られた皿を一瞥。大根が琥珀を幾重にも重ねたような色合いをしている。鰤もそれに負けず劣らず、煮汁を存分に吸い上げ、自身の体を色濃くしていた。先日と明らかに見栄えが違う。

まず大根を頂く。一口大に切って口に運ぶ。簡単に箸が入る。


おお、これは!


 以前と比べて、味が更に染みている。ほろほろと口の中で解けるようになくなってしまう。こちらの方が美味い。鰤のあらも身が引き締まっており、程よい食べ応えと濃いめの煮汁が昨夜とは異なる味を作り出している。

「旨い。昨日のものとは全然違う」

「冷やすと煮汁をよく吸ってくれるんですよ。そして、食べる直前で温める、そうしないと脂が固まったままですからね」

「やけに作る量が多いと思ったら、二日分だったのかよ」

「そうですよ。沢山まとめて作る家庭は多いと思いますよ。明日のご飯を一品分作らなくていいですから」

「確かにそれは楽だ」

「因みにシチューも大量に作ることがあります。これはちょっと手を加えて違う料理にできるからなんですよ」

「ほかの料理?」

「ええ、グラタンやドリア。あとパスタに和えても美味しいかもしれません」

「聞き慣れん料理ばっかだな」

「でしたら作りましょう! 今回のシチューはチーズを主に使いましたが、お酒の代わりに白ワインを入れたり、醤油や味噌を少量入れたり、骨付き肉をじっくり煮込んで旨みを引き出したり……色んな味に作ることができますからね」

「おー」と小娘が拳を掲げると、それに続いて「おー」と五色鬼が言った。彼らの皿を見てみると、鰤大根よりもシチューの方が量が少なくなっている。よっぽどシチューが好みだったようだ。

「折角ですからみんなで好みの物を今度作ってみましょうよ。色々試して、ね?」

 五色鬼はシチューを気に入ったようで、乗り気である。

「まあ、お前の好きにすればいいだろう」

「ええ、いいんですか? 有難うございます!」

「だがな……鰤大根とシチューを食うと、口の中が凄まじいことになるな」

「いや、だから合わないって言いましたよね!!??」

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