カスス⑥ 帰宅
帰りはちょうど来ていたの行商人の馬車に乗せてもらおうと思った。
「お断りします。後ろはヴラークでしょう? 折角の商品がダメになってしまいます。あなた(カスス)だけならいいですよ」
「この人たちは盗りませんよ? 俺が保証します」
「あなたは新鮮な食材と腐った食材を一緒の所に置くのですか?」
にこやかに言われた。
ウィークスが「あなたは馬車で帰ってください。俺らは歩いて行きます」と言い、他四人も頷いた。だが、そう言われた引き下がるカススではない。
「じゃあ、銀貨10枚渡すので馬車を見せていただけませんか?」
行商人からすれば1ヶ月分に相当する額だ。断る理由はないため快く馬車を見せてくれた。
ウロウロと時間にして10分、満足したカススは行商人にお礼を言った。
「さて、ちょっと待っててくださいね」
カススは村の中に戻ると木材と釘、防水性の高い布を買って戻ってきた。
「乗せてくれないなら作ればいいんですよ」
そう言って作業を始めた。テキパキと六人で作業をし、およそ三時間程度で完成した。辺りは暗くなり始めている。
「道があるとはいえ今から森に入るのは危険なんですけど、早くこんなとこでたいですよね?」
「……正直。でも、夜行性の動物が起きだすこの時間は一番危険ですよ?」
「認知されるから危険なんです。なら認知をされなければ良いんですよ」
アイテムボックスから墨を取り出すと幌に隠蔽魔法の陣を描く。
「砕かれた魔石が入っている特殊な墨なので街に着くまで効果があるはずです」
カススに促された馬車に乗り込もうとした五人は驚いた。
「布団がひいてある……」
「木のままだと身体が痛くなっちゃいますからね。あまり高い物ではないですが藁よりは寝心地は良いはずですよ」
「あ……いや……」
「さ、早く乗ってください。出発しましょう」
乗るのを渋っているので手早く風魔法で持ち上げて乗せた。
カススは前に回って本来は馬がいる所に来た。身体強化をかけて力を込めるとゆっくりと動き出した。
馬車+五人なら軽くても400kgぐらいだろうか。車輪の力もあるとはいえ、それだけを一人で動かせるのは、さすが身体強化と言わざるを得ない。
辺りが完全に暗くなってもカススは歩くのを止めなかった。
「代わりますよ」
「大丈夫ですよ。それよりもアルデーアさんもお休みなってください。俺も疲れたら休みますから。それに街に着いたら忙しくなりますから英気を養っておいてください」
「でも……」
「なら少し話し相手になってくれませんか?」
それなら、とアルデーアは御者の位置に座った。
カススはこれからの仮定の話をした。アルデーアは終始信じられないという顔で聴いたと思う。
時刻にしておそらく三時頃、カススはやっと休むことにした。もう魔力が尽きそうだからだ。
馬車の開いているスペースにお邪魔する。
身体強化は無理やり筋力を底上げしているので長いこと使用していると、翌日酷い筋肉痛になる。それで動けなくなるのは困るのでヒールポーションを飲んでから寝た。これで筋肉痛になっても動けなくなるほど酷くはならないだろう。
翌日からは時々休みを挟みなら進んだ。それでだろうか街まで一週間以上かかってしまった。太陽がほぼ真上にある。
いそいそと馬車をアイテムボックスに閉まってギルドに向かう。
扉を開けると、受注処理をしてくれた受付嬢が駆け寄って来た。
「おかえりなさいカススさん!」
「ただいま、ニーニャさん。遅くなりました」
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