カスス③ 報酬
「では始めましょうか」
一回目、三人とも数が違った。カススも数えるとアルデーアと同じだった。
アルデーア銅貨1枚獲得
二回目、ウィークス・アルデーアが同じ数。だがドルフが合っていた。
ドルフ銅貨1枚獲得
三回目、またしても三人とも違う数。結果ウィークス正解。銅貨1枚獲得
八回目からは慣れてきたのか全員正解が増えてきたためスピード勝負にした。
三時間ほどこんなことを繰り返し、結果57回中ドルフ21回・アルデーア16回・ウィークス20回になった。
アグロスビートルは袋に詰めて村長宅に持って行った。
「アグロスビートル506,752匹です。ご確認お願いします」
「ご苦労様です。こちら、報酬になります」
村長は抱えるほど大きな麻袋を机に置いた。
「ありがとうございます」
袋を開けて確認すると、銅貨と大銅貨しかなくカリキュルで数えると銅貨換算で7000枚しかなかった。
「かなりケチりましたね」
「安く済ましていいと言ったのはあなたでしょう」
ニッコリと村長は笑った。
「にしても1500枚はケチりすぎでは?」
「栄えているよう見えて割と貧乏なのですよ」
「ま、ケチられても報酬貰えれば文句は言いませんけど」
でも、とカススは麻袋を閉じながら言った。
「でも床下の帳簿からして、もう1000枚はくれてもいいんじゃないですかね」
よいしょ、と麻袋を肩に担いで村長の家を後にした。
家の前で待っているように言った三人を連れて、報酬が数えやすいように平らな所を探したが、柵ぐらいしかなかった。
柵を挟んで向きあってから改めて袋の中身を確認した。
ほとんど銅貨で、大銅貨は数十枚しかなかった。
一旦麻袋を置いておくとして、アイテムボックスから財布を取り出した。
「ではまず固定の大銅貨57枚ですね。すごい量になるのでまとめちゃいましょう」
三人の前にそれぞれ銀貨5枚大銅貨7枚の山を作る。
「日当の銀貨1枚、と」
銀貨の山に一枚ずつ重ねる。
「えーっとドルフさんが21回ですから大銅貨2枚銅貨1枚ですね」
固定報酬・日当の山とは別に山を重ねる。
「アルデーアさんが16回ですから大銅貨1枚と銅貨6枚」
同じくアルデーアの前に別の山を作る。
「で、ウィークスさんが20回の大銅貨二枚です」
最後にウィークスの前に別の山を作る。
それぞれの報酬を見た三人は「こんな大金見たことない」と子供のようにはしゃいでいる。
「すみません、これ残りです」
自分の取り分を計算していたら村長が袋を持ってきた。
中身を確認すると銀貨が20枚入っている。
「多いですよ」
「いえいえ、こんな田舎まで来てくださったんですから。多少色、を」
話しながら村長の目線が柵の上の硬貨に移る。
「もしかしてこんな奴らにこんなに支払われたんですか?」
村長は心底不思議そうな顔をしている。
「お貸りしたとはいえ、今の彼らの雇い主は俺です。雇い主が従業員に給料を払って何か問題が?」
「私が驚いているのは渡した額です。今は月末ですから、こいつらなんかは銅貨を5枚も与えとけば十分ですよ。大銅貨なんてもったいない、銀貨なんてもってのほかです」
といって彼らの報酬を持ってきた銀貨と一緒の麻袋に入れる。ついでに銅貨15枚を出すと地面に捨てた。
「ほら、お前らの金だ。払ってやるだけありがたいと思え」
三人はまたもどこか納得した様子で拾おうとしている。
カススはため息をつくと、風魔法で三人より早く地面の銅貨を回収した。
「俺が払った報酬を勝手に減らさないでいただきたい」
袋に戻った銅貨はチャリチャリッと心地よい音をたてた。
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