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イーリス①

主人公くんの日常です

ここは街と街を繋ぐ街道の横にある森の奥。そこに男が一人。左手にはかなり分厚いビブロスをもっている。

「『ランド』」

男が地面に向かって土魔法を放つと1m×1.5mの囲いが出来た。

「『ファイア』」

囲いの中を火炎放射で丁寧に焼く。その間に頭上で水球を熱する。十分に焼けると水球を囲いに入れた。水の量はちょうど良く、囲いに浸透する様子もない。

「我ながらいい出来だな」

自分の仕事に会心の笑みを浮かべる。というか今まで数えきれないほど作っているため慣れたものである。

土魔法で自分ごと囲うと海パンに着替える。

ざっと身体を流してから入る。

「つああああ、気ん持ちい。やっぱ人間、風呂だよなあ」

大量に水を使い、火の魔石もかなり使う風呂は裕福な証だが、この男からすればどうと言うことはない。

壁にもたれて息を吐く。湯に入っている時だけは嫌なことを忘れていられる。

「……今日はゆっくりさせてくれないのね」

だるいなあとひとりごちた後、湯からでた。

既にわかっていると思うが先程述べた六属性持ちは彼、イーリス・ノワルーナのことだ。彼は六属性持ちだと世間に知られてからは色々な方面から狙われるようになった。

有属性魔法が使いたい上流階級のバカ、その知識を人類に分配するべきだと言う政府、六属性全てを使えるなんてきっと神の遣いに違いないというイカれた宗教組織などなど。自分以外が敵と言っても決して過言ではない。

「さあて今回はどれかな?」


目隠しとして建てた壁から出ると白い服と白いマントを着た人間が十人程いた。

「なんだ、その格好」

イーリスはそのまま出てきたため海パン状態だ。

「見りゃわかるだろ。絶賛入浴中だったんだよ」

入浴中と違うのは右眼に眼帯をつけていることだ。

「湯冷めする前にさっさとやろうぜ」

イーリスはビブロスを取り出す。

「舐めたことを……」

「舐めてるのはどっちだよ。俺相手に十人で魔書持ちは二人。それで敵うとでも?」

「黙れ! 今日こそお前を捕らえる!」

白服白マントの集団は国直属の警備組織・スイーシクだ。

「国王の名の下、ヴラーク イーリス、等級ネグロ(最上級) 捕獲作戦を実行する!」

「さあて今回は何分もつかなあ」

イーリスは風魔法で身体を浮かせ、大樹の枝の上に移動した。

戦闘は高所が有利だ。

「射撃部隊、構え!」

五人が赤色(ファイア)の魔石を構える。魔力を込めると魔石内の陣が発動した。直系一センチほどの火球が連続して当たる。一分もすると、枝はバキバキと音を立てて折れた。共に落ちたイーリスは空中で姿勢を整えて難なく着地した。

「自然は大切にしろよ。この樹とか樹齢何年だよ。あっさり折っちゃってかわいそー」

「樹なんざまた植えればいい!」

スイーシクは全員全員丸い物持っている。丸からは何やら紐が出ている。

「わっかりやすい物だしてきたな。『ファイア』」

丸い物は考えるわけでもなく爆弾だ。イーリスは器用に導火線にだけ火をつけた。

いきなり点火し焦ったのかヤケクソで投げてきた。

「ハハッ、もったいな」

イーリスにとって火が付いた爆弾など避けるまでもない。水魔法で壁を作るとな中で消えてそのまま落下した。

「そっちからしたら貴重な戦力だろうに」

笑いながらただのオブジェと化した爆弾を蹴った。

隙有とばかりに一人が殴りかかってくる。軽々避けて気がついた。相手の身体の周りをうっすらと白いオーラが覆っている。

「お得意のバフか。ニヒツでもバフかければ戦力になるもんな」

イーリスも同じく白いオーラーーー身体強化を使った。

「案ずるな! ヴラークの奴より我らフスティーヤのバフのほうが強い効果がある!」

隊長含めた数人と組み手を始めて五分、スイーシク全員の顔には明らかに焦りが浮かんでいた。

「(隻眼隻腕でなんという反応速度だ……)」

右眼は眼帯、左手はビブロスで塞がっているのに、組み手は流すか避け、魔法も避けるか相殺している。魔法は資格から放たれているのにも関わらず、だ。

「(しかもビブロスを持った手で難なく発動してやがる)」

通常有属性魔法はビブロスを持っていない手で陣を組み、魔力をこねて発動する。しかし、イーリスはビブロスを持っている手で一連の動作をしている。

普通そんなことをすれば、陣が安定しなかったり、通常より魔力を多く消費したり、とマイナス面が目立つため進んでやる奴はいない。

だが、イーリスは魔力の方はわからないが少なくとも陣が不安定になっているようには見えない。

「(くそ……どうしたら……)」

隊長が苦虫を噛み潰したような顔で次の策を考えていると、イーリスは先ほど枝を折られた大樹の幹に飛び移った。

魔法も投敵武器もギリギリ射程外だ。

「貴様! 降りてこい!」

「始める前に言ったけど俺、風呂入ってるんだわ」

「捕まればいくらでも風呂に入れてやるぞ」

「それ冷水だろ? 俺はあったかい風呂に入りてえの。あ、そうだ。隊長さんよ、例えばこんなのどうだ?」

そう言ってイーリスは火属性と土属性の魔力を掌でこね始めた。

鮮やかな赤色と黄色の魔力は渦を巻いて混ざり合い、やがてごぽごぽと音はたて始めた。

「……まさか」

イーリスがニッと笑うと、魔力の塊の正体を察したのか即時撤退の指示を出した。

身体強化でも使ったのかあっという間に遥か彼方だった。

「本当に投げるわけないのになあ」

塊の正体は即席の溶岩だ。それを浴槽に向かって投げると、じゅーっと冷める音がした。戦闘中に冷めた湯はこれで元の温度に戻っただろう。

「うう、さむ」

身震いを一つして浴槽に戻る。さっきので土埃が付いたので流してから入った。眼帯は服の上だ。冷めた身体に温かい湯が心地よい。

「スイーシクの奴ら、ホントに捕まえる気あるのか? フスティーヤ3のニヒツ7って。せめてリヴァルを一人くらい連れて来いよ」

フスティーヤは白い狼、ニヒツはクラゲ、ヴラークは黒い龍の紋章のことだ。

フスティーヤは他者へのバフが得意とされ、一番の当たり枠と言われている。

ニヒツは特に強いわけでもなく弱いわけでもない。特筆すべき点がなく一般的で、そして、どれだけ努力しても他二つに勝てないと言われている。

ヴラークはフスティーヤとは逆で自身へのバフが得意とされ、生まれながらにして犯罪者という理不尽を課せられる。

リヴァルは政府に雇われた(飼われた)ヴラークを指す。蛇の道は蛇、というわけだ。

「っつ……」

突然右眼に痛みが走った。思わず抑えた時には既に痛みは引いていた。

「無茶するなってことかな? はは、アレくらい許してよ」

そういうイーリスの右眼は七色に輝いていた。

お読みいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします

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