よくある魔法がある世界
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この世界の人間は三つのモノを持って生まれる。
一つ目は紋章。
紋章は決まって首の左側に現れ柄は三つある。そしてその柄によって人生のカーストが確定される。なぜ、そんなカーストが存在するのか、それは古くから伝わる二つの説からきている。
説① 今世の紋章は前世の行いによって決まる
説② 紋章は魂に刻まれたもの故に魂が同一である限り変わらない
説があるからといってカーストなどは生まれないだろう、という考えもあるだろう。しかし、こうなった理由もちゃんとあるのだ。
黒い龍の紋章は歴史的な犯罪者になった。誰彼かまわず己の気の向くまま殺して殺しつくした。
白い狼の紋章は歴史的な政治家で世界を変えた。新しい法律、新しい施設、その時代の人間は考えもしなかった新しい出来事をした。
透明な、いうより縁取りだけされているクラゲの紋章は何の変哲もない生活を送った。
説と歴史が合わさりカーストが生まれたのだ。
二つ目は本。
といっても、母体から赤子と一緒に出てくるわけではない。生まれた後、いつの間にか傍にあるのだ。
本は「魂の本」と称され、端的にビブロスと呼ばれる。本の中身は絵本か児童書か小説か、はたまた学術書か。大抵は物語や既知の知識などが書かれている。だが、稀に物語でも知識でもないものを持って生まれる者がいる。中は古代言語で書かれており、言語以外にも多様な図形が組み合わされた真円が描かれている。
言語の書かれ方からして文章で、その文章は真円の説明なのはわかるがそれ以上はわからない。なのに、持ち主は現代の言語を覚えていくのと同時に読み始める。まるで初めから知っているかのようにスラスラと。
三つめは魔力。
この世界では日常的に魔法を使っている。身体強化に重さ軽減など一般的に生活魔法と呼ばれる無属性魔法は自身で詠唱したり、魔道具を使って発動したりする。
無属性魔法は魔力さえあれば発動できる。消費魔力も少ない。しかし、火や水なのどの有属性魔法の消費魔力は無属性魔法の比ではない。一般人が有属性魔法を発動しようとするならば、魔力が枯渇した上に発動できないか、発動できたとしても百分の一程度の威力しかない。
真円が描かれているビブロスーーー魔書持ちは有属性と無属性が使える。つまり最低でも二属性の魔法が使える。魔書持ちの誕生を大人は口を揃えて奇跡と言う。
しかし、ある人物は微塵もそう思っていない。奇跡と言われるほど魔書持ちは少ない。それに大抵は火・水・土・風のうち一属性だけだが、その人物は先の四属性に加えて闇と光の六属性を持って生まれた。無論無属性も使える。ここまでくると奇跡というよりも呪いと言ったほうがしっくりくる。少なくともその人物はそう思っている。
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