ー第7話上横町商店街
ロケバスで入る予定だったが、電車で高崎駅に降り歩きたいと云う香澄の要望を、三上は受け入れた。
10年振りの高崎駅前は、音楽の街になっていた。あちこちに、ギターを弾くパフォーマーと、取り巻く円が出来ている。
屋台が出て、人も多い。高崎市が「カスミ聖地事業」を立ち上げて盛り上がっているのだ。
県警が囲んでくれて、シンフォニーロードを歩く。道端に鍋を置いて、楽器も無く歌っている人々が居る。
「この人達?」
「物乞いだ。この国は、税金を国民の為に使わない」
上横町商店街と書いたアーチが見えた。
ものすごい人だ。ギターを弾くパフォーマーや物乞いも居る。
「シャッター閉まってない」
「ここは香澄の聖地になったからね」
香澄はミノワ肉店を見つけて走った。
綺麗に改装された店内のショーケースの向こうに、おばさんと、車椅子に乗ったおじさんが居た。
「お帰り。香澄ちゃん」
おばさんが車椅子を押して出て来た。
「箕輪さん、やっぱり死ななかったんだ!」
「後遺症で歩けないがね。コロッケの仕込みは出来る」
箕輪さんはコロッケの袋を香澄に差し出した。
「うそっ?コロッケ!」
「揚げたてだから、やけどしないように」
「一緒に行って下さい」
箕輪さんの車椅子を押して、香澄は坂を登り始めた。市電監督がハンディカムで撮っている。
上横町商店街の果てに、夕焼けが見える。