ー第6話ヘッドライナー
店からもビルからも出られなくなった。
裏でチャームを用意したり、コノヨル師匠の賄いを作ったりの日々になった。
三上は時々様子を見にくる。
「これからどうする?ずっと居ても構わない」
コノヨル師匠はスカジャンに白いデニムにスニーカーでちょい悪オヤジと云う感じだ。
「もう決まってますよね?マネージャー」
香澄は三上に言った。
「過酷だ。殺されるかもしれない」
三上は香澄を見返す。
「弟子の千と三郎を付けます」
コノヨル師匠の言葉に三上が言った。
「そこまでお世話に成れない」
コノヨル師匠は手で制した。
「いやね。この二人ね。腕ップシは、毛唐なんかに負けないし、頭の回転も早い。でもね、魂がない。三上さんと香澄さんに有るような。それをお二人に学ばせていただきたい。お願いします」
コノヨル師匠は頭を下げた。
1ヶ月準備して、スーツケースでビルを脱出し、ラスベガスに飛んだ。
千と三郎には、数えきれない程命を救われた。三上はラスベガスで人脈造りに励み。5年目で香澄をステージの前座に上げた。そこから5年で、香澄はヘッドライナーにメイクされた。
その袖で待機する香澄は三上に言った。
「次。したい事あります」
「上横町か?」
香澄は驚いて振り返った。
「MVを撮る。上横町商店街で。監督は市電さん。日本に戻って、準備に3ヵ月」
「どうして?それを知ってるんです?」
三上はニヤリとした。
「僕を誰だと思ってる?ヘッドライナーカスミのマネだぜ?」
香澄は狼狽えた。
「それはそうだけど。何で監督の名前まで知ってるの?」
「検索履歴だ。ノートパソコンを見ながら寝落ちするのは、うかつだ」
「えっ?ひどい!人のパソコン見たの?最低!」
影アナが香澄の名前を告げた。
香澄は三上を睨み付けながらステージに出て行った。三上は指差して大笑いして送り出した。