レベル7 そして伝説へ……
「……いや、ほんとごめん」
魔王はオレたちの前で恐縮しながらお詫びしていた。
「まさかクライマックスの最大の見せ場でセリフを噛むとは思わなかった……。ほんとゴメン」
そう言って土下座までする魔王。
いや、別にそこはそんなに気にしてないんだけど。
アキレウスもアレル殿下も「セリフを噛むなんて誰だってあることさ! 気にすんな!」って慰めてるし。
人間に慰められる魔王ってどうなの?
でもそんな魔王にルシファーがプスプス笑いながら言った。
「さすが魔王様ですね。いついかなる時もわたくしの想像を超えてくれます」
「ルシファー、なんか笑ってない?」
「いえいえ! 魔王様をお笑いになるなど、言語道断! そんな不敬なことは決して……プスプス」
「笑ってるだろ!」
うん、笑ってるね。
「ですが魔王様、これだけは言わせてください」
「ん?」
「それが魔王様の良さであります」
「そ、そうか?」
「そうでございます。そこがいいのです」
「は、はっはっはっ。そうかそうか」
「まさに地獄の王、魔王様! そこにしびれる憧れるぅ!」
「はっはっはっ! 苦しゅうない苦しゅうない」
「よっ! 三文役者!」
「ぐわっはっはっは! 褒めてもなにも出んぞ」
三文役者は褒めてねーだろ。
目の前に現れた魔王は、想像していたよりもはるかにバカっぽかった。
「ルシファー」
見かねたミカエルさんが声をかけた。
「なんですか、ミカエル」
「ひとつ聞いてもいいですか?」
「わたくしとミカエルの仲です、どうぞなんでもお聞きください」
「もしかしてと思いますが……。あなたが魔界の調査から帰って来ない理由って……」
「おや、さすがミカエル。気づきましたか。そう、わたくしが魔界から帰らないのは、この魔王様の一挙手一投足が面白いからです!」
「バカかおのれは!!!!」
「ぐえ」
ミカエルさんの渾身の一撃がルシファーの脳髄に叩き込まれた。
メキョッといい音がした。
「仮にも! 天界の! 大天使が! 何をしてるんですか!」
だ、大丈夫だろうか。
ミカエルさんが単語を発する度にルシファーの頭が凹んでいってる。
これ、人間だったら死んでるよね?
「魔王が面白いから帰って来ないなどと聞いたことがありませんよ!」
「まあ、待ちなさい」
ルシファーはミカエルさんの攻撃をかわすと、凹んだ頭をさすりながら言った。
「ミカエル。考えてもごらんなさい。こんな魔王様と引きこもりニートの神様。仕えるならどちらがいいですか?」
「ん?」
その言葉にルシファーに殴りかかっていたミカエルさんの動きが止まった。
「片や毎日マッパで寝てて、昼間は働きもせずゲーム三昧のクソジジイ。片やイケメンで一挙手一投足が面白い魔王様、どちらがマシですか?」
「そりゃあんた……、魔王だわ!」
ミカエルさんが即答した。
ってか、神様ってニートなんだ……。
「でしょう? ですからわたくしは魔王様の側を離れないのでございます」
「なるほど、そう考えるとこの転職もありですね」
そう言って本気で考え込むミカエルさん。なんかよくわかんないけど、ミカエルさんの発言に天空の雲間から騒がしい声が聞こえてきた気がする。
その時、魔王がパン! と手を叩いた。
「さて! どうやら二人の仲違いも解決したみたいだし、人間どもよ。ここで余に提案がある」
魔王の言葉にみんなが身構える。
腐っても魔王。
もしかしたら「世界の半分をくれてやろう」とでも言うのだろうか。
そう思っていると、魔王は懐から一組のカードを出した。
「貴様らは知っておるか? ババ抜きというものを」
そう言って取り出したカードを器用な手つきでシャッフルし始める。
「バ、ババ抜き?」
「そうだ。順番にカードを取っていって、数字がそろったら場に出していくゲームだ」
いや、ババ抜きは知ってるけど……。
「そして最後、揃わなかったカードつまりババを持ってた者が負けという極めてシンプルなルールだが、騙し騙されるという奥深いゲームだ」
なにこの魔王。
ババ抜きのルールを得意気に説明し始めた。
「だから、余はやってみたい」
「……?」
「そんなババ抜きなるものを!!!!」
拳を握り締め、高々と叫ぶ魔王。
あ、このひとアホだ。と誰もが思ったことだろう。
そう、魔王が取り出したカードはトランプだったのである。
彼の言葉にルシファーが続く。
「魔王様! ババ抜きをやるのならこのルシファーもぜひ!」
「ルシファーがやるならわたくしも!」
彼らに負けじとアリスとアルフレド姉弟も声をあげる。
「ジェームズ、わたくしたちも負けてられませんわ! この挑戦、受けて立ちましょう!」
「アリスお嬢様がやられるのであれば、このジェームズもアルフレド様もお供いたしますぞ!」
「え、オレも!?」
そしてアルス殿下以下二名も手をあげた。
「まあ、魔王とババ抜きなんていい思い出になりそうだし、やってみてもいいかな」
「お! アルスおうずや気ッスね! ならあっしもやるっス!」
「ではこのバドロスもお供しましょう」
案の定、アキレウスとギョタロウも拳を握り締めて叫んだ。
「アレル、我らも負けてはおれん! 共に優勝を目指そうぞ!」
「ババ抜きといったらギョタロウ、ギョタロウといったらババ抜きと言われたオレの出番だな」
わいのわいのと騒ぐ彼らに、魔王は満面の笑みを浮かべた。
「おお、みなやってくれるか!」
正直ここまで来てババ抜きかよと思ったけれど、魔王の腑抜けた顔を見たらバカらしくなってきた。
「よーし、魔界一のババ抜き名人と言われた余の力、存分に見せてくれよう」
「我らも負けはせん!」
こうして、オレたちは魔王のリクエストでババ抜きをすることになるのだった。
「「「「覚悟しろよ、魔王!」」」」
こうして始まった魔王とのババ抜き最弱王決定戦。
オレたちの戦いはこれからだ!
おしまい
最後までお読みいただきありがとうございました。
そして毎日いいねポイントをつけてくださった方々、本当にありがとうございました。
こちらは数十年前に別サイトで投稿していた作品でしたが(現在非公開中)当時は誰にも読まれず、比喩でもなんでもなく事実としてPVがずーーーーっと0の作品でした(つくにはついたのですが、それは全部自分が開いたためのPV)
当然、いいねなどつくはずもなく、ずっとそれが当たり前と思っていたので、こうしていいねがつくだけですごく励みになりました。
本当にありがとうございました。
また機会があれば、過去の黒歴史集を引っ張り出して投稿していこうと思います。
いろいろと拙い部分が多かったですが、最後に一言。
楽しんで書くのが一番ですね!




