表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/37

レベル4 海の怪物クラーケンと自撮りする少女

「ヤローども! 武器を取れー!」

「あわわわわ」

「ひええええ」


 今、オレたちはてんやわんやしている。

 なぜなら、海の怪物クラーケンに襲われているからである。


 ギョタロウの指示のもと、船員たちはショートソードを装備して立ち向かっているが、本職は船乗り。

 海の怪物相手にまともに戦えるはずもなく、届かないショートソードをやたらめったら振り回しているだけだった。


 そうこうするうちに、クラーケンの足が船を包み込んできた。


「おのれ卑怯な! モンスターなら正々堂々海の中から出てきて我と戦えー!」


 アキレウスがオノを振りかざしながら叫ぶも、本体が海の中なのでなすすべがない。

 せいぜい船に絡みついて来る触手を斬るだけだ。

 こういう時、飛び道具を持つハンターとか魔法使いがいればいいんだけど……。


「こうなれば仕方ない。アレル、海に飛び込め!」

「え? 海に?」

「そうだ! おぬしが海に飛び込んだら、きっとこのモンスターはおぬしを食べるはずだ。そしたら彼奴きゃつの体内から攻撃するのだ」


 え、なにこの人。

 いきなり怖いこと言ってるんですけど……。


「え、遠慮しときます……」

「遠慮など不要! さあ、早く海に飛び込むのだ!」

「嫌だって」

「アレルは勇者だろう!」

「だったらアキレウスがやればいいじゃん」

「やりたくとも出来ぬのだ」

「なんで?」

「食べられたくないから」


 こ、こいつ……。

 自分が嫌がることを平気で人にやらせようとしてるよ……。




 その時、船室の中から例の姉弟と執事が姿を現した。

 ずいぶん前から船酔いで閉じこもってたみたいだけど、この騒ぎで起き出してきたようだ。


「何事ですの?」

「気を付けて。モンスターに襲われてるんだ」


 オレの言葉に金髪お嬢様アリスが「まあ!」と声をあげた。


「大きなイカ様! わたくし、こんな大きなイカ様なんて初めて見ました!」


 イカ様って……。


「見て見て、アルフレド! 大きなイカ様ですわ!」

「そ、そうだね、姉さん! でも今これって、襲われてる状態ってことだよね!?」


 アルフレドに言われてオレはコクコクと頷く。

 しかしアリスお嬢様はのほほんと答えた。


「こんなに大きなイカ様でしたら、どれだけの焼きイカが食べられるのでしょう」


 食べるのかよ……。


「姉さん、これモンスターだよ! 僕たち襲われてるの! わかって!」


 そして弟くんが必死にツッコんでいる。

 彼も頑張ってるんだね。なんか親近感わくわぁ。


「アリスお嬢様、アルフレド様、ここは危険です。まあ、船の上なのでどこも危険ですが、危険度の少なそうなエリアに避難しましょう」

「あ、ジェームズ」

「はい?」

「イエイ」


 パシャッとスマホで自撮りをするアリス。


「うふふ、いい写真が撮れましたわ」


 こ、この人、クラーケンに襲われてるのに優雅に自撮りしてるよ……。


「イカ様に襲われて慌てふためくジェームズと、それを呑気に眺めるわたくし。ああ、素敵」

「アリスお嬢様、今はそんなことをしてる場合では……」

「イエイ」


 パシャッ。


「うふふ、さらにいい画像が撮れました」


 ……や、やべーな、この人。

 顔は綺麗な人なのに、マジやべーな。

 弟くんも顔が引きつっちゃってるよ。


「とりあえずアリスお嬢様、アルフレド様。船の後ろのほうに避難してくだされ」


 ジェームズさんに引っ張られるような形で船の奥へと引っ込んでいく姉弟。



 さらにその時。


 船倉からM78星雲からやってきたという電波さんが現れた。

 ミカエルさんって言ったっけ?

 出航してからずっと船倉に閉じこもってたけど、クラーケンが現れて出てきたようだ。


「何事ですか?」

「お、姉ちゃん!」


 そんなミカエルさんを見て嬉々とするギョタロウ。


「見ての通り襲われてるんでさあ!」


 いや、そんな嬉しそうに言わないでよ。


「まさか。海の怪物クラーケンですか?」

「そう、海の怪物クラーケンだ。でも安心しな。姉ちゃんには指一本……いや、足一本……吸盤ひとつ触れさせねえぜ!」


 ……カッコよく言ったつもりだろうけど、全然カッコよくなかった。


「まあ見てな。この淡水・ギョタロウ。海に関しちゃスペシャリストだからよ! …………おえええ」


 海のスペシャリストは絶賛船酔い中のようです。

 もう不安しかないんですけど。


 そこへ電波女性ミカエルさんがゆっくりと前に出た。


「下がっててください、船長さん。この程度のモンスター、私の魔法で吹き飛ばしてご覧にいれますから」


 言うなりミカエルさんが杖のようなものを取り出した。

 そして何やらわからない言葉で詠唱を始める。

 するとミカエルさんの周りの空気が揺らぎ始めた。


 なんだろう。

 ただの電波さんかと思ったけど、けっこうすごい人なのかもしれない。



 と。



 ミカエルさんが杖をクラーケンに向けて魔法の言葉を発した。


「ロケットパーーーーンチ!!!!」


 瞬間。

 杖が巨大な拳に変わり、クラーケン目がけて飛んでいった。


 っていうか、あれは魔法なのか!?

 物理攻撃的な何かじゃないのか!?


「GYAAAAAAAーーーーーーー!!!!!」


 クラーケンはミカエルさんの放ったロケットパンチ(?)の直撃を受けて空の彼方へと飛んでいったのだった。


「海の藻屑となりなさい」


 いや、海の藻屑というより空にぶっ放してったんですけど……。


 何事もなかったかのように船倉に戻るミカエルさんを、オレたちはただ黙って見送るしかなかった。



つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ