レベル2 港の街のディスティニーな出会い系
「そもそも姉さん。船はモンスターがひっぱるものじゃないから。馬車とは違うんだよ」
「まあ、それは驚きでございます」
「世界は広いのでございますよ、アリスお嬢様」
突然失礼なことを言ってきた3人組は、さらに驚愕な会話をしていた。
驚きなのはこっちだ。
「ということで、船を出してください」
アリスという名の少女が最初にオレたちに「船は出せない」と言った船員に声をかけた。
何が「ということで」なんだろう。
「すいませんけど、船は出せません。この時期、海が荒れてるもんで」
当然、船員がきっぱりと断る。
「まあ! 船が出せませんの!?」
「ええ。この時期、偏西風の影響で海が大荒れになりますので誰も船は出さないんですよ」
「わたくしたち、人々の平和のためにここまできたのですよ!? それを、いまさら船が出せないというのはどういうことですの!?」
……どこかで聞いたセリフだ。
「はっはっはっ、バカな娘だな。アレルよ。出せないものは出せんのにな」
君も同じことを言っていたんでないかい?
「どしたい、カプチーノ? もめごとかい?」
「あ、ギョタロウさん!」
また出た……。
この人、ほんとは暇なんじゃないの?
「実はこの人たちが船に乗せろってうるさくて……」
「へ、なるほどな。おかのもんには海の怖さがわからねえってことか。悪いがこの時期、誰も船は出さねえ。なぜなら、偏西風の影響で海が大荒れになるからだ」
はい、それさっきも聞きました。
「そうなんですか。それでは仕方ありませんね」
なんでこの人が言うとみんな納得するんだろう。不思議だ。
「まあ、船に乗りたければ自分たちでイカダでも作るんだな。がっはっはっはっ」
「なるほど! ジェームズ、アルフレド。イカダを作りましょう!」
「いやいやいや、無理無理無理!」
「それは無謀ですぞ、アリスお嬢様!」
少女の提案にまわりの二人が慌てて止める。
ほんと、思考がアキレウスと一緒だよ。
「うぬぬぬ、これは負けてられんぞアレルよ! 我らも一刻も早くイカダを作らねば!」
なに対抗心燃やしてるんだよ。無理に決まってんじゃん。
「ギョタロウさん、大変だ!!」
その時、一人の船乗りが声をあげた。
「誰か空からパラシュートで降りてきやす! このままだと、風に流されて海に落ちますぜ」
「なに!」
空を見ると、風にあおられフラフラと一人の女性が降りてきていた。
遠目でよく見えないが、白いローブを羽織った長くてウェーブがかった青い髪の女性だ。
「すぐ小舟を出して落下予測地点に行きな! 海に落ちたらすぐに助けるんだ」
「へい!!」
小舟で出て行った船員たちはフラフラと漂うパラシュートに合わせて小舟を動かしていった。
こうやって見るとさすがは海の男たち。小舟の動きがたくみだ。
そうして、パラシュートの女性は1槽の小舟に降り立った。
「ようし、よくやった!!」
ギョタロウが大きな声を上げてガッツポーズを見せた。
「オレは海水が苦手だからな。海に落ちる前に助けられてよかったぜ」
淡水魚太郎は、名前の通りのようだ。
やがて、小舟に助けられた女性が船着き場へと届けられた。
「ふう、助かりました」
「い、いいってことよ」
陸に上がったその女性はものすごく綺麗な人だった。
艶のある青い長い髪。
切れ長のまつ毛、整ったあごに小さな唇。
つぶらな瞳がなんともまぶしい。
気のせいか、少し光り輝いて見える。
清楚、という言葉がまさにふさわしい女性だ。
他の船乗りたちも思わず見惚れていた。
「私はミカエルと申します。天界……じゃなくて、えーと、M78星雲からやって来ました」
電波きたーーー!!
きれいな顔した電波さん、きたーーーー!!
「ゴリアテ島に行く船を探しているのですが、船長さんはどちらにおりますか?」
「オ、オレが頭だぜ」
ずいっとギョタロウが前に出た。ハンサムな顔がゆでダコのように真っ赤だ。
わかりやすいな、この人。
「船長さん、助けていただいてありがとうございました」
「い、いいってことよ。こんな美人を助けられたら男冥利に尽きるってもんさ」
「助けていただいてなんですが、お願いがあります。ゴリアテ島まで行く船を出してはいただけないでしょうか」
この人もゴリアテ島に行きたいのか。
「姉ちゃん、すまねえな。悪いがこの時期、誰も船は出さねえ。なぜなら、偏西風の影響で海が大荒れになるからだ」
出た! お決まりのセリフ!
「出せないのですか?」
「うーん、出せなくもないが……」
出せなくもないんかい!
「なんとか、お願いできませんか?」
「よっしゃわかった! 美人の頼みを断ったとあらば、男がすたるってもんよ。出してやらあ!」
なに、そのアバウト感!?
海が荒れるから誰も出さないんじゃなかったの!?
「ありがとうございます」
「がははは、いいってことよ!!」
「よかったな、アレル。船が出るそうだ」
「よかったですわね、アルフレド。船が出るそうですわ」
アキレウスとアリスが同時に喜びの声をあげる。
いや、それよりも危険なんじゃないの?
大丈夫なの?
喜ぶ二人をしり目に、オレはものすごく不安だった。
つづく




