表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/37

レベル1 港の街のルーズな出会い系

 オレの名前はアレル。

 勇者アキレウスの友人だ。



 オレたちの旅の目的。それはゴリアテ島にいる魔王を倒すこと。



 そのためオレたちは今、港町ルーズベルトにいる。

 そこで船が出ているというのだ。



 しかし……。



「船が出せないとはどういうことだ!」



 鎧を身に着けた2メートル近い巨漢が大斧を振り回しながら叫んでいた。

 褐色の肌に黒い短髪。顔つきはまるでゴリラ。

 一見すると凶悪犯罪者の姿をしたこの男が、勇者アキレウスだ。


「オレたちは人々の平和のため、苦労してここまできたのだ! それを、いまさら渡航中止というのはどういうことだ! ああん?」


 アキレウスは大斧を船員に向けてすごんでいる。

 今、この船着き場の平和を乱そうとしているのはあきらかにお前だ。


「ですから、何度も言ってるでしょう。この時期、海が荒れて危険なんです。ゴリアテ島特有の偏西風が……」

「偏西風だか片頭痛だか知らんが、そこをなんとかするのが船乗りだろう!」


 あいかわらずの無茶ブリ。


「出せないものは出せません!」

「どしたい、カプチーノ? もめごとかい?」

「あ、ギョタロウさん!」


 船着き場での騒ぎを聞きつけてか、一人の水夫が現れた。

 アキレウスと並ぶほどの長身で、モデル体型のハンサムな男だ。


「実はこの人たちが、船に乗せろってうるさくて……」


 え!?

 オレも含まれてる!?

 なんで!?


「なるほどな。おかのもんには海の怖さがわからねえってことか。悪いがこの時期、誰も船は出さねえ。なぜなら、偏西風の影響で海が大荒れになるからだ」

「そうか、ならば仕方あるまい」


 まったく同じことをそこの船員さんも言っていたのに。


「まあ、船に乗りたければ自分たちでイカダでも作るんだな。がっはっはっはっ」


 そう笑いながら水夫は去って行った。


「さすがっす、ギョタロウさん! さすが荒くれどもを束ねる海の男っす!」

「それほどすごい人なんですか?」

「ええ、このルーズベルトの船乗りたちを束ねる頭っす。ルーズベルトといったらギョタロウ、ギョタロウといったらルーズベルトって有名なんすから」


 そんなすごい人には見えなかったけどな。


「本名は淡水魚・太郎ていうんです。みんな親しみを込めてギョタロウさんて呼んでるんです」


 淡水魚・太郎……。

 海に落ちたら死にそうな名前だ。


「でも、困ったねアキレウス。ゴリアテ島にいく手段がなくなっちゃったよ」

「ううむ、仕方ない。ギョタロウ氏の言うとおりイカダでも作るか」


 いったいこの人はどこまで本気なんだろう……。


「だから、無理だって言ってるじゃん。海が荒れて船すら出せないんだから」

「大丈夫だ、イカダなら乗り越えられる!」

「乗り越えられるか!」


 そんなどうでもいい会話をしていると、船着き場には似つかわしくない幌馬車が一台やってきた。


 カッポカッポと立派なたてがみを生やした大きな馬が優雅に歩いてくる。そして手綱を握るのは、スーツ姿の白髪のジェントルマンだ。


「なんだ、ありゃ?」


 まわりの船乗りたちが怪訝な表情で見守る中、ジェントルマンが

「どうどうどう」

 といって手綱を引くと、馬が少しいななきながら停止した。


「つきましたぞ、アリスお嬢様、アルフレド様」

「うーーーん、ようやく海水浴ができますわね」

「いや姉さん、遊びにきたわけじゃないんだけど」


 幌がはられた荷台から降り立ったのは、ジャージ姿の金髪の少女と革ジャケットを着たオシャレな金髪の少年だった。

 年の頃は14、5くらいか。オレよりも2つか3つ若いのに、落ち着いた雰囲気を醸し出している。


「ジェームズ、わたくし喉が渇きましたわ」

「おお、なんと! アリスお嬢様が脱水症状で倒れでもしましたら、このジェームズ、旦那様に顔向けができません。さ、どうぞ。北アルプスの天然水でございます」


 金髪の少女はスーツ姿の男からペットボトルを受け取るとものの見事に飲み干した。


 なに、このコント。


「ていうかさ、姉さん。そんなの自分でやれよ。そのうちジェームズがいなけりゃなんにもできなくなっちゃうよ」

「うふふふ、アルフレドがいるじゃない」

「嫌だよ! 姉さんの従者なんてやったら1日で廃人になっちゃうよ!」


 金髪の少年が本気で嫌がっている。

 どうやら、マジなようだ。


「なんなのだ、あの者らは」


 オレの目から見ても変人のアキレウスが、明らかに変な目で彼らを見ている。



「まあ!!」



 すると金髪の少女と目が合ってしまった。

 なんだか吸い込まれそうなきれいな瞳をしている。

 少女はつかつかとやってきて貴族のように腰を少し下げて挨拶をした。


「初めまして。わたくし、アリスと申します。ジョージア領のルドルフの娘でございます」

「あ、ども。初めまして」


 この場合どうやって返せばいいのかわからない。


「このたびは、わたくしどものために船を動かしていただいて……」

「は?」

「姉さん! その人違う! 船乗りはこっちだよ!」

「あら。失礼いたしました。てっきり船をひっぱって動かすモンスターかと思いました」


 ほんと、失礼だな!


「では、ごきげんよう」


 ごきげん悪いよ!

 なんなの、この人!


「なんだ、なにを言われたのだ? 我らは」


 この人に説明すると暴れそうだからやめとこう。




つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ