レベル5 大天使ミカエルとパラシュート
地面がない、というのはすごいことです。
私はいま、万有引力の法則に従って地上へと真っ逆さまに落下していました。
目指す先は人間界。
地上数万メートルという高さから猛烈な勢いで落下している最中なのですが……。
………
…………
………………
なにこれ超怖ええーーー!!
アホか!! 万有引力!!
アホか!!!! 万有引力!!!
みるみるうちに地面がせまってきてます。
このままでは、あと数分で地面に激突……。
グショアアア!!
なんて、スプラッター的な画が完成しそうです。
なんてことでしょう。私はてっきり『天使がふわりと空から舞い降りた』的な流れだと思ってたのに。
なに、このマジなスカイダイビング。
私、空飛べねえっつーのっ!!
『ミカエルよ。大天使ミカエルよ』
そのとき、突然、頭の中にゼウス様の声が聞こえてきました。
「ゼウス様!?」
な、なぜ……!?
なぜゼウス様の声が聞こえてくるのですか!?
ゼウス様は、天界におられるはず。こんなところにいるはずがありません。
『ワシは全知全能の神。天界からおぬしの頭に直接テレパシーを送っておるのじゃ』
ああ、なるほど。頭に直接テレパシーですか。
…………。
「キモっ!!」
『キモっ!?』
キモすぎだわ、マジありえません、このハゲ。
『いや、あの、ハゲって……』
………!!
なに、このジジイ。私の心が読めるのですか!?
『テレパシーだからね。おぬしの心の声もがっつりと……』
………。
私は、常日頃から思っております。ゼウス様こそ、全世界の頂点にふさわしい徳のあるお方。私の尊敬する上司№1。部下には優しく、自分には厳しい大変立派な方で………etc.
『天使とは思えないごまかし方!!』
ゼウス様、お慕い申しております!!
『うそつけ!』
「あの、私に何の用ですか?」
『いや、用っていうか、君そのままだと地面に激突するよね?』
ああ、そうでした! 私は今、猛烈な勢いで落下しているんでした!
「おいこらハゲ、はやく私を助けなさい」
『変わり身早っ!!』
「このままだと、地面に激突して死ぬんですよ。なんとかしてくださいハゲ」
『あの、ワシ、一応神様なんだけど……』
あ、そういえば。
「ゼウス様、なにかありませんか? こう、ラピ○タ的な方法でペンダントが光ってゆっくり落ちるとか」
『い、いや、そんなアイテム持ってないし』
「どうしましょう、このままでは……」
『うむ、そこなんじゃが。君、天界から降りるときキューピッドから何かもらわなかった?』
そういえば、降りる前にキューピッドからリュックをもらいましたっけ。
落ちてく怖さで忘れてましたが。
「そういえばパラシュートを渡されてました」
『それじゃよ、それ。それが一番大事』
「大事MANブラ○ーズですか?」
『いや、違うけど……。確かに大事MANブ〇ザーズに同じタイトルの歌があるけど……』
「紛らわしいこと言わないでください。でも『負けないで』とどっちが名曲か悩みますよね」
『う、うん、そだね……。ていうか、ちょいちょいツッコミ入れるのやめてくれる? 死ぬよ?』
死ぬのは嫌です。
『そのリュックじゃが、今どこにある?』
「リュックなら、私の背中にあります。きちんと両肩で背負っていますよ。これを、どうするのですか?」
『それはよかった。そのリュックの横に糸が伸びておろう』
言われてみれば、確かに伸びています。すね毛のようなものが1本。
『もっと、他に言い方あるじゃろ……』
「これをどうするのですか?」
『引っ張ってみるがよい』
引っ張る?
「えい」
私は言われるがまま、リュックの脇からぴょこんと飛び出ているすね毛……じゃなくて、糸を引っ張ってみました。
「うごおおおおぉぉ!!!!」
その瞬間、身体全体に強い衝撃。
なるほど、このパラシュートはこうやって開くものだったのですね。
キュービッドも教えてくれればいいのに。
『ふぉっふぉっふぉ。無事に開けたようじゃな。画期的じゃろ?』
画期的というかなんというか。がっつり人間界の道具ですよね。
『とにかく、これで安全に地上に降りられるぞい』
「そうですね。助かりました」
まあ、気がかりなのはパラシュートもつけずに地上に落とされたオッペケペーさんですが……。
『地上に降りたら、まずはゴリアテ島行きの船を探すのじゃ』
「もとよりそのつもりです」
『可能であれば人間たちの手を借りるがよかろう』
「わかりました」
『あ、それから……』
「まだなにか?」
『お土産は等身大の美少女フィギュアでヨロシク☆』
「…………」
死ねばいいのに!
『死ねばいいのに!?』
私は頭の中でゼウス様を555回ほど殺して、ゆっくりゆっくりと人間界へと降りていくのでした。
ミカエル編おわり




