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レベル3 大天使ミカエルと堕天使ルシファー

 その時です。

 ゴリアテ島を調査していた天使オッペケペーが血相を変えてやってきました。


「ミカエル様、大変です! ゴリアテ島の周辺に、強力な結界が張られました!」

「強力な結界?」

「ゴリアテ島全体を包む、すさまじい結界です! 天使には近づけられないほどの……」

「まさか。そんな強力な結界を誰が?」

「あっしも、いまだに信じられないんですが、どうも、その結界を張ってるのがルシファー様のようで……」


 何を言っているのですか、この天使は。

 ルシファーがそんなことをするはずがありません。


「バカも休み休み言いなさい。なぜ彼がそんなことをするのですか」

「そうは言ってもですね、結界にちゃんと名前が描かれているんですよ。『ルシファー』って……」


 天使オッペケペーが、天使衛生で撮った写真を見せてくれました。

 そこには、確かにゴリアテ島を囲うようにドーム型の結界が張られていました。


「ほら、ここ。ルシファーって書かれてる」


 結界のてっぺんには『ルシファー』というサインと、まったく似ていない彼の自画像が描かれておりました。


「確かにルシファーのようですね。これほどの強力な結界に落書きまで書き加えられるのは彼しかいません」


 ゼウス様は深々とため息をつきました。


「なんとものお、魔界に調査にいった天使が魔界に身を染めるとは」

「ゼウス様、私はまだ信じられません。ルシファーには何か考えがあるのだと思います。私を地上へ送ってください」

「じゃが、結界があるから近づくことはできんぞ」


 ああ、そういえばそうでした。

 ルシファーの結界は天界一。

 どんな天使も近づけないのです。

 いったい、どうすれば……。


 そうこうするうちに、ゼウス様がパソコンを開いて衛生の生動画を映し出しました。

 今現在のゴリアテ島の様子が映し出されます。

 黒い雲に覆われたゴリアテ島。

 その周辺に張られた結界。

 すると、その黒い雲の中から、不気味に浮かぶ大きなお城のようなものが浮かんでまいりました。


「ゼ、ゼウス様! これはいったい……!」

「オーマイゴッド」


 いや、神はあなたです……。


 魔界の穴から浮かびあがる謎の城。

 これはもう、魔王の城と言わざる負えません。


「まさか、これが世に言う魔王城!?」


 オッペケペーが興奮しながら画面に見入っています。


「すげえ、すげえっすよ、ミカエルさん! オレ、この城に入って人がゴミのようだって言ってやりてえっす!」

「バルス!!」


 私は、オッペケペーの目を魔法のステッキで叩きつけてあげました。


「ぎゃあああす!! 目が、目がああぁぁぁ!!!!」


 これでしばらくおとなしくなるでしょう。


「ゼウス様、とにかく、なんとかしないと。魔界の物が人間界に浸食し始めています」

「う、うむ。そうじゃな。天使除けの結界とあらばワシらには手が出せん。地上の人間たちの手を借りるしかないな」


 天界の失態を人間に頼むのは気が引けますが、他に方法もありません。


「私が直接人間界に降りていって、助力を借ります」


 それしかないでしょう。

 ゼウス様は「わかった」と言いながら指をパキパキと鳴らし始めました。


「え、ちょっと、何をなさるおつもりですか?」

「ミカエル、おぬしを地上へ送るのじゃよ」

「地上へ送るって、どうやって? 自分で降りられますけど…」

「まあまあ、安心せい。ワシのジャーマンスープレックスだったら一瞬じゃぞ」


 ………このハゲ。


「いえ、けっこうです。自分で降ります」

「ふぉっふぉっふぉ、遠慮せずとも好い。ちゃんと地上に降ろしてやるわい」

「ていうかそれ、『降ろす』というより『落とす』ですよね」

「どっちでもよいではないか。大丈夫、ちと痛いだけじゃて」


 痛いというより死にます。バカでしょうか、この人は。


「ためしに、この天使で落としてやろうか? そしたら、安心じゃろ」


 なぜか天使オッペケペーに飛び火しました。


「え、ちょ、バカ! 誰がやるか、このバカ! いきなり何言うんだよ!」


 ゼウス様をバカ呼ばわりした天使は後にも先にもおそらく彼だけでしょう。

 まあ、私はジジイ呼ばわりしてますが。


「せい!!」


 ゼウス様は天使オッペケペーをつかんだかと思うと、思いっきり雲の下に放り投げました。


「あーーれーーーー………」


 そして、彼は光となったのです。


「あれは、投げっぱなしジャーマンという技じゃ。死ぬほど危険な技じゃから使わない方がよい」


 天使オッペケペー、どうか安からかに眠ってください。


「おぬしにかけるのは、もっとすごい技じゃから安心せい」

「やめてください、ほんとけっこうです」

「遠慮するでない。超高速回転で地面に叩きつけるスクリューパイルドライバーっちゅう、ステキな技じゃ。つかんだら、こうやってグルグル回って…………グキッ!!」


 小気味いい音とともに、ゼウス様は白目をむいて止まってしまいました。

 腰から、「ぎっくり」という音が聞こえたような気がしますが…。


「ゼウス様?」

「…………」

「ゼウス様? 大丈夫ですか?」

「…………ダメ」


 大丈夫のようで安心しました。


「では、行ってまいります。私の留守中、無理をなさらぬようお願いします」


「……………へ、へるぷみ~」


 こうして私は、人間界へと降り立ったのです。

 魔界の入り口を閉じるため、大天使ルシファーと会うために。



つづく

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