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レベル1 大天使ミカエルと全能神ゼウス様

 私の名前は大天使ミカエル。

 偉大なる全能神ゼウス様に仕えし天界の住人。

 私の朝は、この偉大なる全能神を起こしに行くことから始まります。

 大きなお屋敷の長い長い廊下をひたすら突き進むと、ひときわ大きな扉が見えてきます。

 そこが、ゼウス様の寝室です。



「ゼウス様、おはようございます!!」



 私は寝室の前で叫ぶと、扉をゆっくりと開けました。

 つと中をのぞくと六畳一間の座敷の中央に敷いた布団がかすかに動いておりました。

 どうやら、まだ爆睡中のようでございます。


「ゼウス様。おはようございます。朝ですよ」


 つかつかと中に入り掛け布団をガバッと持ち上げますと、私は思わず大声をあげてしまいました。


「ぴぎゃあああぁぁっっ!!!!」


 こ、このクソジジイ、マッパで寝てやがる……。

 気色悪い物体をさらけ出して、大の字で爆睡してやがる……。


 いらぬ妄想を抱かぬようあらかじめ申し上げておきますが、ゼウス様は老人です。ヨボヨボのおじいちゃんです。

 つまり言いますと、これは『絵的に非常に危険』な状態といえます。


「ゼ、ゼウス様……。せめてお召し物を……」


 生物学的には女性である私には、このようなおぞましいモノを見続ける勇気はございません。視線をそらし、顔を手で押さえながら進言しました。

 ゼウス様は、寝返りをうちながら答えました。


「うーん、むにゃむにゃ。あと、5分……」

「なんか着ろっつってんだよ!!」


 思わず、ゼウス様の顔面を思いっきりぶん殴ってしまいました。

 めきょ、と心地いい感触が右手に伝わります。死んだかな?


「うげっふ……、ぐぽ」


 ゼウス様は、血まみれになりながら起きてくださいました。死ななくて何よりです。


「お、おはようミカエル……」

「おはようございますゼウス様」

「な、なんか、顔中が痛いんじゃが……」

「気のせいでございます。さあさあ、朝礼のお時間でございます。お急ぎ、ご仕度くださいませ」


 私は、ゼウス様を見ないように目をつむりながら言いました。

 おぞましいモノは見たくありません。


「おお、もうそんな時間か」


 ゼウス様は言いながらモソモソと起き上がりました。


「わかった、しばし待たれよ」


 そう言いながら、服を着始めます。

 当然ですが、私はお手伝いなどいたしません。

 こう見えて潔癖症ですから。汚らわし……じゃなくて、神聖なるゼウス様のお身体に触れることなど、できるわけがありません。

 目をつむりながらゼウス様のお召し替えを待つだけでございます。


「どうかの、ミカエル。これ、このまえ通販で買ったやつなんじゃが……」


 その言葉に、ようやく目を開けることができました。

 目を開けると、そこには下半身の際どいVラインを描いた水着を着用しているゼウス様がおりました。


「どうじゃ? 人間界の水着でレオタードっちゅうものらしいぞ。イカスじゃろ?」

「キモいんだよ!」


 思わず、殴り倒してしまいました。このくそジジイは、いっぺん死んだ方がマシです。


「げふぅ……ぐぽ」


 ゼウス様は、血まみれになりながらも生きておりました。

 なかなかにしぶとい老人です。

 仕方なく私はタンスの中からゼウス様の着替えを取り出しました。


「神様は神様らしい格好をしませんと」


 瀕死のゼウス様にいつものローブを羽織らせ、手には大きな杖を握っていただきました。

 これで準備完了。


「何千年とこの格好を続けてきたから、さすがにもう飽きてきたのぉ」

「何をおっしゃいます。神様のイメージというものもありますから」

「たまにはYO、ラッパーの格好とかYO、いいじゃないかYO!!」


 ラッパーは、そんな頻繁にYOYO言いません。


「わけのわからないことをおっしゃってないで。さあ、皆様がお待ちですよ」

「YO、YO、オレタチ天使、地上の安全、オレタチ守る、イエーイ!!」


 私は、魔法のステッキを握りしめて言いました。


「いっぺん死にます?」

「あ、いや、ゴメン……」


 ゼウス様はおとなしく広間に向かってくださいました。

 このジジイの相手は、ほんと疲れます。




つづく

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