レベル8 武器屋でとったどー(アレル視点)
「アレルよ。何度も言うが、我は逃げたわけではないぞ。ちょっと、なんだ、『その場を離れただけ』だ」
「う、うん、わかってるよ。何度も聞いたよ」
「いいや、わかってない。絶対、わかってない。いいか、我は『その場を離れただけ』なのだぞ。逃げたわけではないのだからな」
「ああ、はいはい」
今、オレたちは武器防具の生産がさかんな町ミーズリに来ている。
アキレウスはオークとの戦闘のあと、しなくてもいい言い訳をくどくどとし続けていた。
「武器がパキッと折れたのだ。武器がな。もう『その場を離れる』しかないではないか」
「うん、わかってるよ」
「武器が折れたら、もう、なんにもならぬではないか。しかたなく『その場を離れただけ』なのだ。悔しいが」
「そうだね……」
命からがらオークから『逃げてきた』オレたちは、このミーズリの町で武器屋を探していた。
「ん? 何か言ったか、アレル?」
「いや。別に……」
武器を売っている武器屋を探していると、一軒の「剣」の看板が掲げられた店を発見した。
「あ、見てよアキレウス! 武器屋だよ!」
「おお、なんと! 今日は決算セール中で全品半額ではないか!」
「お買い得だね。ちょっと入ってみようよ」
中に入ると男臭い空気がムワンとたちこめていた。
それもそのはず。決算セール中だけあって、店内は鎧・兜に身を包んだ戦士たちがごったがえしていたのだ。
………。
吐き気がする。
「ふふふ、血が騒ぐなアレルよ」
「そ、そう?」
冷房をきかせているつもりだろうけど、筋肉モリモリの男どもが群がってる店内は暑くてたまらない。
ある意味ここは魔王の城より地獄かもしれない。
店内はどこもごったがえしていたけれど、ひときわ目立ったのが、入り口近くに置かれた大きなワゴンだった。
ワゴンのまわりには戦士たちが群がり
「オレのだ!!」
「いや、オレが先にとったのだ!!」
と武器を取り合っている。
まるでスーパーで食材を取り合っている人たちみたい。
「あはは、なんか、バカみたいだね。アキレウス」
「そうだな。勇者たるもの、武器は慎重に選ばねばならん。安いからなんでも飛びつくというのはサルのすることだ」
「あ、でもワゴン内は“全品70%オフ”だって。そりゃ安いね、アキレウス」
「うおおーーーー!!!! 我にも買わせろーーー!!」
……サルが飛びついた。
「邪魔だ、どけ、このクソが!!」
アキレウスは近くの戦士たちをぶん殴りながら割って入っていく。
「いや、それ、やりすぎ……」
アキレウスは、
「ボケが! カスが!」
と次々と戦士たちを吹っ飛ばしてワゴンの中から巨大な斧を引っ張り出すことに成功した。
やってることは、もはや勇者ではない。
「どうだ、アレル! 強そうな武器を見つけたぞ!」
高々と巨大な斧を掲げるアキレウス。
悪いけど完全に犯罪者ですよ、その姿。
まわりの戦士たちからブーブー文句を言われながらも、アキレウスは無事会計を済ませ巨大な斧を見せびらかすように意気揚々とオレの前に戻ってきた。
「見ろ、この頑丈そうな斧! これなら折れる心配もないな」
「う、うん、そうだね……」
するとアキレウスはオレに一振りの剣を差し出した。
「ついでに、アレルの武器も買っておいたぞ」
「ほ、ほんとに!? うわあ、ありがとう!」
意外すぎてびっくりした。
まさかオレの分まで買ってきてくれてたなんて。
「おぬしの武器も、なくなってしまったしな」
「オレのことも考えてくれていたんだね。ありがとう」
「はっはっはっ、いやなあに」
照れるアキレウス。
ごめん、サルだなんて思って悪かったよ。
「それよりも、見てみろすごいぞ。柔らかいゴムでできた剣だ。叩いても痛くないし、ぐにゃぐにゃ曲がるから折れることもないぞ。対象年齢3才以上だそうだ。アレルにお似合いだな!」
「………」
やっぱりサルだ、この人とオレは思ったのだった。
つづく




