レベル7 腕が鳴ります、初バトル(アレル視点)
アーメリカ王国に戻ってしまったオレたちは改めて魔王の場所を確認した。
その結果、魔王の居城は絶海の孤島ゴリアテ島ということが判明し、オレたちはそこに向かう船に乗るべく港町ルーズベルトに向かって歩いている。
「それにしても、まさか旅行代理店で魔王の居場所を教えてくれるなんてねえ」
「うむ。そうだな。魔王討伐ツアーなんてものもあったな」
「完全な旅行感覚だよね」
人間のたくましさを感じる今日この頃。
旅行代理店の人から
「ルーズベルトまで大型バスも出ておりますから、ぜひ!」
と言われたが、費用がバカ高かったので丁重にお断りした。
「まったく、ああいう輩がいるから、魔王が図に乗るのだ」
図に乗ってるかどうかなんて、あなたわからないでしょ。
「そもそも、楽して魔王討伐に行こうなんてその根性が許せん」
まあ、単に噂の魔王が見たいだけっていう人も中にはいるだろうけど。
「そんな性根の腐ったやつは、豆腐の角に頭をぶつけて、のた打ち回った挙句に苦しみながら血まみれになって死んでしまえばいいのだ。我々は、それを見ながら笑い転げてやる。なあ、アレル」
いや、そこまで鬼畜じゃないよ、オレ。
そんなどうでもいいような会話をしていた時だ。
「ふごごご」
オレ達の前にイノシシの顔をした巨大な人型モンスターがあらわれた。
「で、出た…」
これは、アレですか?
巷で有名な「オーク」というやつですか?
見るからに強そうだ。
なに、あの丸太のような腕。
オレの身体なんかポキッと折れちゃいそうですよ?
「出たな、モンスター! このアキレウスが相手をしてくれる!」
ずいっとアキレウスが前に立った。
脳筋なアキレウスだけど、こういう時はやっぱり頼りになるなあ。
「我のこのつるぎで………あ、このピコピコハンマーで、貴様の息の根を止めてやろう!」
…………
…………
…………
「あっ!!!!!!」
わ、忘れてた…。
アキレウスの武器って、ピコピコハンマーだったっけ。
「でやああ!!」
無謀にも、アキレウスはピコピコハンマーで巨大なオークに立ち向かっていく。
ピコッ!
かわいらしい音が、オークの頭から発せられた。
「ふご?」
「どうだ、まいったか」
なにがだ。
「ふごお!!」
オークが腕を振り回すと、アキレウスが大きく吹っ飛んだ。
「アキレウス!!」
「ぐう」
慌ててアキレウスに駆け寄る。
「く、くそ、なぜだ、神の武器が通じぬ」
うん、ごめん。
オレが神の武器だなんて言ったから。
「1発じゃ効果がないのか。ならば!」
アキレウスは立ち上がると再びオークの頭にピコピコハンマーを浴びせた。
ピコピコピコピコッ!
かわいい音が連打される。
「ふごお!!」
オークが張り手でアキレウスを突き飛ばした。
「ぐああ!」
「アキレウス!」
吹っ飛んだはずみで、ピコピコハンマーが根元からポッキリ折れてしまった。
「な、なんと! 神の武器が壊れてしまった!」
「アキレウス、これを使え。お前の剣だ」
オレは背中に背負っていた剣をアキレウスに投げ渡した。
「おお、ありがたい!」
アキレウスはそれを拾い、スラッと剣を抜くとオークと対峙した。
「ふふふ、やはり勇者といったら剣だな」
アキレウスの顔が自信に満ち溢れる。
「オークよ、残念だが剣を握った我に敵はいない。おとなしく……」
ぱきっ。
アキレウスが意気揚々としゃべってる間に、オークが剣の刃先を両手でつかみ、簡単にへし折ってしまった。
なんて怪力……。
「ひょっ!!!!」
アキレウスが「ムンクの叫び」のような顔でこっちを見た。
いや、オレにどうしろと……。
「に、逃げるぞ、アキレウス」
アキレウスはその顔のままコクンとうなずくと、ものすごい速さで逃げ出した。
「は、早っ!!」
アキレウスの姿があっという間に見えなくなった。
逃げ足だけは早いな。
オレも全速力でオークの前から逃げ出したのだった。
つづく




