レベル6 コンパスとは文明のほにゃらら(アキレウス視点)
「アキレウス、何度も言うけどさ。オレたちは魔王を倒しに行くんだからね。勇者を倒しにいくわけじゃないんだからね」
「くどい、わかっておるわ」
我が名はアキレウス。
アーメリカ王国の勇者である。
今、我は我が友アレルとともに、不届きな勇者………あ、いやいや、魔王討伐に向かっている。
魔王討伐……。なんと心地のいい響きか。
神が与えたもうた、この試練。勇者としての素質が試されよう。
ふふふ、腕が鳴るわ。
すでにアーメリカ王国を離れ、我を先頭に歩き続けること半日。
我々は深い森の中に入り込んでいた。
「なあ、アレルよ」
「なんだい、アキレウス」
「……魔王の城ってどこにあるんだ?」
「………」
「………」
「………」
「………」
「え、いまさらっ!!!??」
……………
な、なんだ、その目ん玉が飛び出しそうな表情は。
「ア、アキレウス……。もしかして、当てもなく歩いてたの!?」
「もちろんだ!!」
「オレは、アキレウスが前を歩いていたから、てっきり場所を知ってるものだと思って……」
「はっはっはっ」
そんなわけあるか。
「いや、笑いごとじゃないんだけど…。ていうか、知らないならなんで前歩いてたの!?」
愚問だな、我が友よ。
「勇者といえば、先頭だろう!!」
「そんな理由!?」
アレルは、
「はあ」
とため息をついた。
「うちら半日も無駄に歩いてたの?」
む。それは聞き捨てならないな、我が友よ。
無駄かどうか、まだわからぬではないか。
「安心しろ。きっと、この先に魔王の居城があるはずだ」
「その自信はどこからでてくるんだろう」
「我は勇者だ。我の勘を信じろ!!」
─────……
それから、数時間がたった頃。
アレルがおかしなことを言い出した。
「ねえ、アキレウス。なんか、同じところグルグル回ってない?」
ふ、バカな。
我々はまっすぐ進んでいるのだ。回るはずがなかろう。
「回ってなどおらん」
「いや、だってこの森ってさ、真っ直ぐ進んだつもりでも、次第に少しずつ回っていって、元の位置に戻っちゃうって言われてる迷いの森だよ」
「勇者の我が、そんな愚をおかすか。心配ならば、目印でもつけておくがよい」
アレルは、目印として太い木の枝をへし折っていった。
ふん、心配性め。
─────……
さらに数時間がたった頃。
「ほら、アキレウス! さっきの木の枝を折った場所に戻ってる!」
アレルが、折れた枝を指差す。
「いやいやいや、よく見ろ、若干違う」
「同じだよ!」
木の枝なんて、そこらじゅうで折れているではないか。
ここに限ったことではない。
「まったく、疑い深いやつだな貴様は!」
「だから、その自信はどこから出てくるんだよ」
「だったらなにか。貴様はこの森をまっすぐ進めると、そう言うのか」
「できるよ、コンパスあるし」
「ほう、ではやってみるがよい。我は後ろでじっくり見物させてもらう」
「見物っていうか、ついてきなさいよ」
我はアレルの後ろについて歩き続けた。
「ふふふ、バカめ、そんなものでこの森を抜けるものか」
「ていうか、最初からこれ見ながら進めばよかったね」
「文明の利器に頼ると退化するぞ」
「いや、しないし。これ、普通のコンパスだし」
口だけは達者なやつだ。
これでこの森から出られなかったら大笑いしてやろう。
あ、出られなかったらそれはそれでまずいのか。
いや、そんなわけあるか。
勇者が森で遭難など……。
……………
「アレルよ、着いたか?」
「ちょっと待ってよ、コンパス見ながら歩いてるんだから」
「そうか」
……………
「もうすぐか?」
「まだだよ」
……………
「もうそろそろだろ?」
「だあっ、もううっさいな! 静かに後ろ歩いててよ!」
「すまん」
もくもくと歩き続けて数時間。
我々はついに灯りの見える町にたどりついた。
「森から出られたよ、アキレウス!!」
「うおおおぉぉ、やったなアレル! 遭難せずにすんだ」
よかったよかった。
これっぽっちも心配はしてなかったが、とりあえずよかった。
「あれ? でも、あれって……」
うむ、あの灯りはもしかして……。
目を凝らすと、町の城壁に掲げられているのは、我が祖国アーメリカの国旗であった。
「戻ってきちゃったみたいだね」
「ふはははは、このバカが!!」
約束通り大笑いしてやったわ。
つづく




