番外:魔王と愉快じゃない仲間たち
ゴリアテ島──。
断崖絶壁の孤島。上空には吹き荒れる嵐。
侵入不可能と言われるこの島の真ん中に魔王の住む城がある。
その魔王城の中枢では、魔王軍の将たちによる会議が行われていた。
「ということで、愚かなる人間どもが魔王様のお命を狙って動き出しております。これについて、各軍を束ねる貴公らの意見を伺いたい」
円卓には座るのは魔王軍の四天王たちだ。
一人は禍々しい甲冑を身に着けたライオンの顔をした百獣の王ガリレオ。
一人は黒いマントを羽織い巨大な鎌を持った死神カーン。
一人はドラゴンの翼をもつ竜神族のケーン。
一人はヘビの髪の毛を持ち、相手を石化させる能力を持つメドゥサ。
そして、進行は宰相をつとめる若き堕天使ルシファーだ。
「何のことで呼び出されたかと思えばそんなことか。元大天使ともあろう貴君が人間どもにおびえるなど笑止。このゴリアテ島は侵入すらできぬ絶海の孤島ではないか。どうやって乗り込むというのか」
最初に口を開いたのは人間の3倍以上もの巨体をほこる百獣の王ガリレオ。
彼の声は特殊で、言葉を発するたびに空気が震える。
彼の咆哮を聴いた者は、恐怖で金縛りにあうとまで言われている。
「いや、百獣の王ガリレオよ。人間どもをあなどってはならぬ。おそらく、思いもつかぬ方法でやってくるだろう」
冷静に意見を述べるのは死神カーン。
彼は実態がないので空中を浮きながら現れたり消えたりを繰り返している。
「いやいやいや、ちょっと待てよオッサン! 海もダメ、空もダメ。だったらどっから侵入するっていうんだよ! まさか、下からか!?」
竜神族のケーンが椅子の背もたれに腕をかけながら鼻で笑って否定する。彼はこの中では最年少だが、威勢だけはいい。
「ケーンの言うとおりよ。人間どもがここまで来れるとは思えない。なにせ、このゴリアテ島には城のまわりにも凶悪な魔物たちが住み着いているのだから」
メドゥサがヘビを指で巻きながら言う。気持ち悪さでいったら天下一品だ。
「そうやってあなどっていると足元をすくわれるぞ。人間どもは力がない分、知恵が働くのだ」
なおも死神カーンは不安を口にする。
「魔王様はどう思われます?」
ルシファーの言葉に、一同が玉座を見つめる。
玉座に座る金髪の青年は、よだれをたらしながら爆睡していた。
「ZZZ……」
「くおら、このくそ魔王ーーー!!!!」
四天王が一斉に金髪の青年を攻撃し、彼は目を覚ました……というか、瀕死になった。
「……う、うう……」
「魔王様、人間はあなたのお命を狙っているのです。くれぐれもお忘れなきよう」
「……ていうか、いま、おまえらに殺されかけたんですけど……マジで」
魔王が瀕死の状態でつぶやいた。
「魔王様、ここはひとまずこちらから討って出ようではありませんか」
百獣の王ガリレオが進言すると、竜神族のケーンも続いた。
「そうだぜ、魔王様! 人間どもにオレたちの恐ろしさを見せつけ、ゴリアテ島に侵入する気も起きなくさようじゃねえか! なあ、みんな!」
「うふふ、そうね。それなら別に人間がどうやって侵入してくるか、なんて議論も必要なくなるわね」
「ふむ、一理ありますな」
四天王の意見は一致した。
「どうですか、魔王様。ここはひとつ、討って出るってことで…」
ルシファーが魔王に意見を求めると、魔王はふと思ったことを口にした。
「っていうかさ、逆にうちらもゴリアテ島から出られないんじゃない?」
「「「は?」」」
見事に四天王がハモった。
「だって、海もダメ、空もダメ。どうやってこの島から出て行くの?」
「………」
会議室に暗い沈黙が続いた。
「魔王様って、意外と空気読まないよね」
「な。オレらの勢い、完全に空回りしちゃったよな」
「テンション下がるわあ」
四天王がブチブチと文句を言っていると、会議室に郵便屋さんがやってきた。
「どーも、郵便でーす」
「あ、どうも」
ルシファーが郵便屋さんから手紙を受け取った。
「毎度、ご苦労様です」
「いいえ、こっちも仕事ですから! では」
そう言って郵便屋さんは帰って行った。
「魔王様、今月の光熱費です。うわあ、けっこう使いましたね。忘れずにコンビニで支払ってくださいね。電気、止められちゃいますから」
「ていうか、あの郵便屋さん、どっからきたの?」
「え?大陸の方からですけど。すごいっすよね。バイクで海わたるんですって」
ルシファーは何事もなかったかのように教えてくれた。
「バイクでわたるの!? 海を!?」
「ええ。そういってましたよ。最初は無理かなーって思ったけど、『イケるか!』て思ったら行けたらしいです」
「なにそれ!?」
「すごいっすよね、郵便屋さんて」
すごいのは、バイクで海を渡れる彼だ。
「ちなみに、佐○急便もヤ○ト運輸も毎日、この城に荷物届けにやってきてますよ」
「マジで!?」
その後、四天王たちは各々、配達会社に就職したらしい。
おわり




