プロローグ
こちらは「オレたちの戦いはこれからだ」エンドとなります。
また、約20年前にほぼほぼノープランで書いた黒歴史的な作品ですので、細かいことは気にせず頭空っぽにして読んでいただけると嬉しいです。
魔王──。
それはありとあらゆる魔物の頂点に立つ存在。
その破壊力は空を裂き、大地を割り、海を枯らすという。
そんな究極の破壊の王が目覚めた。
時にナロー暦234年、冬のことである。
『あ~あ~。マイクテスト、マイクテスト。………ふはははは! よく聞け、全世界の愚かなる人間どもよ! 余は魔王である!』
突如として空から魔王のおどろおどろしい声が響き渡った。
「なにごとだ?」と人々は手を止め、空を見上げる。
ある者は花に水をやりながら。
ある者は料理をしながら。
ある者は犬の散歩をしながら。
まるで日常生活のノイズのように魔王の声が人々の耳に響いた。
『残念ながらこの世界は余が支配することにした。今から世界中に魔物を送り込み、世界各国を………各国を…………ねえ、これ、なんて読むの? ぢゅうりん? 蹂躙してやる! 覚悟するのだな!』
ハハハハハ! と乾いた笑いが空にこだまする。
おどろおどろしい声は続く。
『えーと、まずは手始めに世界の……ちゅ、ちゅうすう? ちゅうすうを……にな……になっている、えーと、アーメリカ王国を……地獄の……地獄の……ご、業火に……プツッ』
声はそこで途切れた。
声を聞いていた人々は、「なんだったんだろう」と思いながらもとの日常生活へと戻って行ったのだった。
※
しかし事態は急変する。
魔王の声明後、世界各地に魔物が大量に出現したのである。
これにより世界の中枢を担うアーメリカ王国を盟主とした緊急サミットが開かれ、魔王討伐軍がすぐさま結成された。
さらには、
我こそはと力に自信がある者。
平和のために立ち上がった義勇軍。
これを機に食にありつこうという浪人。
魔王が気に入らない蛮族。
世界中のあらゆる人間が加わり軍はなんと20万にものぼった。
「我らは国は違えど、志は同じ! この大軍をもってすれば魔王など恐れることはない! さあ、いざ行こう!」
アーメリカ王国の将軍の呼びかけに、20万の軍勢が雄たけびをあげた。
「おおーーーーー!!」
これは後に
『国は違えど、志は同じ記念日』
として歴史に名を残すこととなる。
魔王を倒しに進軍しようとした、ちょうどその時。
1人の田舎出の若者がつぶやいた。
「ところで魔王って、どこにいるんだべ?」
「!!!!」
若者の一言に、将軍たちの時が止まった。
「……そ、そういえば魔王って、どこにいるんだ?」
「お前、知ってる?」
「さあ」
「………」
「………」
「………」
20万の軍隊は進軍することなくその場で解散となった。
これは後に
『魔王どこにいるんだべ事件』
と呼ばれ、人類の汚点として歴史に名を残すこととなる。
一時解散となった魔王討伐軍。
盟主のアーメリカ王国は国の威信をかけて、魔王の居場所を調査。
魔王の使ったマイクの電波を頼りに、方角、距離、バックの音響などをグラフ化。
その結果、魔王の居城は絶海の孤島ゴリアテ島の奥と判明した。
ただ、「いったん解散した軍隊を再び募るのはちょっとKYじゃね?」ということでアーメリカ王国は希望者のみの勇者隊を編成することにした。
これにより、次々と勇者たちが旅立って行くのだった。
これは、そんな彼らが魔王を倒す冒険の物語である。たぶん。