第9話 留守番(後編)
今日の遅刻の件、ちゃんとお礼を言えてなかったのでLINEで伝えることにした。
「今日は庇ってくれてありがとう。」
一瞬で既読が付き、返信が来た。
「別にいいよー!ってか、半分は私の責任だしー(ㆀ˘・з・˘)」
「いや、そんなことないよ…でも、助かった。」
実際、山岸さんのおかげで今日の遅刻は免除された。
「そうだ!服買いに行く日なんだけど、今週の日曜日って空いてたりする?」
急な誘いのLINEに俺は焦った。もちろん休日の予定なんて無い日が多い。
でも、即答ってどうなんだ…暇人って思われないか?暇だけど。
変なところで見栄を張るのは良くないと分かりつつも、少しだけ時間を空けて返信した。
「日曜日、空いてるので、よろしくお願いします!」
「りょ!超楽しみー!絶対にカッコよくするから期待しててね(๑˃̵ᴗ˂̵)」
普通の健全な男子だったら、このLINEは完全にその気になってるだろうな。
俺はすぐに卑下してしまうが故に、期待すべきタイミングでもネガティブになってしまう。
でも、それがあるから山岸さんともこうして平常心を保ってLINEができているんだと思う。
緊張はしている…そりゃ、女子とLINEなんて俺の人生には無縁だと思っていたから。
「10時に天宮駅待ち合わせでΣ੧(❛□❛✿)」
「はい!わかりました。」
LINEも落ち着いたので、一応、池田には伝えておくか。俺は池田に山岸さんと出かけることを伝えることにした。
「起きてる?」
「どした?」
「今週の日曜日に山岸さんと出かけることになった。」
「は?どういうこと?」
そりゃそうなるよな。俺だってよく分かってないんだから。
「なんか、俺の服を買いに行く話になって、山岸さんが選んでくれるって、俺もよく分かってない。」
「いやいや、おかしいだろ。普通に考えて、お前と山岸さんが買い物行くって謎すぎる。ってか、それデートじゃん!」
俺は冷静になった。
確かに池田の言う通り、男女2人で買い物ってデートだよな。
でも、それって恋愛感情があった場合に限るんじゃ?手紙のことを踏まえれば、山岸さんは別に好きな人がいるはずだし、そもそも俺はその対象にすら入らないだろうし…
俺はどうだ?山岸さんのこと好きなのか?いや、そういう感情はない、、、いや、なくもないか。
って、何考えてるんだ俺。デートって言葉に惑わされちゃ駄目だ。
ただの買い物。そう、ただの買い物だ。
「デートのわけないだろ。山岸さんみたいな人が俺に興味なんかないよ。」
「うん。そう思う。冗談だから本気にすんな。」
この流れ、さっきもやったな。
「あと、周りの目も気にしろよ。山岸さん人気だから、間違いなく他のやつらから嫉妬されると思うぞ。」
「それは、覚悟してる。」
ってか、覚悟するしかないよな。
山岸さんに隠す気があるかは分からないけど、こんなこと知られたら絶対に噂だけじゃ済まないだろうし、また茶化されるのが目に見えてる。
「まあ、一生で最後のデートかもしれないんだから、全力で楽しんで来いよ!」
「ああ、ありがとう。死んだら骨拾ってくれ…」
よし、池田への報告完了。
あとは、、、ってか、日曜日何着ていけばいいんだ?俺はここにきて軽く冷や汗をかくぐらいには焦った。
女子とお出かけ…そんなビッグイベント今までなかったし、この先もそんな予定はなかったから服が無い…
待て待て待て、落ち着け俺。日曜日まで3日ある。それまでに服を買いに、、、って駄目だ。そもそも、それができてないから今こうなってる。
じゃあ、どうする。
お洒落な友達に…いや、そんな友達いない。
雑誌を参考に服を調達?これも駄目だ。何がお洒落なのか全然わからない…
完全に詰んだ…
いや待て!ひとつだけあるな。
俺は珍しく閃いた。見られても恥ずかしくなく、何も考えなくていい服装を!
それは、制服!
これなら普段から着慣れているし、高校生が出かけるなら別に制服は不自然じゃない。
いや、待てよ。この場合、2人ともが制服なら成立するが、俺だけ制服で山岸さん私服だったら絶対におかしいよな。
だとしたら、山岸さんにも制服を着てきてもらうように伝える?
いや、それこそハードル高すぎだろ…
「や、やや、や、山岸さん!日曜日なんだけど、せ、制服で出掛けるのはど、どうかな?」
「何それ!w制服デートってこと?ごめん、ちょっとキツい…」
駄目だ、妄想だけで無理だ。
仕方ない、頑張って私服を選ぶしかないか。
こうして、俺はひたすらお洒落と格闘することになった。
初投稿の作品になります。
社会人をやりながらの投稿なので不定期になりますが、最後まで書き上げられるように頑張ります。
いつかは書籍化やアニメ化なんて夢も見ていますが、素人なので温かいご意見だけでなく、厳しい意見もいただけると嬉しいです!
オリジナル作品ではありますが、その時に見ている漫画やアニメに影響されてしまうこともあると思います。すみません…
これから一生懸命書いていくので、読んでみて少しでも続きが気になったらブックマークや評価をお願いします!




