第5話 心の距離
「黒瀬、ちょっといいか?」
話しかけてきたのは、長谷だった。
「お前、昨日の帰りも山岸と一緒だったし、今日も一緒に来てたし、何か怪しくね?」
「え、いや、それは偶然というか、別に何もないよ。」
「本当かよ?山岸も急に下の名前で呼んでたし、何か怪しんだよなー。」
長谷の視線が突き刺さるようで痛かった。でも、ここで本当のことを言えば山岸さんに迷惑かけちゃうしな。
その時だった。
「ねえ美羽ー!昨日、あんたが男子と二人でお茶してたって聞いたんだけど、彼氏いたっけ?」
大きな声で話してたのは、山岸さんの親友の小林さんだった。タイミングが悪すぎる…
「お茶?あー!したした!ってか彼氏いないし!ただのクラスメイト!ねー悠真☆」
クラス中の視線が俺に集中した…もう辞めてくれ。今、俺、超顔赤くなってる…と思う。
「おい!黒瀬、やっぱり隠してるんじゃないか?」
「ご、ごごごごめんなさい。」
「は?何謝ってんだよ!別にお茶ぐらい行くだろw」
「へ?」
俺はてっきり、長谷に胸ぐら掴まれるぐらいは覚悟してたから呆気にとられた。
「いや、別にお前が山岸と何してようが俺には関係ないだろ!ただ、お前って、あんまりクラスで目立たねえじゃん?なんっつーか、話すきっかけ?みたいな。まあ、これからよろしくな!」
「え、あ、あの、こちらこそ…」
「おいおい!男だろ!もっとシャッキとしろよwそんなんじゃ山岸に見放されっぞ!w」
「ちょっとー!悠真で遊ばないで!可哀想じゃん!」
俺はなんだかホッとした。今までの学校生活、割とひとりで過ごすことが多かったし、別にそれが苦痛ってわけでもなかったけど、こうやってクラスのみんなと話すのって、気分がいい!
俺は勇気を振り絞って、口を開いた。
「あ、あの、、長谷」
「あ?何だよ!」
「よ、良かったら俺と、俺と、あの…」
「え!まさか俺に告る気か!?w悪いけど、そういうのは勘弁だぜ!」
「いや、あの、その、えっと…友達になってくれないかな?」
「は?今更何言ってんだよ!俺らもうダチだろ!」
長谷の言葉に俺は泣きそうになった。いや、泣いてたかもしれない。とにもかくにも高校に入学して約3ヵ月間、ほぼ誰とも会話をしてこなかった俺に友達ができた。
山岸さん、本当にありがとう。感謝してもしきれないよ。
「ちょっと長谷!悠真の最初の友達は私だから!そこんとこよろしく( `ー´)ノ」
「は?ダチに最初も最後もねえだろ!男の友情なめんなよ!」
「はあー、出た出た!男の絆w私はもう悠真とLINEだってしてるんだからねーだ!」
再び、クラスの視線が集まる。
「お、おい、黒瀬…今の話マジ?」
「え、あー。うん。マジ…」
「お前、すげえな!w見直したぜ!」
俺は理解が追い付かなかったが、話を聞くとこういうことらしい。
山岸さんは他のクラスや上の学年からもモテるらしい。まあそれは当然だとして。で、山岸さんは、連絡先の交換を目的に声をかけてくる男子を一掃しているらしい。
つまり、俺は山岸さんに認められた人間ってことになる。っていうか俺、山岸さんから聞かれた気がする!駄目だ…嬉しくて山岸さんの顔が見れない。
俺は携帯を両手でギュッと握って俯いた。すると、山岸さんが下から覗き込むように俺の顔を見て、
「おーい?大丈夫?」
待って、距離近い!!!30cm、いやいや、20cmないぞ…
「だ、だだ、大丈夫だよ!ごめん!」
「次、体育だよ!男子の着替えは向こう教室だから、そろそろ移動しないとまた遅刻しちゃうよ!w」
「あ、ありがとう!」
「じゃ!またあとでね☆」
こうして、長いようで短い休み時間は終わった。
ってか、この調子だと俺の学校生活ずっと緊張しっぱなしになりそうだ。
初投稿の作品になります。
社会人をやりながらの投稿なので不定期になりますが、最後まで書き上げられるように頑張ります。
いつかは書籍化やアニメ化なんて夢も見ていますが、素人なので温かいご意見だけでなく、厳しい意見もいただけると嬉しいです!
オリジナル作品ではありますが、その時に見ている漫画やアニメに影響されてしまうこともあると思います。すみません…
これから一生懸命書いていくので、読んでみて少しでも続きが気になったらブックマークや評価をお願いします!