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第44話 水族館

昼過ぎ、目が覚めてからぼんやりしていた俺は、スマホの通知に気づいた。

山岸さんからのメッセージだった。


「おはよう☆」


「おはよう!」


まだ眠い目を擦りながら返信するとすぐに返信がきた。


「悠真、明日空いてるかな?水族館行きたい( ˘•ω•˘ )」


彼女の積極的な返事に、俺の心は少し軽くなる。


「うん、行こう!」


しばらく返信が来なかったのが妙に緊張したが数分後、返事が来た。


「やったー!楽しみ☆お洒落していくね(´艸`*)」


彼女との水族館デートが決まった瞬間、俺は心の中でガッツポーズをしていた。

メッセージを閉じてからも、スマホを何度も確認してしまう自分がいる。



――翌朝、目覚めた瞬間から頭がいっぱいだった。

「何を着ていこう?」「山岸さんはどんな服装なんだろう?」


そうこうしているうちに家を出る時間になってしまい結局、前に山岸さんが選んでくれた服を着て出発した。


約束の時間まであと15分。

俺は少し早めに待ち合わせ場所の駅前に着いて、落ち着かない気持ちを抱えながらスマホを弄っていた。


人通りの多い駅前で視線を彷徨わせていると、遠くから山岸さんが近づいてくる。

白いブラウスに薄い水色のスカートを合わせた爽やかな服装だった。


肩にかけた小さなバッグや足元の白いサンダルが、どこか夏らしい雰囲気を醸し出している。

普段とは違う、柔らかで大人びた印象に、思わず息を飲んだ。


「お待たせ!」

彼女は少しだけ息を切らしながら、俺の前に駆け寄ってきた。


「全然待ってないよ。俺も今来たばっかりだし」

精一杯平静を装いながら返事をするものの、心の中では彼女の可愛さに完全に動揺していた。


「よかった。実はちょっとだけ寝坊して焦ったんだw」

彼女は笑顔で言いながら、手にしていた飲み物を一口飲む。


その仕草すら妙に魅力的に見えてしまう俺は、完全に舞い上がっているのかもしれない。


「それじゃあ、行こっか☆」

彼女の言葉に頷きながら、俺たちは電車に乗り、水族館へと向かった。


駅からバスに乗り、水族館に着いた俺たちは、入口でチケットを受け取りながら自然に並んで歩き始めた。


「わぁ、あれ見て!」

山岸さんは入口近くにある大きな水槽を指差して笑顔を見せる。

水槽の中では色とりどりの魚たちが悠然と泳ぎ、太陽の光が水面を反射してきらめいていた。


「綺麗だね!」俺も思わず言葉にする。


彼女の視線は水槽に釘付けで、目を輝かせている。

その横顔を見ているだけで、俺の心は穏やかで幸せな気持ちに包まれた。


「次、あっち行こう!」

彼女は子供のように手を引っ張ってくる。


俺はその手に触れるか触れないかの距離に気付きながら、少しだけ照れ臭さを感じつつも、そのまま彼女のペースに引き込まれていった。


一通り、水族館を回り終えた頃、タイミングよくイルカショーが始まるというアナウンスが流れた。


「見たい!行こう!」

彼女の楽しそうな声に押され、俺たちは急いで観客席に向かう。


ショーが始まり、イルカたちが華麗にジャンプしたり、観客の拍手に応える姿に、山岸さんは心底楽しんでいるようだった。


「すごいね!イルカってこんなに頭いいんだね!」


「だね。こんな間近で見るの初めてかも。」

そんな会話を交わしていると、不意にイルカが大きなジャンプをし、水しぶきが観客席に降り注いだ。


「きゃっ!」

山岸さんが軽く声を上げる。


俺は反射的に手を広げて彼女を庇おうとしたが、結局二人とも少しだけ濡れてしまった。


「ごめん、大丈夫?」

「あはは、大丈夫だよ。ありがとうw」


彼女は少し濡れた髪を払いつつ、微笑みを浮かべた。

その笑顔を見た瞬間、俺は心の中で思わず「可愛い」と呟いてしまった。


ショーを楽しんだ後、俺たちは水族館の出口近くにあるベンチに座り、少しだけ休憩を取ることにした。

「今日はありがとう!すごく楽しかった☆」


彼女がそう言って微笑むと、俺は思わず顔が熱くなるのを感じた。


「俺も楽しかった!また一緒に来たいな…」

自然と出た言葉に、彼女は少しだけ頬を赤く染めながら、静かに頷いた。


そんな彼女の横顔を見つめながら、俺は今日の思い出をずっと大切にしたいと思った。

この瞬間が、俺たちの距離をまた少し縮めてくれた気がしてならなかった。

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