第32話 Dead or Alive(後編)
一学期最後の学校が終わり、帰りに山岸さんとお茶をすることになった。
「何か、一学期終わるの早かったよねー!」
「うん、そうだね!」
山岸さんと話すようになってからの約一か月は本当に早く感じた。
体育館裏に呼ばれたあの日、間違いから始まった出会いだったけど、結果的には良かったと思ってる。
そういえば、あの日も今日と同じぐらい暑かったな。
帰りに長谷に呼び止められて、あの時は多分だけど同じクラスってことすら認識してもらえてなかった気がする…
冷静に考えて2か月以上、同じクラスで生活してたのに認識ないって、マジで存在感なかったんだろうな。
そう思うと悲しさ超えて笑えてきた。
「悠真どうしたの?」
「え?」
「ううん、なんだか嬉しそうな顔してたから☆」
ヤバい…顔に出てたか。
気持ち悪いって思われたかな?
「いや、何でもないよ!ちょっと思い出し笑い!」
「このタイミングで?ウケるーw」
山岸さんはいつものように笑った。
俺たちは正門を出て、喫茶店に向かった。
「なんか懐かしいねー☆」
「ん?」
「ほら!私が悠真を体育館裏に呼び出した日。あの日もめっちゃ暑くてさー、帰りにお茶したよね!w」
あー、そっか。あの日のことを山岸さんも思い出してたんだ。
「うん、あの時は本当に焦ったよ。俺、何か気に触るようなことしたのかと思って、怯えてた…」
「だよねー!ってか、普通に考えて誰から渡されたのかも分からないのに来るとか、悠真強すぎw」
いやいや、名前書かなかったの山岸さんじゃん!って突っ込もうと思ったが、俺はそのまま飲み込んだ。
「それ俺も思った!」
「でも、こうやって悠真と仲良くなれたし良かった☆」
「それは、本当に、うん。良かったって思ってる…」
俺はぐっと嬉しさを噛み締めた。
そして、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「ごめん。あの時の手紙…渡したい人には渡せたの?」
聞いた後、俺は波が押し寄せるような後悔に包まれた。
どうであれ俺が深入りすることじゃなかった。
「うーん。渡せた…と言えば渡せたのかな。」
そっか、渡せたんだ。
良かったという気持ちと切ない気持ちが交差する。
きっと手紙をもらった相手も山岸さんだったら、迷うことなく付き合うってなったんだろうな。
「でも、渡せただけ!付き合うとかそういう話にはならなかったんだよねーw」
「え…そうなの?」
俺は思わず大きい声を出してしまった。
てっきり、山岸さんなら成功すると思ってたから。
「うん、でもさ…私、やっぱりその人のこと諦めたくないんだよね。ってか、付き合えないとも言われてないから、まだ終わってない的な☆」
俺はどう反応すれば良いのか分からなかった。
「そっか!俺はそういうの疎いからアドバイスできないけど、応援するよ!」
あー情けない。
自分の本当の気持ちすら言葉にできないなんて。
でも、山岸さんに幸せになってほしい気持ちは嘘じゃない。
しばらく歩き、ようやく喫茶店に着いた。
今日は終わるのが早かったのもあり、同じ高校の制服を着ている人が多かった。
その時だった
「あれ?山岸じゃん!」
「げっ…お、お疲れ様ですー…」
あれ?いつもの山岸さんじゃない気がする。
ってか、今明らかに嫌がってたのでは?
「おいおい、何だよそれー。」
「いや、何でも…お久しぶりです。」
「久々に会った先輩にその態度とかなくね?w」
なるほど。どうやらこの人は山岸さんの先輩らしい。
態度から察するにあまり仲良い感じじゃないんだろうな。
「すみません…」
「まあいいけどさ!ってか、隣の冴えない君は誰?もしかして彼氏とか?w」
ちょ、俺に話を振るとか本当にやめてほしい。
「あ、あの、俺は山岸さんのクラスメイトと言うか、友達で…その、えっと…」
「うわー、マジでこういうやついるんだ!ウケるw」
完全にやってしまった。
俺のせいで山岸さんにまで嫌な思いさせてる。
「先輩!!彼を悪く言うのやめてもらえますか?」
「は?お前、誰に口聞いてんの?」
その時、店の奥の方から聞き覚えのある声が聞こえた。
「おーい、山岸どうしたー?」
声の正体は長谷だった。
「なんか良く分かんねーけど、困ってんなら加勢するぜ!」
山岸さんの先輩は長谷をチラッと見ると、舌打ちをして店を出て行った。
「長谷ありがとう!」
「いや、別に気にすんなって!さっきの二年生の佐伯だろ?」
「うん…私の中学の時の先輩でさー、昔だから苦手なんだよねーw」
そっか。山岸さんにも苦手な人いるんだ。
「あいつ入学式当日に洗礼だとか抜かして俺に喧嘩吹っ掛けてきたんだよ!返り討ちにしてやったけどよ!w」
長谷って、やっぱり喧嘩も強いんだな。
「ってか、黒瀬!隣にいたんだからお前がビシッと決めないでどうすんだよ!w」
「ご、ごめん…」
「まあ、あの状況じゃ実際キツイよな…」
全てを見透かされているような気がした。
「あの、山岸さん!俺なんかのために…ありがとう。」
「違うよ!もちろん悠真のためでもあるんだけど、私のためでもあるから☆」
「山岸!お前って友達思いなんだな!」
何はともあれ長谷の助太刀によって、その場は収束した。
「悠真!気を取り直してお茶しよ☆」
その後、俺は山岸さんとの時間を楽しんだ。
初投稿の作品になります。
社会人をやりながらの投稿なので不定期になりますが、最後まで書き上げられるように頑張ります。
いつかは書籍化やアニメ化なんて夢も見ていますが、素人なので温かいご意見だけでなく、厳しい意見もいただけると嬉しいです!
オリジナル作品ではありますが、その時に見ている漫画やアニメに影響されてしまうこともあると思います。すみません…
これから一生懸命書いていくので、読んでみて少しでも続きが気になったらブックマークや評価をお願いします!