第31話 Dead or Alive(前編)
今日は夏休み前日。
そして試験結果当日でもある。
つまり、今日の結果次第で夏休みが楽しいものになるか地獄になるか決まる…
「よーし、試験結果返すぞー。」
何だか先生は楽しんでいるように見えた。
「名前を呼ばれたやつから順番に取りに来い!ちなみに上に書いてある点数がお前たちの点数で、その下に書いてある点数が赤点ボーダーだ。じゃあ呼ぶぞー。青木ー」
先生は順番に名前を呼び始めた。
「よっしゃー!赤点なしー!!」
どうやら青木は赤点を回避したようだ。
「池田ー」
池田は結果を確認し、ホッとした表情をしていた。
おそらく赤点はなかったんだと思う。
次々と名前が呼ばれ、次は俺の番だ。
「黒瀬ー」
俺はすっと立ち上がり教壇の前に立ち結果を受け取った。
赤点は……よし、大丈夫だ。
そんなに心配はしていなかったが、思っていたよりも赤点のボーダーが高いな。
俺は山岸さんの結果が少し心配になった。
「次、小林ー」
小林さんは余裕のある表情で前に行き結果を確認すると、再び余裕の表情で席に戻った。
名前はどんどん呼ばれていく。
「芹沢ー」
芹沢さんは静かに立ち上がり、結果を受け取りに行く。
表情も変わらないから結果は分からなかった。
その後も名前は呼ばれ、喜ぶ人と落ち込む人のリアクションが顕著に出ていた。
「長谷ー」
「うーすっ!」
相変わらず声がデカい。
自信満々に前に出て、結果を見た長谷はこちらを振り返えり結果を見せつけた。
「すげーだろ!ほぼ赤点!!」
全員沈黙していたが、考えていることは同じだったと思う。
こんなやついるんだ…と。
そして、いよいよ山岸さんの番が来た。
「山岸ー」
山岸さんは唾を飲み立ち上がった。
すごい緊張してるのが遠目で見ても分かった。
「山岸、今回は頑張ったな。」
先生はそう言って、山岸さんに結果を渡した。
山岸さんは恐る恐る、結果を確認すると紙を二つ折りにしてポケットにしまった。
この反応どっちだ?
なんとも言えない反応と振り返った時の少し切なく見える表情が余計に不安を煽る。
俺は結果が気になり、山岸さんに視線を送り続けた。
ちょうど、俺の前を過ぎるぐらいの場所で山岸さんは俺の方をチラッと見て、小さくピースした。
俺はそれを見てほっとした。
正直、自分の結果よりも気になっていた。
俺はようやく肩の荷がおりた気がして、一気に力が抜けた。
「最後、渡邉ー」
全員が呼ばれ、先生が話し始めた。
「静かにしろー!って事で明日から夏休みだが、赤点だったやつは予定表を確認して、必ず補習に参加するように!赤点がなかったやつも羽目は外さないように!」
チャイムが鳴り、一旦休み時間に入った。
「悠真ー!見て見てー!!」
山岸さんは慌てて俺のところに来た。
試験用紙を見ると見事に赤点回避…と言いたいところだが、結構ギリギリだった教科もあるな。
「お疲れ様!頑張った甲斐があったね!」
「うん☆マジ悠真のおかげだよ!ありがとう!」
話をしていると、小林さんも来た。
「へー、マジで赤点ないじゃん!美羽が赤点ないとか奇跡じゃね?」
「でしょー!悠真が教えてくれたの!!」
小林さんは俺をギロっと睨んだ。
「ふーん、、黒瀬君だっけ?」
「は、はい。」
「いいやつじゃん!」
そう言って、小林さんはニコッと微笑んだ。
何となく怖いと思ってたけど意外といい人なのかもしれない。
その後、山岸さんは小林さんと何か話しているようだったが、ギャル通しの会話は付いていけない。
ってか、これ本当に日本語なのか?
チャイムが鳴り、ホームルームが始まった。
「席に着けー!さっきも行ったが明日かは夏休みだ。例年、夏休み中の事件事故が多発している。高校生と言っても、お前たちはまだ未成年だ。あまり遅い時間まで遊んでいると時間に巻き込まれる可能性も…(略)」
先生の話は長く、後半はほぼ誰も聞いていなかった。
ホームルームが終わり、池田が声をかけてきた。
「黒瀬、この後どうする?」
「今日は帰るかなー。夏休みの宿題の計画立てたいし。」
「真面目かよw」
話をしていると山岸さんと小林さんが近づいてきた。
「おつー☆悠真、この後予定あるー?」
「帰って、宿題の計画を立てようかと思ってる。」
その瞬間
「真面目かよw」
と鋭くツッコミを入れたのは小林さんだった。
「やっぱそう思うよね。こいつ昔から変に真面目なんだよなー!」
「まあ悪い事じゃないけどウケるw」
何故か池田と小林さんが盛り上がる展開になっていた。
「そっかー、これから楓とお茶しよって話になって一緒にどつかなーって思ったんだけど。」
間髪入れずに池田が言った。
「別に計画なんて明日でも良くね?」
「まあ確かに。」
「よし!じゃあ行ってらっしゃい!」
かなり強引にも見えるが俺の考え過ぎか?
「池田君も一緒にどう?」
「ごめん!俺は咲と約束してて今日はパス!」
「そっかー!じゃあまた今度ね☆」
そういうと、池田は教室を出て行った。
そして、今度は小林さんの携帯が鳴った。
「はい。あー、そうなんっすね…分かりました。今からだと20分ぐらいあれば、はい。了解っすー!」
「楓ー、大丈夫?」
「ごめん!バイトが風邪で休みっぽくて行かなきゃいけなくなった!マジごめん!また埋め合わせするから!」
そう言って、小林さんは走って行ってしまった。
「2人になっちゃったねw」
「そ、そうだね。」
「いっか☆二人でお茶しよ!」
そして一学期最後の放課後も山岸さんと過ごすことになった。
初投稿の作品になります。
社会人をやりながらの投稿なので不定期になりますが、最後まで書き上げられるように頑張ります。
いつかは書籍化やアニメ化なんて夢も見ていますが、素人なので温かいご意見だけでなく、厳しい意見もいただけると嬉しいです!
オリジナル作品ではありますが、その時に見ている漫画やアニメに影響されてしまうこともあると思います。すみません…
これから一生懸命書いていくので、読んでみて少しでも続きが気になったらブックマークや評価をお願いします!