第25話 続・勉強会(後編)
俺たちは駅に向かって歩いていた。
空は薄暗く、住宅街はなんとなくいつもより静かだった。
「悠真、今日もありがと☆」
「うん。山岸さんすごく頑張ってるし、この調子なら試験に間に合うと思う。」
「本当!?よし!頑張るぞー☆」
山岸さんは嬉しそうに俺の少し前に出て、後ろ向きに歩いた。
その時、山岸さんは躓いて倒れそうになった。
「危ない!」
俺は慌てて、背中に手を回して支えた。
「山岸さん!!大丈夫?」
「ごめん。大丈夫…ありがとう。」
思った以上に近い距離で目が合い少し恥ずかしかった。
山岸さんは立ち上り、俺は支えていた手を離した。
「痛いところない?」
「う、うん…大丈夫。ごめんね!」
怪我がなくて良かった。
俺たちはその後も何気ない会話をしながら駅に向かった。
昨日と同じ信号で足が止まった。
「あれ?昨日もこの信号、赤だったね!」
「うん。この信号、赤の時間が長いんだ。」
「そうなんだー。じゃあ、あと何秒で青になるか予想しようよ!」
懐かしい。こういうの小さい時にやったな。
「うん、いいよ!」
「じゃあ、私は15秒!悠真は?」
「俺は20秒で。」
俺たちは一緒に秒数を数えた。
「1、2、3、4……12、13、14、15」
その時、信号は青に変わった。
「ねえ!見た?ぴったり15秒!!」
山岸さんはキラキラとした笑顔ではしゃいでいた。
「はい!じゃあ罰ゲームは私の言うことを1つ何でも聞く☆」
「え!そんなの聞いてないよ!」
「うん!今言ったw」
強引な山岸さんに俺は押し負けた。
でも、こういうの結構楽しい。
笑いながらそんなやり取りをしていると駅に着いた。
「じゃ、気を付けて!」
「うん!ありがとう☆また明日ね!」
山岸さんが手を振りながら駅の反対口に向かって歩きだし遠ざかっていく。
見送りを終え、帰ろうとした時、大きな雷とともに急に雨が降り出した。
恐らく、通り雨だと思うが横殴りのゲリラ豪雨だった。
そして、遠ざかったはずの山岸さんが戻ってきた。
「ごめん、悠真…私さー、雷とかマジ無理なの!」
「あーえっと、家まで送ろうか?」
山岸さんはニコッと笑って俺の手を引いた。
「ごめん!お願い☆」
急に手を握られた驚きと、山岸さんの可愛い笑顔に鼓動が止まらない。
心臓の音が外に漏れてるんじゃないかと不安になるぐらいドキドキしている。
「傘、買った方がよさそうだね。」
「私、折りたたみ持ってるから一緒に入る?」
つまりそれって、そういうことだよな。
今日は何だかドキドキしっ放しだ。
「実はさっき躓いた時に足首捻っちゃって、私としては隣にいてもらった方が助かるというか…」
「え!ごめん気が付かなくて。」
「違うの!さっきまでは本当に平気だったんだけど…」
結局、俺は山岸さんの傘に入り、玄関先まで送り届けた。
雨の勢いはさっきよりも増し、雷も鳴り響いていた。
「今日は家まで送ってくれてありがとう☆」
「うん。足は大丈夫?」
「まだ少し痛いけど、大丈夫!」
その時だった、大きな音ともに稲妻が空を走り昼間みたいに空が明るくなった。
山岸さんは反射的に抱き着いてきた。
「ご、ごめん!」
と言い慌てて離れた山岸さんのシャツは雨で濡れて、下着が薄っすらと透けていた。
俺は目を逸らし見て見ぬふりをした。
「じゃ、俺は帰るね。」
山岸さんから大きめの傘を借りて家に帰宅した。
帰る途中、山岸さんからLINEが来た。
「雨大丈夫(;´・ω・)?止むまでうちで雨宿りしてもらえば良かったなって、今更思ったw」
「心配ありがとう。雨も小降りになってきたから大丈夫だよ!」
ってか、山岸さんの家に入るとか想像するだけで死ぬ。
「そっか!送ってくれてありがとう☆私はお風呂入ったら、今日教えてもらったところの復習する!やっぱり英語苦手だよー(。-`ω-)」
「頑張れ!しっかり覚えられてたから自信もって!」
なんだか今日の雨は不思議と晴れの日よりも清々しい気持ちだった。
初投稿の作品になります。
社会人をやりながらの投稿なので不定期になりますが、最後まで書き上げられるように頑張ります。
いつかは書籍化やアニメ化なんて夢も見ていますが、素人なので温かいご意見だけでなく、厳しい意見もいただけると嬉しいです!
オリジナル作品ではありますが、その時に見ている漫画やアニメに影響されてしまうこともあると思います。すみません…
これから一生懸命書いていくので、読んでみて少しでも続きが気になったらブックマークや評価をお願いします!