第21話 曇り空の下で
翌朝、空はどんよりと曇っていて、曇り空が心にまで影を落としたように、なんとなく気持ちが沈んでいた。髪型もうまく決まらず、些細なことにもイライラしてしまう。
俺は支度を終え、重たい足取りで学校に向かった。途中、山岸さんに会った。
「山岸さん、おはよう!」
「あ!悠真、おはー☆」
あの日以来、山岸さんを意識するようになったが、以前よりも普通に話せるようになっていた。
「悠真、元気ないけど、大丈夫?今日…あのこと、伝えるんでしょ?」
「うん。大丈夫。ありがとう。」
どうやって傷つけずに伝えればいいかを考えていたが、傷つけない方法なんてないと心のどこかでわかっていた。
教室に入ると、芹沢さんはもう席について本を読んでいた。俺を見ることなく、明らかに距離を置かれているのがわかった。
鞄を置き、意を決して芹沢さんの席に向かう。
「芹沢さん、おはよう。」
芹沢さんは一瞬だけ俺を見て、すぐに視線を本に戻した。
「あの、芹沢さん…少し話せないかな?」
彼女は大きなため息をついた。
「昨日のことなら忘れて。」
「いや、でも…」
「もういいって言ってるでしょ!」
芹沢さんは怒りを隠しきれず、声を荒げて教室を飛び出した。
教室内がざわめいたが、池田と山岸さんが周りにフォローしてくれた。
「悠真!早く行ってあげて!」
山岸さんの言葉に背中を押され、俺は芹沢さんを追いかけた。
屋上にたどり着くと、芹沢さんが肩を震わせて泣いていた。
「あの、芹沢さん…」
「どうして、放っておいてくれないの!」
俺は返す言葉が見つからなかった。
「好きじゃないなら優しくしないで!」
「ごめん。でも、ちゃんと話さなきゃと思って…」
俺の言葉に少し落ち着いたのか、芹沢さんは顔を上げて俺に向き直った。
「わかった。話したいなら、聞くよ。」
どう伝えるべきか迷ったが、考え抜いた末に思っていることをそのまま伝えることにした。
「まずは、俺なんかを好きになってくれてありがとう。正直、嬉しかった。だから、ちゃんとお礼を言いたかったんだ。」
芹沢さんは俯いたままだった。
「でも、やっぱり付き合うことはできない。俺は真剣に考えたんだ。好きって気持ちがないまま付き合うのは、お互いに失礼だと思う。」
「何それ…」
「本当、何それだよな。でも、俺はそう思うんだ。この先、俺が好きになった子が俺を好きになってくれる保証なんてないのに、こんな風に理想を求めるのは変かもしれないけど…」
「いや、そこまで言ってないけど。」
芹沢さんは少し笑いながら、俺を見た。
「でも、ごめん。芹沢さんとは付き合えない。」
芹沢さんは俺の話を静かに聞いた後、ふっとため息をつき、俺を睨みつけるように見た。
「あーあ、返事なんて要らないって言ったのに。振られたら片思いすらできなくなっちゃったじゃん!」
「え?」
「冗談だよ。答えなんか最初から分かってたし。黒瀬君、山岸さんのこと好きなんでしょ?」
すべて見透かされていた。
「隠さなくてもいいじゃん。ってか、全然隠せてないし。」
「いや、その…」
動揺してうまく言葉が出てこない。
「私、応援してるから!告白したのは気持ちを整理したかっただけだし。付き合えたらラッキーって思ったけど、無理だって最初から分かってたし。だから、本当に気にしないで!」
芹沢さんは笑顔でそう言ってくれた。
泣いた後の芹沢さんは、眼鏡を外していて、その笑顔はいつもよりも眩しく見えた。
昔もこんな風に笑っていたのかもしれない。
「ごめん。もう少し外の空気を吸いたいから、先に教室に戻ってて。」
「あ、うん。わかった。先に戻るね。」
俺は少し重たい屋上のドアを押し、教室に戻った。
教室に戻ると、騒ぎは落ち着いていた。
「大丈夫かよ!」池田が真っ先に駆け寄ってきた。
「ああ、大丈夫だと思う…」
「ならいいけど。困ったら言えよ!」
そう言い残して池田は席に戻った。
その時、携帯が震えた。山岸さんからのLINEだった。
「悠真、大丈夫だった?」
「心配かけてごめん。あと、ありがとう。芹沢さんには気持ちを伝えて、理解してもらえたと思う。」
「そっか、それなら良かったけど。急に大きい声出すから驚いちゃったよ。力になれることがあれば言ってね!」
ちょうどその時、チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。
「はーい、席に座れー。」
その呼びかけと同時に、芹沢さんも席に戻ってきた。目が少し腫れているものの、何事もなかったかのように席に着いた。
初投稿の作品になります。
社会人をやりながらの投稿なので不定期になりますが、最後まで書き上げられるように頑張ります。
いつかは書籍化やアニメ化なんて夢も見ていますが、素人なので温かいご意見だけでなく、厳しい意見もいただけると嬉しいです!
オリジナル作品ではありますが、その時に見ている漫画やアニメに影響されてしまうこともあると思います。すみません…
これから一生懸命書いていくので、読んでみて少しでも続きが気になったらブックマークや評価をお願いします!