第15話 デート当日(中編)
振り返ると、そこに居たのは芹沢さんだった。
「やっぱり、黒瀬君だ!」
「あ、こんにちは。」
これは流石に偶然…だよな?
「黒瀬君、こんにち…えっ!山岸さん?」
芹沢さんは山岸さんを見て、少し驚いた様子を見せた。
「こんにちは☆芹沢さんも買い物?」
「え、はい。そんな感じです。」
なんとなく芹沢さんの表情が曇った気がした。
「ねえ、二人は一緒に買い物してるの?」
「うん☆そんな感じ!私が強引に…みたいな!w」
山岸さんは隠すつもりはないようだった。確かにこの状況で否定する方が不自然か。別に悪いことでもないし。
「そうなんだ。なんか、邪魔しちゃったかな…」
「えー全然そんなことないよー!」
「ごめんなさい、私急いでるから…」
そう言うと、芹沢さんは走るようにその場から去っていった。
山岸さんは、きょとんとした顔で立ち去っていく芹沢さんを見つめていた。
「ふーん、そういうことね☆」
「え、そういうことって?」
俺は状況を理解できていなかった。
「えー!今の芹沢さん見て、何も感じなかったの?w」
「え、うん。」
「鈍感すぎーwあの感じ、絶対に悠真のこと好きでしょ!」
俺は突然のことで顔が真っ赤になった。
「ってか、悠真って芹沢さんと知り合いだっけ?」
「いや、知り合いってほどじゃないけど、たまに話す程度かな…」
俺は咄嗟に嘘を付いてしまった。本当のことを話してしまえば芹沢さんとの約束を破ることになるし、仕方なかった。
「ふーん、ってことは一目惚れ…なのかなー。」
山岸さんは独り言のようにそう言うと再び歩き始めた。
「で、悠真はどうなの?もし、芹沢さんが悠真を好きだったら付き合うの?」
「え、いや。それは…付き合わない…と、思う。」
この瞬間、俺は自分の気持ちに気が付いてしまった。山岸さんのことが好きなんだと…。
「いや、もし好きでいてくれたとしたら素直に嬉しいと思う。俺みたいな陰キャにとって、それ自体が奇跡的だと思うし、そもそも俺が選べる立場じゃないのにって思ってる。でも、付き合うなら俺もその子のことを好きって思えないと失礼かなって思うんだ。」
今の自分、なんかめちゃくちゃキモいな…俺は慌てて訂正しようとした。
「な、なーんてね!俺みたいなやつは何言ってんだ感じだよね。」
「そんなことない!悠真凄いよ!私、今まで付き合ってきた彼氏と1ヶ月以上、続いたことないんだよねー。付き合ってる時は楽しいし幸せって思ってたけど、今思えば、本当の意味で好きではなかったのかもしれないなって…だから、悠真の話聞いて、めちゃ大人だなーって思った☆」
なんだか俺は山岸さんの役に立てた気がして嬉しかった。
しばらく歩くと目的のお店に到着した。まさにギャルって感じのお店で、完全に俺は浮いている気がした。
「いらっしゃいませー!」
「あ、柴田さんおひさー☆」
「あら、美羽ちゃん、いらっしゃい!」
なるほど。どうやら、ここも行きつけのお店らしい。
山岸さんは目当ての服を見つけると、嬉しそうに手に取り試着室へと向かった。
「悠真ー!着替えるから、ちょっと近くで待っててー☆」
「あ、うん。」
俺は試着室の近くで山岸さんが着替えるのを待っていた。数分後、試着室のカーテンが開いた。
「じゃーん☆どう?似合うかな?」
俺はまた見惚れてしまった。
「う、うん!凄く良いと思う。似合ってる!」
「えー嬉しいー!じゃ、これにしよっかな☆」
元の服に着替えた後、お会計をしてお店を出た。山岸さんは満足げで嬉しそうだ。
「ふふーん☆」
弾むように歩く姿を見て、可愛いと思ってしまった。
「あの…良い服が買えて良かったね!あと、俺の服も選んでくれてありがとう。」
「うん☆めちゃ気になってた服だから買えてよかった!付き合ってくれてありがと!」
楽しい時間は過ぎるのが早い。気が付けば時間は13時を過ぎていた。
「悠真ー、そろそろお腹空かない?」
「あ、もうこんな時間なんだね。何か食べようか。」
「うん!実はちょっと行きたいところあるんだけど良い?」
駄目な訳がない。むしろ先導してくれるのは俺としてもありがたい。
「あ、うん!気になるなら行ってみよう。」
「やったー!絶対行きたかったんだよねー☆」
目的の場所まで話しながら歩いていると、昨日行った美容室の前を通りかかった。ちょうど、そのタイミングで坂上さんがお見送りで店から出てきた。
「ありがとうございましたー!」
見送った後、坂上さんがこちらに視線を向けた。
「あ!坂上さんだ☆」
最初に言葉を発したのは山岸さんだった。
「お、美羽ちゃん!こんにちは。そちらは彼氏さん?」
「違うよー!同じクラスの男の子☆今日は私が強引に連れまわしてます!w」
坂上さんは明らかに俺に気が付いている様子だった。
「学校休みなのに君も美羽ちゃんに振り回されて大変だね!w」
「いや、俺は、その…すごく楽しいです!」
山岸さんは俺を見つめ、きょとんとしていた。
「何それwそんな声高らかに言われると逆にハズいんだけどw」
「まあまあ、彼が楽しいならいいんじゃないの?ね!」
坂上さんはそう言うと、俺にアイコンタクトを送ってきた。
「で、これからどこに行くの?」
「坂上さんには秘密―☆」
「はいはい、まあせっかくの休み楽しんで来なよ!」
そんな想定外な出来事もありつつ、ようやく目的地に到着した。
初投稿の作品になります。
社会人をやりながらの投稿なので不定期になりますが、最後まで書き上げられるように頑張ります。
いつかは書籍化やアニメ化なんて夢も見ていますが、素人なので温かいご意見だけでなく、厳しい意見もいただけると嬉しいです!
オリジナル作品ではありますが、その時に見ている漫画やアニメに影響されてしまうこともあると思います。すみません…
これから一生懸命書いていくので、読んでみて少しでも続きが気になったらブックマークや評価をお願いします!