第1話 手紙
夏の暑い日、気温は40度近くまで上がっている。
俺はクラスで特に目立たない存在で、静かに学校生活を送っていた。
そんな俺が、なぜか同じクラスの一軍ギャルに体育館裏へ呼び出されていた。
「………」
山岸さんはじっと俺を見つめ、何か言いたそうな雰囲気を漂わせている。
俺は不安を感じながら声をかけたが、山岸さんは少し不機嫌そうで、どこか怖さを感じさせた。
「あ、あの…山岸さん、俺に何か用ですか?」
「………」
山岸さんは黙ってじっと俺を見つめ続け、その状況に俺は変な緊張感を覚えた。
「お、お、俺、な、何かしました?」
「は?」
「ご、ごご、ごめんなさい。でも、あの、下駄箱に体育館裏に来るように手紙が入ってたから。」
「え?マジ?あー、それさ…んー、入れ間違いだった!ごめん!」
山岸さんは恥ずかしそうに頬を赤らめ、少し照れくさそうな笑顔を見せた。
「ってか、黒瀬君だっけ?私たち話すのって初めてじゃない?」
「そ、そうだね。俺はクラスでも目立たない方だし、山岸さんとは席も遠いから。」
その場ではそう答えたが、実は山岸さんと話すのはこれで2回目だった。
初めて話したのは高校入学初日。登校すると俺の机の上に山岸さんが座って友達と話していた。
陰キャの俺は、何も言えずにただ見ているしかなかった。
それに気づいた山岸さんは俺に向かって、
「さっきから何こっち見てんの?」
「あ、い、いや、何でもないです。」
「え?キョドってんの?ウケるんだけどw」
これが山岸さんとの初めての会話だった。
入学初日だったこともあり、俺自身もあまり思い出したくない出来事だ。
「ってか、手紙読んじゃったんだよね?」
「う、うん…」
「うわー、マジで恥ずかしいんだけど。」
山岸さんはバツが悪そうに少し下を向いて、下唇を噛みしめた。
俺はそんな山岸さんを見て、不覚にも「可愛い」と思ってしまった。
「で、でも、このことは誰にも言ってないし、入れ間違いなら手紙返すから、また入れ直せばいいよ!そもそも俺が受け取るものじゃなかったなら、このまま持っているのも違うし、山岸さんもその方が安心するでしょ?それでも不安なら、手紙のことも今日のことも、俺の記憶から抹消するよ!」
あー、またやってしまった。陰キャ特有の早口が出てしまった。
「あ、ありがとう…黒瀬君って優しいんだね。あと、ちょっと喋り方独特w」
え?今、「ありがとう」って言った?
女子から、しかも俺とは住む世界が違いすぎるギャルから…俺は一瞬フリーズした。
「おーい!大丈夫?」
「あ、うん。ごめん。」
「何で謝るの?黒瀬君は何も悪いことしてないじゃん!」
「あ、ごめん。」
「ほら、また謝ってる!そもそも今回の件って私が原因だし、こっちこそごめん!」
山岸さんの言葉に、俺は安心感が広がり、誤解していたことに気づいた。
陽キャで一軍の山岸さんは、陰キャの俺なんか視界に入れてないと思っていた。
でも実際に話してみると、ちゃんと向き合ってくれて、人として接してくれる優しい子だった。
俺はそれだけで嬉しくて、間違いでも今日、呼ばれて良かったと心から思えた。
「一緒に帰らない?」
「え…?」
「ほら、今日は時間使わせちゃったし、お茶ぐらい奢るよ!」
「え、えーーーー!」
こうして、俺は人生で初めて女子とお茶に行くことになった。
初投稿の作品になります。
社会人をやりながらの投稿なので不定期になりますが、最後まで書き上げられるように頑張ります。
いつかは書籍化やアニメ化なんて夢も見ていますが、素人なので温かいご意見だけでなく、厳しい意見もいただけると嬉しいです!
オリジナル作品ではありますが、その時に見ている漫画やアニメに影響されてしまうこともあると思います。すみません…
これから一生懸命書いていくので、読んでみて少しでも続きが気になったらブックマークや評価をお願いします!