第5章 魔王軍の計画
最後まで読んでいただけると幸いです。
誤字脱字、表現方法の指摘をいただけると幸いです。
〜新生魔王軍・本拠地 “?????”〜
バァアアアンッ!!!
「たっだいま〜! 意外と沢山収獲できたよ〜!」
「うるさいわい! もうちと静かにせんかっ!! それと遅刻じゃぞっ!」
この声の主、テンは軽快にステップを踏みながら一つのドアを豪快に開け放った。
その声に反応して、一人の老いた魔人が罵声を上げる。この老魔人を合わせ、部屋の中には8人の魔人がいた。これは魔王軍、天魔八部衆の集まりである。
「ごめんごめんー! そんなに怒んないでよ〜、ヤシャ爺ぃ〜! てかみんな来るの早すぎ!」
「お前が遅いだけだ。早く座れ」
今度は長身の魔人が冷たく言い放った。先程の老魔人はヤシャという者で、この天魔八部衆の中では2番目に長く、生きている。
「では、今日の会議を始めるね。司会は私、カルラね。まず、出席確認からするね。呼ばれたら返事するね。アシュラ」
「おうっ!」
「ガンダルヴァ」
「は〜い」
「キンナラ」
「っす」
「テン」
「ん、いるよー」
「マゴラガ」
「いるわよ」
「ヤシャ」
「うぬ」
「リュウ」
「ああ」
「ほい、全員いるね。じゃ、会議を始めるね。まず、テンの報告ね」
一通りの出席確認を終え、会議が始まった。
この魔天八部衆は魔王軍の中で魔王に次ぐ実力を持っている者たちの集まりだ。一言でいうと最高戦力。
魔王軍を階級別的に示すと、魔天八部衆→執行官→軍隊長→軍副隊長→魔兵など、となる。前は魔王が直々に軍を動かしていたが、今は魔天八部衆が主に軍を動かしている。
「えー、魔王様復活のために必要な“人間の魂”だけど…、約8割集まりました〜! ハイ拍手ー!」
「………」
「ちぇー、みんな乗り悪いな〜。はい、本題に戻るが、これは今までの積み重ねが功を成したと俺は思う。あの死にそうな重労働…、思い出しただけでも吐き気が…!」
テンが騒ぎ立てているが、全員にスルーされていた。テンは八部衆の中で一番若く、お調子者のため、全員彼のテンションについていけないようだった。
「テンよ、落ち着け。カルラ、進めてくれ」
「ん、じゃ、次、ガンダルヴァね」
リュウは冷静沈着でこの八部衆の中で一番長く生きている。
彼の発言は、鶴の一声のような存在であった。噂によると、リュウは元々龍族だったようだが、詳細は不明である。
「はいはーい! えっとね、あたしからは2つ報告があるんだ! 1つ目はね、あれについてのことなんだけど…」
〜その頃の勇者一行〜
「おいー! なんでここの転移装置はぶっ壊れてんだよ!」
「まぁまぁ、落ち着けよ、メラ。どうせもうすぐ着くんだから、歩くよ!」
騒ぐメラを引っ張りながら街をあとにする。
全く、すぐ楽しようとするんだから、このドラゴンは!
メラをサクラに預け、僕は街で買った地図を開く。
この地図、最新機能である、現在位置から目的地までの距離とかかる時間がわかる機能が搭載されていて、滅茶苦茶便利なんだよ。
僕は、現在位置と目的地を入力し、時間を見る。
かかる時間はあと2時間と出た。
僕はメラとサクラにあと2時間である旨を伝え、出発した。
街を出てから数十分たっただろうか。突如、大きな棍棒が天から降ってきた。
「ん? うぉああっ?!!」
ズガァアアン…!!!、という爆音が響き、地面が裂けた。
えぇー…、何? 怖いんですけど…。
僕はすかさず探索者で解析する。
土煙が晴れ、元凶が姿を現す。
「クロム、大巨鬼だわ!」
サクラが少し怯えた口調でそう言う。
探索者の解析結果によると、
種族:大巨鬼
属性:岩
全長:20m
主要能力:全力打撃
だそうだ。
今の僕でも十分倒せる強さらしい。
「こいつは、街に被害を出してるって言ってたから倒すぞ! メラ、サクラ、行くよ!」
紋章開放10%!!!
“風足”で飛翔して、大巨鬼の弱点である顔面に接近を試みる。
メラは“灼熱龍化”で龍の姿に変身して、参戦していた。
サクラはこの間吸収した“巨大怪鳥”の羽だけを背中に生やし、飛翔していた。
サクラは器用だな…。おっと、集中集中!
“神之聖剣”!!!
“神之聖剣”、この能力は、聖なる力を纏い、追跡機能がある剣を無数に生成して、相手に放出する不可避の裁きである。
放たれた聖剣が大巨鬼の顔面に突き刺さり、苦痛の叫びを上げている。
それに追い打ちをかけるようにメラが“忘却の光線”というヤバそうな光線を放ち、大巨鬼が跡形もなく消滅した。
光線は止まることを知らず、遥か遠方の山を三日月型に吹っ飛ばした。
えー、うちのメラがすみません!! ご迷惑おかけしました!!
「おいー!! メラ! その技使うの禁止! つかそんなやばい技どこで覚えたんだよ!」
「す、すまねぇ…、へへっ…。 この技は、いつの間にか使えるようになってて…。ほんとごめんな?」
いつものお調子気は失せてほんとに反省しているようなので、今回は許すことにした。
だけど、あの山、どうしようかな…。治すにしてもなぁー…。ま、いいか。諦めよう!
「あの山は、なんか言われたら謝ればいいや。さ、行こうぜ」
メラには罰として、“灼熱龍化”のまま、僕とアリスを乗せて、目的地まで飛んでいってもらった。
メラは炎を力を駆使し、ジェット機みたいなものすごい速さで飛翔した。
ちょ、早すぎぃいいい!!
皮という皮がブルブルして、今の自分の顔が変なのになっていると想像すると笑えてきた。
サクラはサクラでスライム姿に戻っていて、スライムの体がプルプル波打っていて可愛かった。
おっと、別に変な意味じゃないよ? ほら、犬が可愛いって言ってるみたいなもんだよ。
「メ、メラッ! もう、すぐ着くから、スピード、お、落としてー!!!」
「オッケーだぜ!」
メラがいきなり、スピードを落としたため、サクラが慣性の法則で前方に吹っ飛んでいった。
ん? なんか一瞬水色の物体が前方に飛んでいかなかったか?
不審に思い、横を見る。
そこには、いるはずのサクラが消えていた。
俺はメラから飛び降り、サクラを捜しに行く。
あ、あれか…! 大丈夫そうだな。
サクラは以前同様に、羽を生やし飛翔していた。
「ちょ、あっぶなかったんだからね〜!!! メラに文句言ってくる!!」
ほ、良かった。元気そうだ。
しかし、メラも運が悪い。本日2度目の失敗である。
まぁ、失敗は成功のもとって言うし、メラもこの失敗に学ぶものがあっただろう。
これは必要な経験だったんだ。うん。
僕はメラの背中に戻り、サクラをなだめ、出発した。
〜数分経過〜
メラはの速さはかなり早く、予定より1時間以上早く着いた。
いやー、メラにはこれから運搬係としてチームに貢献してもらおうかと思ったが、魔力が余ってたらいいと若干拒否られた。
メラが討伐されそうなので、近くの森に着陸し、カーゼニアム自由国に入国するべく歩を進めた。
読んでいただきありがとうございました。