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勇者転生記  作者: けんくるる
風の世界編
4/7

第3章 魔王軍の思惑

どこかに問題がありましたら、コメント下さい!





 勇者一行は新生魔王軍の情報を集めるため、風の世界にある王国、ウィンディア王国に向けて歩を進めていた。

 これはその道中にあった出来事である。


「なぁ、そーいえばさ。クロムはどうして冒険してるんだ?」


 メラがそう質問してくる。あれ? 言ってなかったっけ? 

 僕は手短に説明した。メラは理解してくれたようで、役に立てるように頑張るぜ、と張り切っていた。いやはや、頼もしい限りだ。


「しーっ、静かに… なにか聞こえるわ」

「あっ、ホントだ。だけど何言ってんだか全然わかんないぜ…」


 サクラとメラがが何かを聞き取ったようで警告してくる。

 いや、僕の耳には何も聞こえないんだが… 魔物の五感ってすごすぎない?

 クロムたちは慎重に音のする方へ進んでいくと、やっとクロムの耳にも聞こえてくるようになった。


「op@.0x,m,9xc2mx,9-z。 :***]:03^2-2-0941[x.z1@¥¥¥¥¥¥So.x0,3m2-,?」


 何がなんだかわからない暗号のような会話が聞こえてきた。

 これは確か、魔王軍特有の秘密暗号って女神様が言ってたな。未だ解明されてないんだとか…

 クロムたちが様子を見ていると、後ろから音が聞こえてきた。


「ギャギャッ!! ピュイ〜〜〜〜〜!!!!!」


 監視兵がクロムたちを見つけ、警笛を鳴らすと、次々と魔物が集まってきた。


「やっべ、見つかっちゃった! やるよ、サクラ、メラ!」


 サクラとメラのコンビネーションは抜群で、どんどん敵をなぎ倒していった。と、その後ろから妙に妖気(オーラ)のでかい魔物が出てきた。どうやら大巨魔族(ボストロール)のようだ。

 おっ、ボスが出てきたみたいだな… じゃあちょっと本気出していきますか!


「“稲妻黒斬(ブラックサンダー)”!!!」

 

 稲妻黒斬(ブラックサンダー)とは、スキル“雷之神(らいじん)”の中のスキルの一つで、武器に電気を纏わせ、雷より早く敵に近づき滅殺する、奥義級の技である。

 クロムの斬撃が敵に当たり、黒い閃光を放つ。光が収まると、辺り一帯は焼け野原になっていて、敵影は無くなっていた。

 あちゃー、やりすぎちゃったかな… あっ、サクラとメラは大丈夫だったかな…


「ちょっと、クロム! やりすぎよ! 私達まで死にかけたじゃない !」

「全くそうだぜ! 少しは手加減とかしろよな!」


 サクラとメラが口々に文句を言っている。

 手加減って言われてもなー… 後で練習しよ。   っ! 何だこの妖気(オーラ)! 今まで会ったどのやつよりも邪悪だ… 一体どこから… はっ!


「サクラ! 危ない!」


 と言ったがもう遅く、サクラの体が宙を舞ったかと思ったら、地面に叩き落されていた。


 パンッ!!     ドォオオオン!!


 メラが慌てて駆け寄り、回復薬(ポーション)をかけると、回復したようで起き上がってきたが、ダメージが大きく思うように動けずにいた。

 僕はサクラを抱えて、近くの木にそっと置き、サクラを傷つけた奴を見る。


「や、君が勇者かい? 覚えてる? 俺のこと。って言っても俺を倒したのは君じゃなくて君の仲間だけどね。じゃあ、自己紹介しとこっか。俺の名前はテン、魔天八部衆が一人だ。以後お見知りおきを。あ、さっきのは挨拶代わりね」


 テンとかいう魔人が淡々とそういった。僕はスキル“探求者(シリタガリ)”で、テンの能力を解析した。

 悪魔人貴族(デビルデーモンロード)。得意属性、炎、闇、雷、水。魔力量、測定不能。体力、測定不能。攻撃力、測定不能。……  総合評価、今の状態の自分より上。

 なるほどね、()()()()じゃあいつには敵わないってわけだ。だけど、()()()()()()すれば…


「どーもご丁寧に自己紹介ありがとうございます。僕の名前はクロム。言っとくが、お前は許さない。仲間を傷つけた落とし前はきっちりつけてもらうからな!」


 すると、突然テンが笑い出した。


「ハッハッ、そういえばそういう種族だったな、お前たち人間は。誰かが死ぬとすぐに魔物のせいにする。そうやっていつも悪者にされるのが魔物だ。それを何千年とやられ続けたらそりゃグレちゃうよな〜! ま、それは大昔の話だ。今の俺達は、正真正銘の“悪”だ。手加減はしないぜ?」


 テンの目が妖しく光り、メラが震えだした。

 正直言って勝ち目はあるかもわからない、が、そんな状況なのに、僕の体は妙に冷静だった。


「メラ! サクラを連れて王国まで行ってくれっ! 戦いに巻き込まれるぞ!」


 メラは震えを気合で止め、サクラを連れて飛び出した。


――あーあ、王国に行かれちゃったか… ま、あいつらに止められるわけ無いけどね 今は勇者に専念だ


 テンはニヤリと笑みを浮かべ、こちらを見据えてくる。

 あいつなにか企んでる? そんな事はどうでもいい、今は奴を倒すことだけに集中! よーし、女神様に教えてもらったこの()()()()、使ってみますか…!


「はぁ!!!」


 紋章開放10%!!!


 ドンッという衝撃波とともに凄まじい妖気(オーラ)が出現する。テンは慌ててクロムの方を見て驚愕する。こいつ…、さっきまでの妖気(オーラ)より格段に質が上がっているだと?! と。

 クロムを纏うように周りに漂う激しい妖気(オーラ)が落ち着いた。

 お、これはいいんじゃない? なんかめっちゃ色んな色が妖気(オーラ)になっててかっこいいんですが! だけど、ちょっと体に負荷がかかるな… 早めに決着をつけよう。


「フッ、フハハハッ、これが魔王様の言っていた“勇者の紋章”の力か! 面白い! こっちも全力で行くぞ! 中途半端な力の開放だと後悔するぜ!」


 中途半端な力、か。悔しいが、今の僕には10%の開放が限界なんだよ… だけど、10%でもこれだけの魔力量、能力値の大幅アップ、さらにいままでロックされていた一部の“能力(スキル)”の使用可能…、これ以上開放したらそれ相応の負荷がかかる。今はこれでいくしかない。

 クロムとテンは構え攻撃態勢に入る。先手はテンだった。


「“地獄の魔炎(ヘルフレイム)”!!」


 “攻撃反射(カウンター)”!!


 テンはクロムの真下に魔法陣を展開し、すべてのものを焼き尽くす地獄の炎を召喚した。が、クロムの紋章の力によって開放された能力(スキル)、“攻撃反射(カウンター)”によって炎は吸収され、テンに向かって発射された。

 よし! どうだ…?

 炎が収まり、見るが、どこにもテンの姿が見えなかった。

 っ! どこだ! 妖気(オーラ)は微かに感じる…、姿を消す能力(スキル)を使ったのか?

 後ろを向くと、テンが魔法陣を展開していた。


「こっちだよー! はっ!」


 “地獄の稲妻(ヘルサンダー)”!!


 ズガァァン!!!という激しい音が周囲に響き渡る。クロムは地獄の稲妻(ヘルサンダー)をまともに喰らい、かなりのダメージを負った。

 ぐっ! いてて、くそー、いけたと思ったんだけどな〜。体のダメージは“自己再生”でなんとかなるとして、どうやって奴を倒そうか… 見たところ、そんなにダメージを負ってそうには見えないが、あいつも再生スキル持ってるな、ありゃ。


「勝負はこれからだろ? もっと俺に本気を出させてくれ」


「そんなこと言ってられるのも今のうちだぞ!」


 二人とも一瞬のうちに間合いを詰め、激しい攻防が始まった。

 ちっ、2刀流だからやりずらい…! 今は回避に専念しろ! 隙ができるまで我慢だ! …て、そんなんで勝てるわけねーだろ! 僕は馬鹿か! 攻めろ、攻めて攻めて攻めまくれ!

 クロムは間合いを一気に詰め、剣技を放つ。

 

炎炎の斬撃(バーンスラッシュ)!!」


 灼熱の炎によって包まれた剣がテンを襲う。

 そして状況は一変する。テンの剣がその熱さに耐えられず、溶け始めたのだ。

 よし、いいぞ! 今ならやれる!


「はぁああっ!」

 

 テンの剣が溶け、激しい金属音も次第に無くなり、ついに終わりの時が来た。

 今だ! ありったけをぶつけてやる!

 クロムは構えを取り、剣に全魔力を込める。


 雷電雷轟衝らいでんらいごうしょう!!


 雷電雷轟衝らいでんらいごうしょうとは、雷系超極能力(ウルトラスキル)の一つ。この雷に裂かれてできた傷は回復できるまで時間がかかる。更に常時感電状態にできる。

 超極能力(ウルトラスキル)とは、全能力(スキル)の頂点に立つもので、何百年修行をしても手にするのが難しいと言われている。僕は複数持ってるけどね。

 閃光と紫電が走り、テンの体を裂いた。鮮血が飛び散り、辺りを赤く染める。

 手応えあり…! 今度こそ…

 

「ハハハッ! 見事だ…! こここまで()()の俺を、追い詰めたのは君で二人目だよ! そして君と戦っている間に目的を達成できた! 君との戦い、楽しかったよ、じゃ!」


 テンは回復を制御する雷を受けたにも関わらず、何事もなかったかのように立っていた。


「なっ! 待て!」


 逃げようとするテンをすかさず“絶対の神鎖(エンペラーチェーン)”で止める。

 絶対の鎖(エンペラーチェーン)とは、捕縛系能力(スキル)一つだ。絶対に切れない、逃げることもほぼ不可能な圧力で拘束、攻撃する。使用者が戦闘不能になると消える。


「お前らは一体何をした! 答えろ!」


 問い詰めようとしたが、テンの体が煙のようになり、鎖の拘束から逃れられてしまった。

 おいー! そんなのありかよ?! ズルすぎだろ!


「言ったろ? 俺は分身体だ、実体じゃない。捕まえることなんてできないんだよ! さっき飛び散った血は遊び心さ♪ 知りたいことがあるんなら王国にいけばわかるよ!」


 テンは霧のように姿を消えた後、クロムはテンの言う、ウィンディア王国に向けて全速力で走った。

 まずい、なにか嫌な予感が… サクラ、メラ、無事でいてくれ…!

 王国に近づくにつれて、血の匂いが濃くなってきて、死体の量も多くなってきた。

 一体何があったんだ?! 急げ、急ぐんだ!

 クロムはただ王国につくことだけに神経を注いで、走り続けた。






いかがだったでしょうか。もしよければ評価お願いします!

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